スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

Not revolved transmigration 129

「いって!何しやがんだ!!」
「うっさい晴久の馬鹿!借金の取り立てが来なくなったからこっちは死んだのかって心配してたのに!なんでヤクザなってんだよっ!」
「な…仕方ねぇだろ!」
「そういう問題じゃないっ!なんで俺や南部のじっちゃんになんも教えてくんなかったんだ!南部のじっちゃんなんか一回倒れたんだぞ!」
「…ッ!」
「俺だってなぁ!体育教師になりたいから拳法やってたんじゃないんだからなぁ!う、うわぁぁぁ!」
「なっ、ちょっ、泣くな!」
「…変なやつだな」
「ヒヒ、確かに」
尼子と宇都宮の掛け合いを見ていた片倉の呟きに大谷がそう返した。大谷の声に竹中ははっとしたように大谷に近寄った。
「…大谷君。君、覚えてるんだね」
そして、石田に聞こえないように小さな声でそう言った。窓辺に駆けつけていた真田と徳川はその言葉にぎょっとしたように竹中を振り返る。
片倉は逆にそんな反応に驚いたように三人を見た。どうやら片倉はすでに知っていたようだ。
大谷は壁に背中を預けながら目を伏せ、苦々しく笑った。
「………あい」
「どうして覚えていないフリを?」
「わざとしていた訳ではなし。あそこの者は太閤以外覚えていない故な」
「お、覚えてるのか?!刑部!」
「なんと…?!」
「……教えてくれないかな、君の今生の過去を」
「…ならば三成を退室させてくれなんだか、賢人殿」
大谷の言葉に竹中は思い出したように石田を見た。石田もちょうど竹中の方を見、駆け寄ってくる。
「兄さん、大谷さん、大丈夫ですか」
「うん、大丈夫」
「掠り傷など大した傷ではないゆえな」
「…そうですか。そうでしたら兄さん、松永が仕掛けたという爆弾を何とかしないと!あの爆発で辺りが騒がしくなってきています」
「あぁ、多分それなら大丈夫じゃないかな」
「え?」
竹中がそう言った時、開け放ったままになっていた扉を叩く音がした。驚いてそちらを振り返れば、オールバックの男が立っている。
久の関係者か、そう石田や徳川達が身構えた時、大谷が盛大に吹き出した。
「ヒーヒッヒッ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
「お、大谷殿ッ?!」
「ヒッヒ…しばらく見ぬ内にずいぶんとさっぱりしやったなぁ、黒田ぁ?」
「えっ?!」
「喧しいぞ吉継!」
「あっ、ホントだ!」
なんと、その男の招待は黒田だった。特徴的な前髪と無精髭がないからか、全くの別人に見える。
黒田はふん!と憤りながらも近寄ってきた。そして竹中に何本かのコードを差し出す。
「ほらよ」
「…?何だいこれ?」
「何って……松永が仕掛けた爆弾の雷管の接続コードだよ」
「!知ってたのか?!というか、仕事だったんじゃ」
「僕が頼んでこのホテルに潜入してもらってたんだよ」
「えっ?!」
真田と徳川、石田に片倉は驚いたように黒田を見た。黒田は居心地悪そうにオールバックにしていた髪をぐしゃぐしゃと乱し目を隠した。
「あの野郎が爆弾仕掛けてた事は知ってたからな。パーティーが佳境に差し掛かった頃に全部不発弾にしてきた」
「…貴方が……。…とても意外でした」
「何故じゃッ」
「何を言うておる、潜入捜査はこいつの専売特許よ」
「…では何故営業の部署に?」
真田が最もな疑問を口にした。

Not revolved transmigration 128

「ちょ、ははは晴久おまおまおま…」
後から追い付いた宇都宮は狼狽えたようにそう言った。徳川と真田も目を見開く。尼子は気にせずにハンマーを下ろした。
久はぐらりと力なく膝をつく。肺を撃たれたためだろう、口からひゅーひゅーと掠れた音が漏れていた。
「……尼子お前…撃ったのか」
片倉の言葉に尼子は肩を竦めた。動作は落ち着いているが、表情は固まっている。
「撃つとしても外すつもりはあったんだが……お前狙われてたからよ。狙ってる余裕なかったわ」
「……すまねぇ」
「何謝ってやがる。殺す覚悟くらい、してここまで来てるぜ」
「は、はるちゃん…」
尼子は拳銃を構えたまま久に歩み寄った。右手の銃を蹴り飛ばし、後頭部に銃口を押し付ける。
久は口から溢れた血を拭い、小さく笑った。
「……ふふ。してやられたな、全く…」
「変な真似すんじゃねぇぞ」
尼子はそう言いながら久の左手を容赦なく踏みつけた。久の顔が僅かに歪む。
宇都宮は慌てて尼子に近寄った。
「は、はるちゃん!な、な、なんなの?」
「!その男、宇都宮広綱か?」
「あぁ、そんなとこだ。…下がってろ広綱、こいつに近寄るんじゃねぇ」
「ででででもよ、そのままじゃ死ぬぞ?!ってか、今すぐ手当てしないと確実に死ぬぞ?!」
「別に構わねぇよ」
「えぇっ?!」
宇都宮はぎょっとしたように尼子を見た。尼子は表情を変えないまま久を睨み据える。
「…こいつは殺してでも止めなきゃならねぇ」
「……はるちゃん…?」
「くはは、苛烈苛烈」
「!何がおかしい!」
突然笑いだした久に、尼子は銃口を突きつける力を強める。久は肩を揺らして笑いながら、首だけで尼子を振り返った。胸からの出血は多く、いつ死んでも不思議ではない。
久は青い顔で楽しそうに笑った。
「…どうやらここまでのようだな。今生はそれはそれでなかなか楽しいものだったよ」
「何いってやがる」
「だが死骸を晒すのは私の趣味ではないのでね!」
「?!」
突然久は体を起こし、尼子の体を蹴り飛ばした。そこまで動けると思っていなかった尼子は完全に不意をつかれ、後ろによろけた。慌てて宇都宮が尼子を庇うように立った。
だが久は尼子に興味は示さず、窓のまえに立って小さな爆発を起こした。窓ガラスが割れ、部屋に風が吹き込む。
「…何を考えているんだ!」
「ふはは」
久の目的が分かった徳川は咄嗟に床を蹴った。久はそんな徳川に楽しげに笑う。
「…ではさらばだ」
久はそう言いーーー窓から身を投げた。
「なっ?!」
片倉はぎょっとして窓の近くに駆け寄るが、直後巻き起こった爆発に顔をしかめた。
爆風が収まった頃に下を覗くと、そこには何もなかった。久はどうやら、飛び降りた後に自ら爆死したようだ。
「…あの野郎……ッ自殺しやがった!」
「え、えぇぇ?!飛び降りたー!?」
「チッ。自分から死にやがったか」
「はるちゃんやくざみたいー」
「……………悪かったな、ヤクザで」
「えっ?!」
宇都宮は尼子の言葉に再びぎょっとしたように尼子を見た。表情を曇らせる尼子に宇都宮はわたわたと腕を振って困惑した後、ばしんと尼子の頭を全力で叩いた。

Not revolved transmigration 127

大谷より早く数珠が久目掛けて飛んでいく。久は自分の周りを不規則に動き回る数珠を目で追いながらナイフを構えた。相対する大谷は丸腰だ。
「丸腰だと不利だぞっ!」
「心配しやるな、我はなしの方が得意なのよ」
大谷はそう言いながら久の間合いに入った。突き出されたナイフをすんでのところでかわし、そのナイフを両手で挟んだ。
「ふっ!」
息を吐き出すと同時に下になった手を振り上げた。ぽきん、と簡単にナイフが折れる。
「!」
久は僅かに驚いたようにそれを見たあと、すぐさま折れたナイフを捨てた。後退しながら爆発を起こし、大谷と距離をとる。だが、数珠が勢いよく飛んできて久の左手の周りに集まったかと思うと、石田のように黒みがかった黄色いオーラを放った。
「ッ!」
左手がその位置で止まり動かせなくなる。大谷は掌を久に向けて立った。
「主を殺すのが目的でなし、主が爆破できぬようにすればそれでよいのよ」
「…なるほどな。だが、いささか考えが浅はかだな」
「…?」
久は右手を上げた。その手には何かが握られている。
「死にたまえ」
「ッ!」


ぱんっ

乾いた破裂音が部屋に響いた。大谷の体が後ろに倒れる。
思わず石田は叫んだ。
「刑部!っえ?」
思わずそう叫び、そして自分が叫んだ言葉に顔色を変えた。
「…私は今何を…?」
「大谷ッ!」
爆発の衝撃から立ち直った片倉は大谷に駆け寄った。大谷は壁に手をついて体を起こす。
「やれ物騒な…」
「撃たれたのか?!」
「掠めただけよ…」
「!」
片倉は大谷の言葉にはっと大谷の体を見下ろした。脇腹から僅かに血が出ている。
「松永テメェ…ッ」
「銃を使うのは卑怯かね?」
久は掌に納まる、円形の小さな銃を隠し持っていたのだ。親指でハンマーを下ろし、片倉の額に狙いを定める。
「…」
「あぁ、避けてくれて構わんよ。大谷の胸に穴が開くがな」
「く…っ」
片倉は悔しげに目を細めた。竹中も起き上がるが、鞭が役に立たない。
「卿はなかなか使える人間だった、感謝しているよ」
「……黙れ」
「おや、本心なのだがな」
久の指が引き金に重なる。
それと同時に、石田を覆う結界が解けた。
「止めろぉぉぉぉっ!」
石田は瞬時に床を蹴ったが、ちらりと石田を見た久に爆発を起こされ部屋の反対側まで飛ばされてしまう。久は薄く笑みを浮かべ、再び片倉を見据えた。

ぱんっ



「…がふっ、?」
ぐらり、と体が揺れ、久が口から血を溢した。肺を貫通した片倉の顔から少し離れた壁に着弾していた。
片倉達はみな目を見開く。久は力なくふらふらとしながら後ろを振り返った。
「…おや、生きていたのかね……」
「……!」
久の背後、部屋の入り口で煙の上がる拳銃を手にしていたのは、
尼子だった。

Not revolved transmigration 126

「私が伊達を巻き込んだ。…すまない」
「…ッ。お前のせいじゃねぇ」
片倉は石田の言葉にそう返すと久を見据えた。久はそんな二人の会話を聞いて、笑みを深くしただけだった。
「…行くよ」
竹中は静かにそういうと同時に鞭を振るった。天井のスプリンクラーを破壊し、天井から勢いよく水が放出される。
「ッ」
勢いのよいそれに僅かに久は目を細めた。その瞬間、石田と片倉が床を蹴った。
「はあぁぁぁぁぁっ!」
踏み込んだと同時に体を屈め、反対の足を大振りに振って足払いをかける。久はそれを後ろに跳躍して避けるが、その隙に片倉が一息に間合いを詰める。
構えた刀を振り下ろすがあえなくかわされ、ちっ、と小さく舌打ちをして追撃をかけた。
片倉とせめぎあい、一旦離れた時に石田が距離を詰めた。
その時久が、にや、と笑った。
「かかったね」
「?!」
石田がその言葉に疑問を覚えたとき、足に激痛が走った。
「!石田ッ!」
「ッ!?」
僅かに爆破された足から力が抜け、その場に崩れ落ちる。調度品の影に火薬を仕込んでおいたようだ。
久は笑ってナイフを振り上げた。気づいたときにはもうガードが間に合わない。
「さようならだ」
「…!」
石田が死を覚悟したとき。
隣の部屋から扉を壊す勢いで数珠が飛んできて、石田の周りを囲い、黒みがかった黄色いオーラを放った。
それは結界のようになり、ナイフを阻んだ。
「?!」
―なんだ…どこか懐かしさを感じる……?
「また卿かね、大谷吉継」
「ヒヒ…そやつだけは死なせぬ」
その声に石田がそちらを振り返ると、扉にもたれ掛かるように大谷が立っていた。
久はくっくと喉を鳴らして笑った。
「右目も変わらなければ卿も変わらないのだな。だが諦めたまえ。前回は救えなかっただろう?」
「?!前回…?」

「あの時と今は違うゆえなぁ」

「!大谷君、君まさか」
竹中は、はっとしたように大谷を見た。
だが竹中が声をあげるまえに、久が唐突に指を鳴らした。
その動作の直前に大谷だけ気がつく。
「伏せやれッ賢人殿!」
「!」
竹中は咄嗟に頭をかばって伏せ、片倉もそれに倣った。
部屋の中を満たす程度の爆発が起こり、片倉と竹中は床に叩きつけられた。
「ぐぁっ!」
「くっ!」
「片倉!兄さん!」
「主はそこから動きやるな!」
思わず自分を囲う結界を叩いた石田だったが、大谷の言葉に動きを止めた。
4つの数珠が、大谷の周りをくるくると回る。
「主の相手は我よ」
「かつて勝てなかった相手に対し挑むとは、血気が盛んだね」
「喧しいわ。ここで戦わねなんだら太閤に合わせる顔がないゆえな。主は許さぬぞ」
数珠が禍々しいオーラを放つ。大谷はそう言いながら久を睨みすえた。
久はくっくと笑う。
「…身を不自由にする病もかつてよりは重くないようだしな」
「…失せやれ」
一瞬表情を険しくさせ、そしてすぐに戻し、大谷は床を蹴った。

Not revolved transmigration 125

「おい石田!」
「貴様に守られずとて平気だ!貴様は自分を守っていろ!」
「!」
石田は腰の高さに刀を構えた。その後ろで一瞬固まっていた片倉もすぐに刀を構える。
竹中は二人に歩み寄り、隣に立って久を見据えた。
「貴女は逃がさないよ。絶対にね」
「苛烈、苛烈。これは面白くなりそうだ。だが刀は納めたまえ。無関係の人間が死ぬことになるぞ」
「?!」
「やっぱりね。このホテルのあちこちに、爆弾仕掛けているんだろう?」
竹中の言葉に久は意味深な笑みを浮かべた。石田の額に青筋が立つ。
「貴様…一体なんのために」
「やめとけ石田。こいつにそんな理念はねぇ」
「信じられん」
「さぁ、卿らはどうするのかね?」
久はそう言って左腕を持ち上げた。
先程の爆発の時も久は指を鳴らした。今回また指を弾かれたら、間違いなく爆発する。自身がいようとこいつは爆破する、三人の中にはそういう認識が固まっていた。
竹中は素早く鞭を振るった。鞭は久の左手に絡みつく。久はにやりと笑って右手の袖から折り畳みナイフを取り出した。どう畳んでいるのか、やたら刃渡りが長く日本刀並みにある。
石田と片倉は同時に床を蹴った。部屋は広く、刀を振るのに支障はない。
「はあぁぁぁぁぁっ!」
石田はだん、と強く踏み込んだ。一気に間合いを詰め、久の懐に飛び込んだ。久はぐいと左手に巻き付いた鞭を逆に掴んで勢いよく引き寄せた。予想外の力に竹中の体が引かれる。
「うわっ?!」
「?!」
久はそのまま竹中を振り回し、竹中の声に一瞬動きを止めた石田に竹中をぶつけた。
「いたっ!」
「兄さんッ!」
「ちっ!」
揉んどりうって倒れた二人を飛び越え、片倉は久の前に立った。静かに右下に刀を構える。
久はつ、と片倉の面前にナイフを突きつけた。
「やぁ。今生ではどうやら竜の宝は卿のようだな」
「……そんなことはねぇ」
「おやおや。それがヤクザに関わってまで卿を探そうとした独眼竜に言う言葉かね?」
「政宗は独眼竜なんかじゃねぇ!」
「…ふふ。分かっているくせに…」
久はそう言って面白そうに笑うものだから、片倉は勢いよく床を蹴った。
「テメェはここで終わらせるッ!」
「些末な事だ。私も卿もね」
片倉の斬撃を久はナイフで受ける。きりきりと音が鳴る刀とナイフに久は楽しそうに笑った。
「残念だな竜の右目よ。卿がどれだけ否定した所で何も変わりはしないのだよ」
「政宗には思い出させやしねぇ!それが今の俺の覚悟!その為ならば、私は"竜の右目"になる!」
「!」
久は僅かに意外そうに目を見開き、そして、本当に楽しそうに笑った。
拮抗する刀の間に手を伸ばし、左手で片倉の顔をつかむ。
「…卿は揺るがないな。今も昔も」
「うるせぇ!」
「そうであるからこそ、壊したときの悦びは大きい!」
久はそう言い放つと片倉の刀を弾いた。弾かれた片倉はくるりと一回転して体勢を立て直し、左上に刀を構えた。
同じく体勢を立て直した石田は片倉の右手に立った。
「片倉。兄さんが再び奴の動きを止める、そこを叩く!」
「!石田、」
「1つ言っておく。私は奴を殺す覚悟は出来ている」
「何?」
「貴様1人に背負わせたりはしない。この罪は、私も同罪だ」
「!」
片倉は石田の言葉に目を見開いた。
カレンダー
<< 2012年05月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31