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もうお前を離さない223

「………。ふーん」
「ふ、ふーん?!」
「…猿は誰からそれを聞いたんだ?」
後ろから尋ねた伊達に宮野は、体をひねって伊達を振り返った。その顔に表情は浮かんでいない。
「猿…あぁ、そういう事か。後から佐助さんに聞いてみたら、石田の旦那が、つまり三成さんが言っていた、と言ってましたよ」
「三成が?!」
「なんでも、長曾我部から同盟の申し入れがあったらしいですよ」
徳川の声に今度は徳川に顔を戻す。その様子を見ていた市はそろそろと宮野を降ろし、すす、と徳川に寄り添った。
徳川は宮野の言葉に目を見開き、俯いた。
「…その話は聞いていた…だが、ワシは…元親はてっきり…三成の生きざまに惹かれて西軍に組みそうとしていると思って……。…まさか、元親はワシを恨んで…?」
「そこまでは知りませんよ、私石田軍じゃないんで。…ですが、その可能性は高いんじゃないですか?」
「…そんな……一体誰がそんな事を……」
呆然としたままの徳川は、ふらふらと顔を横に力なく振った。宮野は目を細め、徳川を見据える。
「…、分からないなら調べれば良いじゃないですか」
「、え?」
「落ち込んでも何も解決しないし、知る為には調べるしかない」
「……ハハ…確かに…そうだな」
「…、貴方ってあまり、理由を知ろうとしませんよね」
「理由を知ろうと…しない?」
徳川は宮野の言葉に不可解げな表情を浮かべた。宮野はじ、と徳川を見据える。
「…長曾我部の件がどうなのかは知りませんが。相手の思いを受け入れるだけでは、誤解がそのままになる可能性もありますよ」
「…ッ……」
「貴様家康様を愚弄するのか!!」
カッとなった徳川の兵が刀に手を掛けた。宮野はその兵を見て、一瞬、嘲るような笑みを浮かべた。一瞬だった為に、それに気が付いたのは徳川だけだった。
宮野はふぅ、と疲れたように息を吐きだす。
「愚弄、ですか。そんなつもりはなかったんですけどね」
「き、さまっ」
「…、止めないか」
「い、家康様…ッ」
静かな徳川の声に、兵はしぶしぶ刀から手を離した。徳川は小さく息を吸い込んだ後、小さく哀しげな笑みを浮かべて宮野を見た。
宮野はその笑みに僅かに眉間を寄せる。
「…宮野殿。遠慮する事はない」
「…、はい?」
「ワシに言いたいことがあるだろう?」
宮野は眉間をさらに寄せ、不愉快そうに徳川を見た。
「…、人間って、矛盾してる所があって当たり前だとは思います」
「?」
「徳川家康。私が貴方を嫌いなのは、その矛盾の幅が大きいからです」
「…!」
「私の友達はそんな人間くさい貴方が好きだ、って子もいますけど」
「………。えっ?」
突如好きと言われて戸惑う徳川を気にする事なく話を続ける。
「貴方はその矛盾を指摘された時、どうするんですか?」
「どうする…?」
「そもそも貴方は自分の矛盾を自覚してますか?」
「矛盾…」
「…。絆の力で天下を統べるといいながら、その為に、一番最初に三成さんからあらゆる絆を奪った」
「!!!!」
徳川は目を見開き、ぎり、と歯を噛んだ。
宮野は至って穏やかな顔で徳川を見た。
「…、過ぎた事を言っても仕方ありませんが、他の方法は無かったのかと、時々思います」
「…………」
「三成さんが貴方を許せないのは豊臣秀吉を殺したからだけではないことぐらい、分かってるでしょう?」
「…裏切ったから、か」
「貴方の裏切りは、酷いこと言いますけど、三成さんの世界を破壊して、全てを否定したんです」
宮野はそう言って、一瞬目を伏せた。
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