スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない224

「…まぁ、だからなんだと言われてしまえば言い返す言葉はありませんけど」
「…、………」
「…自分でも何が言いたかったのか分からなくなってきた。つまりなんだ…?私には、貴方がその矛盾から逃げているように思えたんですよね」
「!」
「そりゃ、自分の信念を最後まで貫き通すには信念から曲がった事もやるくらいじゃなきゃ出来ないとは思いますよ。でも、それを曲がった事と理解しないでやったらそれは信念を貫き通したと言えるんだろうか?って思うんです」
「……………」
「…さっきから文句ばっか言ってますけど何か反論とかないんです、か…?」
黙り込んでしまった徳川に、さっきまで語っていた勢いはどこへ消えたのか、宮野は恐る恐る徳川にそう尋ねた。
徳川は宮野の言葉に、小さく笑みを浮かべた。
「……君の言う通りだ「だー!!それじゃ駄目ですってー!!」…な……?」
肯定しようとした徳川に宮野は叫び、呆然としている徳川を余所にがしがしと髪を掻き混ぜていた。
「私の今即興で思いついた程度の言葉に納得してるくらいだったら、三成さんには絶対勝てませんよ」
「…!」
「私は貴方に納得してもらいたくて、貴方を貶めたくて言ったんじゃないですよ。貴方の覚悟を揺るがしたくて言ったんじゃありません」
「え…?」

「三成さんと戦うと決めたのなら、そうやって自分の理念から離れていたり汚かったりする事もしないと、絶対負けると言いたいんです」

宮野はぎっ、と徳川を睨むかのような強い目で見据えた。
「貴方は自分から逃げてる所がある。私もそうだからなんとなく分かるんです。でも、自分から逃げているようじゃ、自分が思うままに動いている三成さんに気圧されますよ」
「…、……」
「別にいいじゃねぇか」
「は?」
「、独眼竜…」
誰も割り込めなかった会話に、伊達が突如割り込んだ。伊達は不愉快そうに宮野を見ている。
「テメェは西軍だろ。家康が負けた方が良いじゃねぇか」
「…独眼竜、人の話聞いてました?」
「あぁん?」
「言ったじゃないですか。私には達成したい夢があるって」
「…それは野郎に対する裏切りじゃねぇのか?」
「な、何の話だ?」
宮野の夢を知らない徳川は当然戸惑っている。宮野は伊達の表情を見て小さく笑った。
「…、そうかもしれませんね。それでも私は、後悔してほしくないんです」
「…石田は家康を殺したら後悔するとでも言いたいのか?」
「はい」
「何故だ?奴は家康を殺したくて仕方ないんだろ?」
伊達の言葉に宮野はどこか哀しげな笑みを浮かべ、伊達から視線を外すと空を見上げた。遠くにいる誰かを思い出すかのように。
「…、仇討ちって、悲しみから逃げてるだけなんですよ」
「!?」
「What?」
「私は、恨みは生きる為に生まれる感情だと思ってますから。辛くて悲しくて悔しくて苦しくて、死にたいと思うまでに傷つけられた時に、その人を生かすために本能的に生まれる感情だと」
「…三成が?」
「本能的だから本人には分からない物だと私は思ってます。仇討ちをするということは、逃げ先を自分で壊してしまうこと…。仇を殺して初めて、自分は逃げる為に仇を追っていたと気が付く」
「HA!あの野郎に限ってそんな事有り得ねぇ」
伊達は宮野の言葉を鼻で笑った。宮野はそんな伊達に苦笑する。
「そう思います?」
「少なくともアンタのようには思わねぇな」
伊達はそう言って口角を釣り上げた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年08月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31