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貴方も私も人じゃない53

三成の柄を掴んだ手が、鎮流には調子の悪いテレビ画面のようにぶれたように見えた。
ぶれが止まると同時に、カチン、と小気味のいい音が響いた。
直後、敵兵達が体の節々から血を噴き出させながら、バタバタと倒れた。
鎮流はぎょっとして、数歩後ずさった。
ー…全員斬られている……まさかさっき手がぶれて見えた時…あの一瞬でこの人数斬ったって事…?!
半兵衛は慣れたように死骸をまたいだ。
「ありがとう、三成君」
「お怪我は!」
「無い無い。彼女もいたし、そう苦労してないよ」
「…貴様が?」
三成は意外そうに鎮流を見た。三成の言葉に鎮流ははっと我に帰った。
「彼女、護身術にそこそこ長けているみたいでね。面白かったよ、細身なのに簡単に転がしていくんだもの」
「め、滅相もございません」
「…そうか」
「さっさと出ようか。どうやらまだまだ隠れているみたいだから」
「はっ!」
「はい!」
2人は勢い良く返事をすると、三成を先頭に早急に部屋から出た。
ちょうどそこへ、包囲を突破してきたらしい家康も追いついた。
「半兵衛殿!よかった、怪我も無さそうだな」
「あぁ、お疲れ様。さっさとここを出よう」
来ると確信していたのだろう、半兵衛はさして気にはせずそう言うと、踵を返した。
鎮流は三成と半兵衛を先に行かせ、自分は家康の後ろについた。走り出しながら、鎮流は家康を見上げる。家康は僅かに息をあげていた。
「家康様、お怪我はございませんか」
「!あぁ、大丈夫だ、問題ない!鎮流殿こそ、大丈夫か?」
「私は大丈夫です。途中石田様も来てくださいましたから」
「そうか、三成を先に行かせてよかった」
家康は鎮流の言葉にほっとしたようにそう言い、安心したように笑った。鎮流もそれに返すように薄く笑う。
半兵衛は軽く走りながら、あぁ、と思い出したように呟いた。
「三成君、ここの兵どれくらいいた?」
「小隊が13、中隊は8。どちらも隊長は皆交渉の場にいると言って、家康が放り投げた者を見た時は全員驚愕していた様子でした」
「うん、やっぱりそれなりに数盛ってたし、部下には言ってない…ただの悪あがきだね。さぁて、どうしてくれようか」
半兵衛は呆れたような声色でそう呟いた。怒りというよりかは、面倒臭いと言いたげな口ぶりだった。
鎮流は家康の方をちらりと見た。
「…家康様なら、どうなさいますか?」
「!ん、んん?」
「降伏したと見せかけておいて使者を嵌めた敵…。家康様なら、どうなさいますか?まだ、信じますか?」
「………困ったことになってしまったなぁ」
家康は言葉とおり、困ったようにそう言った。
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