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もうお前を離さない222

「だからその為に、私はもう少し徳川家康がどんな人間でどんな言葉なら納得させられるかを見極めたい。…それに、幸村もその夢を望んでくれている。だから、幸村に危害が及ぶようなことはしたくない」
「…お前……」
「…、なんですその目は」
「…お前、生きていて楽しいか?」
「…さぁ…ただ1つ言えるのは、何としてもその夢を叶えたい、私は確かにそう思ってます」
「その為にわざわざ敵の手中に戻るのか?」
「だから、逃げられないと思ったって言ってるじゃないですか。私持久力無いんですよ」
宮野はそう言って笑い、未だに不可解そうな不機嫌な表情を浮かべる伊達の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ッ、What are you doing!!」
「何となくです」
「あぁ?!」
「何をそんなに気にしてるんです??…それに、私は脱走するためにお市さんが抱きついてくるのを拒まなかったんじゃないんで」
「!」
「このまま逃げたら、お市さんを利用した、なんて思われるんじゃないかと思いもしましてね。そういうのも嫌ですから」
宮野はそれだけ言うと、起こしていた体が辛くなったのか、ぼふ、と闇の手に体を預けた。伊達は宮野を見上げて僅かに口角を釣り上げる。
「…、真田がお前を気に入った理由が分かったぜ」
「あ、それ!佐助さんにも言われたんですけど!話しただけで分かります?」
「まぁな」
「そんな分かりやすいですか?私…。…まぁいいか…」
宮野がそう言ってふぅと息を吐きだした時、3人の視界の中に数人の兵士達が姿を見せた。徳川と伊達の兵だ。
「あっ!筆頭!捕まえたんですね?!」
「いや、自分で帰ってきた」
「…えっ?」
「頭の上失礼しまーす」
「うぉ…っ。お、お市殿、待たれいっ!」
「市ちゃんと戻るわ…いい子にしてるもの……」
困惑する部下達そっちのけにずるずる進む市に宮野は手の上で苦笑した。
「お市殿!」
「光色さん…?」
と、そこへ少し遅れて徳川もやってきた。宮野を持ち上げている以外特に変わった様子のない市の様子に徳川はほっと息をついた。
「一体何があったんだ?」
「すいませんね。兜割りの話をしたら探しに連れ出してくれたんですよ」
「かぶとわり?」
「私が貴方の腹殴った時に持ってた、脇差大の鉄棒みたいのです」
「…あぁあの時の……。その兜割りを探しに来たということは、もしかして、なくなったのか?」
ことんと首を傾げた徳川に宮野は苦笑した。何故笑われたのか分からない徳川はきょとんと宮野を見上げる。
宮野は苦笑を消さぬまま徳川を見下ろした。
「…貴方は、存外子供っぽい仕草をされますね。…それ故に、親しみやすいのかもしれませんね」
「?ん?」
「……、徳川家康。佐助さんに聞いた話なんですけどね」
宮野は一瞬目を伏せた後、徳川から目を逸らした。
「四国の将、長曾我部元親の事知っていますよね」
「元親か?あぁ、勿論知っているぞ!」
「なら、彼が留守の時に所領が強襲された事はご存知ですか」
「…………え?」
徳川から笑みが消えた。宮野が口にした内容には伊達も目を見開き、近くの兵は騒めいた。
宮野はわざとらしく首を傾げた。
「おかしいですね。私は貴方がしたって聞きましたけど」
「っな…ッ?!」
「貴様!何を言う!!」
「そう聞いたものは聞いたんですよ。心当たりはないと?」
「あぁ…あるわけがない…」
徳川は呆然としながらも辛うじてそう応えた。
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