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貴方も私も人じゃない56

「一言で申し上げれば、私は特別貴方様個人に興味がございません」
「何?」
「興味がありませんから、外見がどうであろうが性格がどうであろうが格別何も感じません。どうでもいい、というのが正しいでしょうか。まぁ見たところ石田様は清潔になさっておいでですし、私が過去見てきた愚かな男どもに比べればだらしなくもなくみっともなくもないので、まともなお方とは思っておりました」
「…………」
三成は何とも言えない鎮流の言葉に、怒りとも戸惑いとも言えない、微妙な表情を浮かべていた。
鎮流はくすり、と小さく笑う。
「私が以前いたところでは、あまり白い髪というものは珍しくありませんでしたので…いずれそうなるものですし。赤や緑に比べればはるかにマシ」
「緑…?!」
「以前も申し上げましたが、石田様は顔立ちが整っておいでですから、特別気味が悪いとは思っておりません、これは本当です」
「………貴様が変人だということは良くわかった」
「まぁ」
鎮流は三成の言葉に目を丸くしたが、くすくすと楽しそうに笑ったのだった。三成は、ふん、と鼻を鳴らし、腕を組む。
「何故貴様は本音を隠す」
「…、本音は言質にされやすいので、隠すくせがついてしまったのです」
「言質、だと?貴様、それほど立場の人間だったのか?」
「それほどの立場の人間の娘だったのです。訳あって、今は家族とは遠く離れたここにおりますが…」
「…………何故そのような立場であるのに、ここにいる」
「離れたところに来てしまったからです。あまりその辺りは詮索されたくはないのですが…」
詮索されたくない、という鎮流の言葉に三成は目を細めた。その表情を鎮流は意外そうに見た。
三成にも詮索されたくない物があるのだろうか、と。
「…、そうか。ならば聞かん。貴様が間者の類ではなことは分かる」
「…それは光栄です」
「もう一つだけ答えろ。貴様、刑部の事はどう思っている」
「大谷様…でございますか。答えにくいものをお聞きになるのですね」
「当然だ。私が気になるのはそれだけだ。他の者を貴様がどう思おうとどうでもいい」
「…、大谷様は、石田様の大切なご友人なのですね」
「?」
「大谷様は、本音を申し上げれば、少しばかり不気味な方でございます」
ぽつりとどこか羨ましげな声色でそう呟いた鎮流に、よく聞き取れなかった三成は僅かに首を傾げたが、何事もなかったように言葉を続けた鎮流に聞き返すことはしなかった。
「不気味、か」
「色々な人間を見てきましたが、手品でないのに宙を浮く方は初めてでしたし、あそこまで包帯を巻かれている方も見たことがなかったので…」
「…それだけか」
鎮流は、三成の言葉に、うーん、と小さく唸った。
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