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貴方も私も人じゃない79

「………」
鎮流が出ていったのを秀吉は横目に確認し、視線をまた外へと戻した。
秀吉は鎮流に会ったとき、なんとなく半兵衛が以前口にしていた「気になる子」だろうと思っていた。まさか本当に半兵衛が言っていた通り、再び出会うとまでは思っていなかったが。
「…後釜、か」
秀吉はぽつりとそう呟き、目を細めた。


 鎮流は秀吉の言葉を気にかけながらも、半兵衛に指示された場所へと向かった。そこには新兵指導のためか、道場のようなものがあった。
道場の中では稽古をしているのだろうか、木刀のぶつかる音が外にも響いている。
「…剣道か…痣だらけになるってやらせてもらえなかったな」
鎮流は道場の外で待ちながら、ぽつりとそうつぶやいた。
それから少しして、半兵衛が姿を見せた。
「ごめんね、お待たせ。中に入ってくれてもよかったのに」
「お邪魔かと思って…」
「はは、新人とはいえその程度で気が散るほど腑抜けじゃないさ」
半兵衛はそう言いながら道場の扉を開いた。開けたところで、稽古中の男たちは誰も振り返らなかった。
半兵衛は鎮流と共に道場のすみに腰を下ろした。
「一先ず編成を……どうしたの?」
「、えっ?」
半兵衛は、軍の編成表なのだろうか、何かの紙を広げたが、ふと鎮流の顔を見てそう尋ねた。鎮流は驚いたように半兵衛を見、顔に手を当てた。
半兵衛は首をかしげる。
「…、なんだか不服そうな顔してるけど」
「えっ?いえ、………少し、気になることが」
「へぇ?」
「…秀吉様が、何故半兵衛様の誘いに乗ったのか、と…」
「!………、そう」
「よい、と言われてしまったので、お答えはできなかったのですが…」
「…気にしなくていい、興味が出たんだろうよ。君みたいな若い女の子は、豊臣とは無縁だから」
「………そうですか」

その割には
秀吉が声に滲ませていた、色合いは。

「(……私などいらないと、言いたげな雰囲気だった…)」
鎮流は、ぐ、と拳を作った。半兵衛はそんな鎮流に目を細めたが、何も言わなかった。
「…、君も分かっただろうけど、秀吉はあまり余計なことは言わない質でね」
「…?」
「どうしても気になるなら聞いてみるといいさ。君なら大丈夫だとは思うけど、礼節には気をつけてね。まぁ、彼は寛大だから怒りはしないけどね。答えてくれなくなるかもしれないけど、ふふふっ」
「………、はい…」
聞きたいような、聞きたくないような、そんな気持ちではあったが、思った以上に何を考えているかが分からない秀吉が、何を思っていたのかは気になる鎮流だった。
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