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貴方も私も人じゃない63

「…、家康様はどれくらい来ると思いますか?」
「ん?あぁ、向こうの兵が、か?」
門のところで、二人は座って動きがあるのを待っていた。鎮流はこてん、と門に背を預ける。家康は視線を城の方に向けた。
「…、そうだな…ワシはあまり来ない気がする。秀吉公は…豊臣は、決して人気のある軍ではないからなぁ」
「人気?人気のある軍などあるのですか?」
「うーん…例えば奥州の覇者、独眼竜伊達政宗。彼のもとは魅力があるとワシは思うぞ」
「……伊達政宗…?…、あぁ、教科書にはまるで出てこないあの微妙な…」
「?」
「いえ、なんでもありません。しかし、豊臣は魅力がないと?」
家康はうーん、と唸った。
「…秀吉公のやり方は、あまり好まれていないという事だ」
「…貴方様も?」
「ワシは秀吉公を信じているから。だから、ワシは秀吉公のやり方についていく。だが、皆ワシのように思うわけではないから…な」
鎮流は家康の言葉に、どこか不満げに目を細めた。
そして

「惰弱な人間共が」

ぼそり。鎮流はそう呟いた。
家康は目一杯目を見開いた。鎮流が静かに呟いた言葉が信じられないのか、パクパクと口を動かしていた。
鎮流は少ししてそんな家康に気が付き、あぁ、と我に返ったように顔をあげた。
「…、鎮流殿、今なんて言った」
「…、私は、豊臣のやり方を嫌うという感覚が理解できませんでしたので」
「…それはあなたがまだ豊臣を知らないから、」
「この戦国時代、どんな言い訳を並べようとやってることはどこも同じ。それを否定しようなどと思っている時点で、現実から目を逸らしている」
「!確かにあなたは、皆同じに見えると言っていたが…」
「自らの罪と向き合うこともせずに、どうして天下など統べられましょう。…いえ、存外反省もしないような人間の方がなってしまうようなものなのかもしれませんが、そんな人間の統治下はすぐに腐る」
「………鎮流殿…」
家康は戸惑ったように鎮流を見ている。鎮流はそんな戸惑った家康に、くすり、とどこか楽しそうな寂しそうな、微妙な笑みを浮かべた。
「…私を、貴方様が知る女という存在と同じに見ていると、失望することになりますよ」
「………、それは、どういう意味だ?」
「私はそんな可愛いげはないということですよ」
「…………」
家康は鎮流の言葉に、どこかムッとしたように鎮流を見た。そして。
「ッ!?」
「そんなことはない!」
家康は不意にがしりと鎮流の肩を掴み、自分の方へと引き寄せた。ぐっと近くなった顔に鎮流はぎょっとしたように家康を見た。
家康は真っ直ぐ鎮流を見つめる。
「あなたはそこまで冷たい人ではない、それは分かる!そんなことを言うな…!本当にそうなってしまうぞ?!」
「え、いや、あの、家康さま、」
「どうしてそんな悪くものを見るんだ?それがあなたのいた環境のせいだというなら、ワシが変えてみせる!だからそんな悲しいことは言わないでくれ!」
「い、家康様あの…!」
至近距離で語りかけられ、鎮流は混乱で顔を真っ赤にさせていた。
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