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Not revolved transmigration 120

「こ、こわっ!」
「うるさい、静かにしろ」
「だってここ…!」
「…やれやれ」
尼子は高さに怯えなかなか降りてくることができない前田に苦笑しながら、服についたほこりを払った。ひょいひょいと下っていく尼子を見て、前田はげぇ、と呟く。
「身のこなしのよさは大谷警部だ…」
「早くしろ、慶次。ほら」
「う、ごめん。…ところで尼子さん」
「あん?」
「どうしてあんたは、俺らに味方してくれるんだい?」
前田の言葉に尼子は前田を見上げた。しばらく考え込んだ後、ふ、と笑みを浮かべる。
「…そうだな。元々…抜け出したかったけど背中を押すもんがなかった、って事だな」
「え?」
「お前らに呼び出された日に片倉に誘われなきゃ、裏切ってなかったな」
「そ…そうなの?」
「そうだ。んな危ねぇ橋渡りたくねぇからな」
「うへぇ…」
前田は思わずそう呟いてしまった。要は尼子はあの呼び出しさえなければ裏切っていなかったということになるからだ。
「…なぜあの女に誘われて裏切ったんだ?惚れてるのか」
「はぁ?そんなんじゃねぇよ。アイツは間違ったことを言ったことも嘘を言ったこともねぇ。アイツはここのやつらは松永久を倒せると言った。俺はそれに賭けただけだ」
「なぁ、ってことは、松永を倒したい理由があるってことか?」
「…まぁな。だがそんな事はお前らには関係ねぇ。俺が幹部であることに違いはねぇんだからな」
「!」
雑賀は尼子の言葉にはっとしたように目を見開いた。ややあって、前田もその言葉の意味に気がつく。
「…それ、これが終わったらアンタも逮捕しろ、ってことかい?」
「…たりめぇだ。罪は償う。でねぇと、アイツらに合わせる顔がねぇ」
「…!そうかい。分かったよ…」
前田は何か言いたげに視線をさ迷わせたが、最終的にそう言った。
最下層にたどり着き、問題なく外に出る。
「そのホテル、どこにあるんだい?」
「永田町だ」
「よりにもよって永田町か…」
「そう、よりにもよって永田町だ」
げんなりと呟いた雑賀の言葉を聞き流して、尼子は自分が乗ってきた車に乗り込んだ。二人は後部座席に乗り込み、前田が身を乗り出した。
「なぁ、どうするんだい?」
「多分、坊主がホテルにいる連中に話してるはずだ。雑賀、お前携帯貸したんだってな」
「…携帯貸してくれってそういうことか」
「…だが…降りてくる前に言ってた話が本当なら、有線ですら内線しか使えないんだろう?どうやって…ジャマーを止めるのは危険だ」
「簡単な話だ。あのジャマーはあくまで社内でしか使えない。それはつまり、建物がジャマーに関係しているということだ」
「……。屋上に出れば大丈夫?!」
「そういうことだ。事実、あそこ出てすぐにジャマーの効果切れただろ。本来ならジャマーは円状に作用する。俺たちが出た所は会社の四隅を繋げた所を直径としてもまだ円の中だ…つまり、あのジャマーはあくまで屋内にしか作用しない」
「……でもそれ凄くない?!」
ぐいと前に更に乗り出してきた前田の頭を尼子はぺしりと叩いた。
「…確かにな。会社全体を規制するのに一台で済むってのはなかなかの技術だ、松永が潰そうとしたのも頷ける」
「……!そっかぁ……」
「…いっそのこと、電話してみるか。雑賀、電話してくれ」
「分かった」
雑賀は尼子に投げ渡された携帯を開いた。
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