スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない229

同じ頃真田は、トラブルに見舞われていた。
上杉の忍、かすがが怒鳴り込みに来ていたのだ。
「あぁもううるさいなぁ!!大将も気が立ってるんだから帰ってくんない?!」
「知るか!謙信様に恐れ多くも進言した奴はどこだ!」
「いないよ!だからほら、帰って!」
「いないだと?!どういう事だ!!」
「いないもんはいないんだよ!!帰れって!!」
猿飛は色々溜まっていた物が爆発したのか、かすがに向けて己の得物の手裏剣を投げた。かすがは苦無でそれを弾き、猿飛の様子に戦闘体勢を取った。
猿飛は帰ってきた手裏剣を掴み、深々と息を吐きだした。
「ったく、お前はほんとあの子と正反対だよな。自分勝手な所が特に」
「な…っなんだと?!」
「これが最後だ、帰れ。…帰らないなら、俺様怒っちゃうよ?」
猿飛は手裏剣をくるくるとヨーヨーのように回し、かすがを見据えた。
その時。
「佐助ぇぇ!如何したのだぁぁ?」
「げっ、真田の大将…!」
「!甲斐の虎若子…ッ!」
騒ぎを聞きつけ、真田が松葉杖を突きながら姿を見せたのだ。かすがは真田の姿を認めて眉間を寄せる。
「!上杉殿の…」
「真田幸村。謙信様に撤退を進言した者はどこだ!」
「……!!…、ここにはおりもうさぬ」
真田はかすがの言葉に一瞬目を見張った後、目を細めてそう言った。かすがは真田の様子に再び眉間を寄せる。
「ここにいないのならどこにいる?!」
「っ、かすが!!」
諫める猿飛を真田は目で制し、静かにかすがを見た。
「…、知ってどうするのでござるか?」
「どうするも何も私がこの手で「あやつは今、徳川殿の陣におりまする」…なに…っ?」
真田は冷静であるように見えた。
だが、ぱきりと音を立てて折れた松葉杖の持ち手が、真田は決して冷静とはいえない状態であることを告げていた。
真田は彼らしからぬ冷めた目でかすがを見上げた。
「それでも会いたければ好きになされよ」
「…何故徳川に…っ?」
「貴殿に教える筋合いはござらぬ」
「な、待てっ」
「帰られよ。…今俺は機嫌が悪いのだ、放っておいてくだされ」
「…!!」
真田は使い物にならなくなった松葉杖を持ちなおし、かすがと猿飛に背を向け歩いていった。
「…、あのな、かすが。軍神に進言したのは、真田の大将の…想い人だったんだよ」
「な、な、な…?!」
「あの子は真田の大将を助けるために影になって、今は徳川方の捕虜になってる」
「影に…だと?お前は何をしていたんだ!」
「あの子に言われたんだよ、俺様がいなかったらすぐ伊達にばれる、って」
「!」
猿飛ははぁ、と再びため息をついて地面に飛び降りた。かすがを見上げて猿飛は言う。
「…、分かっただろ?だから帰ってくんない?ただでさえ酷い怪我なの無理しようとしてるの押さえるの大変なんだから、真田の大将煽らないでよ」
「……!」
「じゃあな。あのまま放っといたら鍛練始めかねないから」
猿飛はそう言うとかすがに背を向け、真田を追っていった。
 真田は自室の縁側に座っていた。寝巻の単衣姿のままだったので、猿飛は近くにあった赤い羽織を真田の肩に掛けた。
「…すまない真田の大将」
「お前は悪くない…謝るな」
「真田の大将。アンタだって悪くないよ」
「……分かっておる。だが、認められぬのだ」
「…………旦那……」
「許せぬのだ。弱い己を」
真田はそう言ってぎり、と拳を震わせた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年08月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31