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もうお前を離さない216

「…あったかい………」
「……そうですか」
「…炎色さん、でもね、市、分からないの…」
「分からない?」
市はずるずると宮野にもたれかかるように擦り寄る。
「そう…分からないの…どうして市は…ここにいるのかしら…?」
「…成る程。そっから分かりませんか。分かります、私もよく分かりませんでした。何故自分が生きているのか、自分が何をしたいのか…」
「炎色さんが…?」
不思議そうに自分を見上げる市に宮野は笑う。そしてわしゃわしゃと市の頭を撫でた。
「えぇ。今も分かりません。でもね、生きる理由があればいい、そう思って難しく考えるのは止めたんです。そうしたら、おのずと答えが見つかりました」
「そうなの…?市にも…見つかる…?」
「きっと見つかりますよ。でもその為には、今を見なければ。現実を受け入れなきゃ駄目です」
「…そう…そうなのね…分かったわ……市、頑張るわ……」
「…その意気ですよ。ところでお市さん、なんでそんなくっついてくるんです?」
「…市………」
「…。…寝たッ?!」
妙に擦り寄る市に宮野が不信感を覚えた頃には、市はすやすやと眠っていた。宮野ははぁ、と思いため息をつくとしがみつく市をずるずると引きずって壁ぎわまで戻った。
「…ま、いいか。私も寝よう」
そう言って宮野は目を閉じた。



 斯くして、宮野と村越、揃いも揃って他人と密着した形で寝た両者は、悲鳴で目を覚ますこととなる。
宮野の目を覚ましたのは徳川だ。野太い叫び声に宮野は億劫に感じながら目を開いた。
「な、なな、な、えぇぇぇぇ?!」
「…うっさいんですけど朝からー…」
「な、何をしているんだ二人共!」
徳川は見るからに動転しており、自分の足に躓いて転んでいた。宮野は壁に寄り掛かって寝たために痛む首を擦りながら、自分の体に腕を回し、抱きついたまま寝ている市にため息をついた。
「大丈夫ですか、転んでましたけど」
「ど、どうしてお市殿が…?!」
「昨日の夜突然来て寝ちゃったんですよ。引き剥がしようがないですし。あ、取り敢えずおはようございます」
「あ、あぁ…。…引き剥がしようがない、とは…」
「抱きついてきて寝ちゃったんです」
「…で、君もそのまま…?」
「はい」
「…変わっているな」
「よく言われます」



一方の村越は当然、石田その人だ。
「いたたたた…あ、三成さんおはようございます」
「きっ、きさっ、貴様ァァァァァァ!!!!何をしている!!!!」
村越を投げ飛ばした石田は真っ赤になってそう怒鳴る。刀が無い故に抜刀こそしていないが、滲み出る殺気がぶすぶすと刺さる。
目覚め早々そんな目にあった村越は流石にかちん、と来たのかむくれた顔で石田を睨んだ。
「何してるって言われましても、そっちが先にやったんじゃないですかっ」
「…?!先…!?…?!」
そこで急に石田の顔がさぁ、と一気に青ざめた。その様子に村越が首をかしげた時、石田は勢い良く床に手をついた。
「……何も思い出せない、私は貴様に何をした!?」
必死な石田は今にも土下座せん勢いだ。村越はその様子に石田が勘違いしている事に気が付き、小さく笑った。
「…ふふ、想像されてるような事はされてないですよ」
「!!ならば何をした…ッ?」
「甘えてきました」
「甘え…ッ?!どういう意味だ!?」
「不謹慎ですが可愛かったですよー」
「な、ぁ…ッ」
石田の青ざめた顔が再び朱に染まった。
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