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もうお前を離さない214

「ど、どど、どうしよう…」
村越は戸惑った。初めて見る石田の寝顔があまりに安らかだった為に、起こす事は憚られた。
迷いながらも村越は、石田の首が痛いだろう、と判断し石田の頭を下げる為に体を下げた。
「な、な、なな、み、三成ぃぃぃっ?!」
「うるさいです黒田さん!…三成さんが起きてしまいます」
「…やれ、如何にする…?」
「寝てるくせに腕の力はそのまんまです、振りほどけません。……………仕方ないです、私もこのまま寝ます」
「「…は?」」
大谷と黒田は同時に声を上げた。村越はおやすみなさい、と言うと石田の横に寝そべってしまった。
「な、ちょ、なぁぁぁっ?!」
「……やれ、仕方あるまい」
「よ、よろしいのですか?」
「困るのは三成よ、まぁ明日が見物であろ、ヒヒヒッ」
大谷は肩を竦めくるりと2人に背を向けた。立花と黒田もそれに続く。
黒田はじ、と大谷を見た。
「…刑部、お前さん相変わらず趣味が悪いな」
「よいではないか、あの三成が心を許しておるのだ。それに、相変わらずよく眠っておらなんだゆえ、よう眠れるであろ」
「…お前さん、…変わったな」
「……ヒヒ、分かったような口をききよる。その口使えぬように縫ってやろ」
「なっ、ちょっ、やめっ!冗談じゃなく迫ってくるなぁぁっ!」
黒田は鉄球を引きずり逃げていき、大谷はヒッヒと笑いながら、立花はちらちらと後ろを気にしながら石田達のいる陣幕から離れていった。
 村越は石田の上には乗らないように、首を痛めないように気を付けながら横になった。すぐ傍にある石田の顔を見て薄く笑った。
「…、よい夢を、三成さん」
そう言い、村越は目を閉じた。



 「む…ッ」
同時刻、上田では。
真田が寝床から起き上がっていた。ふらふらと部屋を出て空を見上げる。
「……月がよう見える…」
真田はそう呟くと柱にもたれかかって座った。
「!大将何やってんの!!」
「おぉ佐助。ご苦労だったな」
「寝てなきゃ駄目でしょ!」
そこへタイミング良く猿飛が帰ってきた。真田は薄く笑い、空から視線を猿飛に移す。
猿飛はむ、と顔をしかめた後、小さくため息をついた。
「…上杉が」
「?」
「毛利の奇襲を受けて壊滅状態に陥った」
「な…ッ?!」
「撤退してる時に襲われたらしい。何故か俺様がかすがに怒鳴られるし」
「…黎凪が上杉殿に撤退を促したからであろう…」
真田はきり、と弱い力で唇を噛んだ。噛み切って血がにじむほどの力すら、今の真田にはない。
猿飛は一瞬目を伏せた後、わしゃわしゃと真田の頭を撫でた。
「…あの子が悪いわけじゃない。言い出しっぺはあの子だったとしても、撤退を決めたのは上杉だ」
「ッ佐助…!」
「旦那!今旦那が旦那の事を責めても何も変わらない!!」
「!」
猿飛は呼称が旦那に戻っている事に気が付かないまま、真田の肩をがしりと掴んだ。
「あの子は毛利が来るのを知って撤退を促したんじゃない!毛利が攻めてきたのは偶然だ!アンタがその偶然まで責任負う必要なんてないだろ?!」
「さ…すけ……」
「…、今は戦なんだ。いつどこで誰が攻めてくるか分からない。それくらい、分かってるだろ」
「…うむ…」
「なら、アンタが落ち込む事はないだろ。…今は自分の身のことだけ考えてなって。……、明日は我が身かも知れないんだからさ」
「…すまぬ、佐助」
真田はそう小さく呟いた後、ふと思い出したように猿飛を見た。
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