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貴方も私も人じゃない62

翌日。
鎮流は武器を持たず、家康のみを連れて敵兵控える城の広間へ向かった。敵兵らは、姿を見せた鎮流を驚いたように見た。
鎮流は僅かに緊張する気持ちを抑えるように、ふう、と小さく息を吸った。
「豊臣軍軍師見習いの鎮流と申します。本日は貴方方に対する処遇をお伝えに参りました」
「…!」
「貴方方に対する刑罰的処罰はございません」
「………えっ?」
鎮流の発した言葉に兵たちはざわざわとざわめいた。鎮流は冷静に言葉を続ける。
「確かに、貴方方の隊長方は和平を提案しておきながら我が軍の軍師である竹中半兵衛様を欺き殺そうとなさいました。…しかし、こちらもそれに対処させていただき、その上でその罪を何も知らなかった貴方方に背負わせるというのも、また道理ではないでしょう」
鎮流の声はざわめいた兵たちを黙らせ、そして静かな部屋によく響いた。家康は鎮流の隣でどこか嬉しそうに薄く笑った。
鎮流も柔らかい笑みを浮かべている。彼女の場合は、ただの道具としてのみ、笑顔を作っているわけだが、それを知る者はいない。
「ですので、貴方方にこれ以上の処罰は求めません」
「ほ…本当か?!」
鎮流は驚いたようにそう尋ねた敵兵に、鎮流は頷いて見せる。
「はい。自らの帰るべき場所へお帰りください。……もし、身の振りに困るようであるならば、豊臣に下り豊臣の兵となるならば、保証いたしましょう」
「なんだって…?!」
ただでさえざわめいていた兵たちであったが、鎮流の言葉に更にざわざわと騒がしくなかった。鎮流は家康の方を見、くすり、とどこか楽しそうな困ったような笑みを見せた。
家康もそれに笑って返し、兵らの方を振り返った。
「信じがたいという顔をしている者がいるが、この事は半兵衛殿も勿論承知の上でだ。その事はワシも保証しよう!勿論、選択はあなた達の自由だ。来るも去るも構わない、決断してくれ」
「…ほ、本当に…?」
「あぁ。…、共に道を進んでくれるものは、来てくれ。ワシと彼女は門のところで、日が暮れるまで待っていよう。待っているよ」
家康はそう言うと鎮流の方を見、小さく頷く。鎮流はそれに頷き返し、二人はその部屋からでた。
二人が部屋から出ると、部屋のなかはざわざわと今まで以上に騒がしくなった。鎮流は、ふぅ、と息をついた。
「…、これでよかったでしょうか」
「あぁ、大丈夫だと思うぞ!…後は彼らに存分に悩んでもらおう。行こうか」
「はい」
鎮流は家康の言葉に頷き、門の方へと向かった。
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