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もうお前を離さない227

「―――村越!!」
石田の鋭い声に村越ははっと我に返った。戻ってきた視界には、石田の鎧に刻まれた大一大万大吉の文字が映る。
「みつ……なり、さ……?」
村越は何故目の前に石田がいるのか分からず腕を上げた。その腕は、血で真っ赤に染まっていた。
「………ッ!!!!」
「見るな!」
振り返ろうとした村越の目を素早く石田は自分の手で塞ぎ、村越の体を反対の腕で引き寄せ自分の体に押さえ付けた。少しして、村越の体がかたかたと震え始めた。
「私…ッ私……!」
「…何も考えるな」
石田は僅かに目を塞ぐ手の力を強めた。
「ひっ…いや……」
「村越」
「三成さ…ッ…ぅ」
村越は震える手で自分を押さえ付ける石田の手を掴んだ。ぴくり、と石田の指が跳ねたが、石田は緩くその手を握った。
「…そのまま目を開くな。陣に戻るぞ」
石田は静かな声色でそう告げるとひょいと村越を抱えあげた。村越は石田の胸元に手を寄せ、肩に顔を埋めた。

 「…!三成」
「!三成ィ!!お前さん一体どこま、で……」
2人が陣に戻ると大谷と島津の姿もあり、大谷に次いで数珠を投げ付けられていた黒田が2人に気が付いた。
2人の様子にぽかんとしている黒田を余所に、大谷はす、と近寄ってきた。
「…何ぞあったか」
「刑部、こいつを任せてもいいか。…後始末をしていない」
「…あい分かった、島津は今、あちらの陣におる」
「すまん」
石田は村越を大谷に預けると足早に踵を返した。大谷は自分の体を抱き締めるように体を丸める村越を輿に乗せ、ふよふよと移動した。
「鬼島津」
「…三成どん、何かあったとかね?」
「余所者に絡まれた、のだが…少し面倒な事になった」
石田は島津と共に先ほどの林へと戻っていった。大谷はそれを見ながら、村越に手拭いと着替えを手渡した。
「ほれ、血を拭いその中で着替えやれ」
「…ッ、大谷…さ…」
「まずは落ち着け。よいな?」
「……は、い…っ」
村越はかたかたと震えながらもそれらを受け取り、陣幕内に入っていた。ずるずると重そうな音をさせて黒田が大谷の隣までやってきた。
「…何事だ?」
「さて。我にはとんと分からぬ」
「…お前さんに聞いた小生が馬鹿だったよ」
黒田はそれ以上の興味を無くしたのか、その場から去っていった。
少しして、村越が出てきた。体はまだ震えている。
「…して、何があった?」
「……私が…男の人に絡まれたのを…三成さんが……助けてくれて…」
「…ほう。して?」
「そうしたら…その男が仕返しに来て…ッ三成さんが怪我して、血が出て、それ見たら私怖くなって…!」
「怖い?」
「またあの時みたいに目の前で死んじゃうじゃないかって、三成さんが私のせいで、殺されちゃうんじゃないかって思って、そしたら私、もう真っ白になって、怖くて、何も分からなくなって、気が付いたら目の前の男を殺してて、そして、私…全員……!!」
村越はそこまで言って頭を抱えた。がたがたと震えは激しくなり、ぼろぼろと涙がこぼれている。
大谷は何が起こったかを大体理解し、震える村越の頭をそっ、と撫でた。
「お、たにさ…ッ」
「主のおかげで三成は無事よ。よう守った」
「わたし…が……?」
「そうよ。斯様な者共の事は早に忘れよ。主は間違っておらぬ故な」
「…大谷さん…ッ…でも……っ」
村越はそう言って目を伏せた。
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