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もうお前を離さない226

「………………言い過ぎた。謝罪する」
「えっ…いや、でも私もほっぺた…」
「貴様の張り手など痛くもかゆくもない」
「………私…すいませんでしたっ勝手な事ばかり…!」
ばっ、と村越は泣きそうな顔で頭を下げた。石田はぷい、と顔を逸らす。
「………帰るぞ」
「……。えっ?」
「…この地に残るつもりなのか?」
振り返りそう問えば、村越はぶんぶんと頭を勢い良く横に振った。石田はふん、と鼻を鳴らし歩き始め、村越はどこか嬉しそうな表情を浮かべて石田についていった。

だがそのままスムーズに、陣まで戻る事は出来なかった。

「…?」
歩き始めて少し経ち、林の中を歩いていた時の事だ。石田はかすかな殺気を感じて足を止めた。村越は立ち止まった石田を不思議そうに見上げた。
刹那、
「!!」
「きゃ……。…ッ?!」
村越を後ろに押した石田の腕に、深々と矢が突き刺さった。
「…ッ!!」
刺さった途端感じた違和感に、石田は躊躇せず矢を引き抜いた。無理に引いた為に肉が抉れ、血が飛び散る。
「……!!」
村越の顔がさぁぁ、と青ざめた。
そんな2人を囲むように、林の中からわらわらと屈強な男たちが飛び出してきた。その中には先程村越に絡んでいた2人もいた。
「…もう来たか」
「そこのもやし男!さっきの借りはきっちり返してもらうぜ!!」
「…その話し振り…余所者が鬼島津の領内で騒ぎを起こすとはな。…村越」
「…え……」
「貴様は陣に戻り島津に伝えてこい、私はこの男共を斬滅する」
石田は村越にそう告げると、す、と刀を構えた。途端に、周りの男たちは大きな、そして下卑た笑い声を上げた。
「ざんめつだかなんだか知らねぇが、今のお前は立っているのもやっとだろうがよぉ!!」
「!?」
「おめぇの腕に刺さった矢には特注の毒が塗ってあってなぁ…死にはしねぇがしばらくの間動けねぇ毒がなぁ!」
「……、」
「み…三成さ「行け」
ぎゃはは、という汚い笑い声が響く中、石田の言葉は凛と村越の鼓膜を揺らした。
石田は動かない村越に僅かにため息をついて振り返る。
「…早く行け。貴様まで巻き添えを食うぞ」
「!み、三成さんっ」
「おら、やっちまえ!!」
村越が石田に手を伸ばした時、後ろから殴りかかった男の木刀が石田の後頭部を強打した。
「!!」
じわりと銀の髪が朱に染まり、ふら、と石田の体がゆれる。
「さっきの勢いはどうしたんだぁ?白髪の兄ちゃんよぉ!」
次いで村越の後ろから迫った男の拳が、思い切り石田の顔にたたき込まれた。
「…ッ」
石田はぎっ、と男を睨むと力を抜いた体でくるりと回り、その勢いで刀を振り上げた。刀は後ろの男の木刀を二等分にしたが、男たちには当たらなかった。
石田の目が村越に向いた。そして、その目は目一杯見開かれた。
「…ッ?!村越!?」
「他人の心配か?随分よ、ゆう…」
男の言葉が途中で途切れた。

無理もない。村越の刀が男の心臓を貫いていたのだ。

村越は刀を引くと返す刃で男の首を跳ねとばした。吹き出した血が村越の顔を汚す。
「いや…いや……ッいやぁぁぁあああああああ!!」
村越はそう叫ぶと刀を鞘に戻し、石田の後ろで呆然としている男の頭に刀を突き刺した。
「な…っ何しやがんだてめぇ!!」
わっ、と一斉に男たちが動いた。だが石田に鍛えられ、我を失った村越に、多少喧嘩に強い程度の男では勝てなかった。
村越は自分に迫ってきた男の脛をすれ違いざまに斬りつけ、ぽかんとしている石田の前に立ちふさがった。
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