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もうお前を離さない220

「ほら、手ェ貸して。噛みすぎてぼろぼろだよ」
「……………」
猿飛は真田の手を掴むと親指の先を小さな包帯でくるくると巻いた。真田はふぅ、と小さくため息をつくと苦笑した。
「2日しか経っていないというのに、酷く時間が長く感じる…」
「…、…」
「すまぬな佐助…」
「…そんな事思う暇があるなら、さっさと寝てくれる?寝てさっさと怪我を治しなよ?」
「…、そうだな」



 その頃宮野は。
「てーんーかーわーけーめを、きーわーめーるーがーかち、うーたーげーをつづけよー」
「ふふふ…炎色さん楽しそう…」
「邪魔するぜ。…何やってんだ?」
ばさり、と幕を上げ中に入った伊達は、市の姿に眉間を寄せた。市は相変わらずべっとり宮野にくっついていたのだ。
宮野は引き剥がす事を諦めたらしく、一人ぼんやりとしながら口ずさんでいた。伊達に気が付くと宮野は苦笑する。
「昨日の夜からこの有様なんですよー。起きたら離れるかと思ったらそのままですし」
「…You are crazy」
「何故私が」
「まぁいい。こっちも退屈してた所だ、話に付き合え」
「存外トップも暇人なんですね」
「…。戦の最中は存外暇なんだよ」
伊達は肩を竦めながら宮野の斜め前に胡坐をかいて座った。
「話ってなんです?」
「…、アンタ、真田とはどこで知り合ったんだ?」
「幸村を私が拾いました」
「…………What?」
「帰り道に幸村が倒れてたのを拾ったのがきっかけです」
「…What did happen?」
相当疑問なのか先から英語しか使っていない。宮野は小さく吹き出して笑う。
「さぁ。とにもかくにも居たんですよ道端に。ほっとく訳にも行かないので連れて帰りました」
「………I see」
「…ところで独眼竜。一つ聞きたいことがあるんですけど」
「何だ…?」
「私の兜割り、どうなりました?」
「かぶと…わり?」
聞きなれない言葉に伊達は首を傾げる。宮野はその仕草を見てがっかりしたように頭を垂れた。
「私が持ってた脇差大の大きさのものです…!」
「…あぁ、落とした」
「ぅぁあああああやっぱりいぃぃぃぃぃ……」
「?!な、なんだ!!」
「あら…?炎色さんが沈んでる…いじめちゃダメ…」
「いじめてねぇっ!」
ずーんという文字が見えそうな程落ち込んだ宮野に市はじとりと伊達を見て、伊達は慌てて手を振った。
「…あれ貰い物だったんですよ…私に護身術教えてくれた先生からの…」
「………すまん」
「…いや…すいません、気にしないでください…」
「明らかに落ち込んでるのに気にしないでいられるか」
「ね…じゃあ市と探しに行こう…?」
「「え…?」」
ずず、と音をさせて市の足元に闇が広がった。しまった、と2人が思った瞬間に闇の手が飛び出し、1つが宮野を抱えあげた。
「わ、わぁっ?!」
がきん、と音をさせて宮野を拘束する鎖が千切れ、市は宮野を抱えあげた手に寄り添う。
「こ、こら、ちょっと待て!」
はっとした伊達が止めるが市は聞かずにその場を出ていった。
宮野は手に抱き締められた状態であわあわと慌てるが市は宮野を降ろさない。
「お、お市さん!」
「大丈夫…一緒に行ってあげるから…」
「いや、そうじゃなくて…!ていうか手がくすぐったいです!」
「え…?でもこの方が早く進むもの…」
「これ脱走じゃないですか?!ちょっ…うわぁあぁぁぁあっ」
市は宮野を連れずるずると歩いていった。
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