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もうお前を離さない219

「何故私が後悔せねばならない!」
「お前さんもちぃっとは言い過ぎたと思ってんだろ?小生には怒り任せの言い争いにも聞こえたぞ。取り敢えず追っ掛けろ」
「何故だ!!」
「何故ってなぁ…。…このままでいいのか?お前さんは」
「…ッ」
「お前さんがあの子供を置いておくのは、拾った理由が分からないかららしいなぁ。その理由も分からず、そんな風にもやもやしたままでいいのか?」
「………私の具足はどこだッ」
「隣にあるはずだぞ」
石田はぎろりと一回黒田を睨むと隣の陣幕に走っていった。黒田は枷を鳴らしながらため息をついた。
「やれやれ…あいつも素直じゃない奴だ。ま、三成が素直だったらそれはそれで気持ち悪いがな」
いくばくもしない内に隣の陣幕を飛び出した石田に、黒田は僅かに苦笑した。



 その頃真田はというと。
「む…ッ」
「…真田の大将、アンタどてっ腹撃たれたんだよな?」
「それ、が、どう、した、のだ、?」
「…。腹筋してる場合じゃないでしょ!!」
大人しく寝ている…訳もなく。布団の上で腹筋していた。
猿飛の怒鳴り声に真田はしぶしぶと腹筋を止め、手をついて布団の上に座した。
「傷が痒くて痒くて仕方ないのだ!」
「博。りかけてんの?!」
おったまげー、とおどける猿飛に真田は僅かに笑い、滴る汗を傍らにあった手拭いで拭った。ふぅ、と息を吐き、猿飛を見る。
「…佐助。周辺国に何か動きは?」
「うっつーの話だと、毛利が伊達領に進行し始めたから、竜の右目、片倉小十郎が別動隊を率いて奥州に戻ったらしい」
「う、うっつー?」
「あぁ、宇都宮の忍にね、宇都宮が生きているとばれるとまずいから、うっつーと呼んでください、って言われちゃってさ」
主人共々変わったトコだよねぇ〜、と猿飛は言い肩を竦めた。
真田はいまいち意味が分からず首を傾げた。
「うっつー…?」
「まぁそれはさておき。後、大谷の旦那から文が来てね。西海の鬼、西の立花に穴熊の旦那、それからあの鬼島津を味方にしたってさ」
「な、なんとっ?!もう島津殿おられる南端まで行かれたのか…」
「西と言えば、預言者の巫女は徳川方についたらしい」
「…、そうか」
真田はかり、と親指を噛んだ。これで、東軍西軍どちらかにもついていないのは残すところ南部晴政、最上義光、そして前田家となった。
「うつの…うっつー殿が申されていた、最上、南部間の戦はどうなったのだ?」
「あぁ、そっちはどうやら決着つかずに沈黙状態らしい」
「前田殿は?」
「その事なんだけど、俺様もちょっと騙されてね」
「む?」
猿飛は再び肩を竦めた。その表情は心なしか悔しげだ。
「雑賀衆の事なんだけど」
「?徳川方と契約したのではなかったのか?」
「それがどうやら石田の旦那と契約してたらしくてね」
「なんと?!…むっ?何故前田殿の話で雑賀衆が…?」
「風来坊の旦那の前田慶次。それがなんか、雑賀衆の頭領の雑賀孫市の尻追っかけ回してるらしくて」
「なっ、破廉恥でござる!」
「何が。で、前田のお二方の方はまだ、特に動きを見せてない」
「…、そうか」
破廉恥と叫んだ真田は猿飛にべしっ、と自分が置いた手拭いを投げ付けられながらも、再び親指を噛んだ。
「…真田の大将、あんまり指噛むなって」
「…むっ?」
「…黎凪ちゃんが心配なのは分かるけど、生きてるのは確実なんだ。腹のは貫通してたから軽いかもしれないけど、足の傷はまだろくに歩けない程度なんだから、耐えろ」
「…!」
猿飛の言葉に真田はぐ、と拳を握り締めた。
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