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もうお前を離さない213

それから数刻後。
「…………………」
「うわぁぁぁ?!な、だ、大丈夫ですか三成さん!!」
「だまれ…あたまにひびく…」
「ぶははははっざまぁないな三成ぃ!いでっ!数珠投げっ…何故じゃぁぁぁぁっ!」
「やれ、喧しい奴め」
黒田の予想通り、石田は酒につぶれて戻ってきた。大谷の輿の後ろに乗り、大谷にもたれかかるように座っている石田は頭に響くと言ったきり沈黙してしまった。大谷はぎゃあぎゃあと騒ぐ黒田を放り投げると、やれやれとため息をついた。
村越は慌てて2人に近寄る。
「鬼島津も困ったものよ…遠慮を知らぬ」
「い、今水持ってきます!」
村越は髪から覗く石田の耳が彼にしては異様に赤いのを見て性急に踵を返した。
いや、返そうとした。
「……………」
「ッ?」
くい、と不意に石田が村越の和服の袖を掴み、軽く引っ張られる形になって村越は驚いて振り返った。
石田は後ろから大谷の肩に顔を埋めたままだ。村越は顔の位置を石田に合わせ、軽く屈んだ。
「…三成さん?辛いですか?すぐ水持ってきますよ?」
その時だ。

石田はイヤイヤをするかのように頭を横に振った。

その様子には立花は勿論、大谷も驚き、いつの間にか戻ってきていた黒田に至っては声にならない奇声をあげた。村越もぽかんとした顔で石田を見る。
「…何この人かわいー……」
「…やれ、何ぞ言いやったか?」
「い、いえ。………もしかして…傍にいて…ほしい…んです、か?」
「………………」

大谷の肩に埋められた頭が、僅かに上下に動いた。
再び黒田の奇声があがる。村越は驚き、だがすぐに優しげな笑みを浮かべた。
「分かりました。傍にいます」


 「何故じゃぁぁぁぁっ!!」
「暗ァァァァ…。…静かにせェェェッ!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
ぎゃいのぎゃいの騒ぐ黒田を投げ飛ばす大谷とそれをひやひやしながら見守る立花。そんな3人そっちのけで村越は眠る石田の傍らに座っていた。冷やした手拭いを額に乗せる。
石田はすやすやと静かに眠っていた。村越はそ、と目に掛かった髪の毛を払った。
「……ま…」
「…?どうしました、三成さ「秀吉さま…」

「……ッ」
こぼれ出た言葉に村越は唇を噛む。
ふらふら、と石田の右腕が持ち上がった。まるで何かを捜し求めるかのように。
「ひでよし、さま…はんべ、さま……」
「……、大丈夫です」
村越は一瞬迷った後、力強くその手を握った。ぴくり、と石田の体が跳ねた後、きゅうと手を握り返してきた。
「…私でよいならば、ずっと傍にいます。貴方が死ぬ時まで」
村越はそう言った。そうしたら。
ぐい、
「?!きゃ、!?」
腕を強く引かれ村越はバランスを崩し、受け身も取れずに石田の上に落ちてしまった。慌てて体を起こそうとするが、その時には石田がぎゅうと村越を抱き締めていた。
突然抱き締められ、村越も流石に赤面する。石田は額を村越の肩に押しつけ、そのまま顔を埋めた。
「……………」
「み、みつな…?!」
「…なぁぁぁぁあっ?!いでぇっ!」
「静かにしやれと…!…?!」
陣幕内が見えてしまったらしい、黒田と大谷が驚愕して固まっていた。
「…う……。…むらこし?」
そして、黒田の叫び声に目を覚ましたらしい、石田はどこかとろんとした目で村越を見上げた。
「なぜそんなにちかくにいる…?」
「え、や、あの…三成さんが引っ張ったからです…」
「…そうか。…きさまはあたたかいな」
「え…?」
「さむい。あたためろ」
「はっ?!」
「…………………」
「寝たっ…!」
石田はふ、と薄く笑うと再び額を村越の肩に押しつけ、眠ってしまった。
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