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貴方も私も人じゃない71

三成は、ふん、と鼻をならした。
「大阪に発つならば早々に休め。恐らく朝は早いぞ」
「そうだな、大阪まで行くと考えると…日の出と同じくらいか?」
「それは確かに…早く休むことにいたします。それではおやすみなさいませ、家康様、三成様」
「あぁ!おやすみ、鎮流殿」
鎮流は二人の言葉にそう挨拶すると、源三を伴いその場を後にした。
にこにこと鎮流を見送ったあと、家康は不思議そうに三成を振り返った。
「なぁ、さっきのどういう意味だよ三成」
「そのままの意味だ」
「分からないから聞いてるんじゃないか」
「…ふん。いずれ貴様も気がつく」
「うーん?」
首をかしげる家康に、三成は薄く目を細めた。どこか寂しげにも見えるその表情に、家康は僅かに驚いたように三成を見た。
「…まぁいい、私も戻る」
「えーっ、せめて飲み干してからにしてくれよ!」
「ええいうるさい!」



 翌日朝早く、鎮流は半兵衛と少数の手勢と共に陣を出発した。出発したのは日が出て間もない時間帯で、辺りは僅かに靄がかっていた。
鎮流は慣れぬ馬に苦心しながらも、半兵衛達の後についていった。スカートでは跨がれない為横向きに座っていたが、これがまた不安定で不安になる。
隣についていた源三は、そわそわとしながら鎮流を見た。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「…今のところは…。貴方、慣れてるのね」
「以前の仕事で乗っていたもので…」
「ふぅん。…、ま、その内慣れるわ」
「…、左様でございますね」
「鎮流君」
「、はい!」
前には聞こえないような声量で話していた二人だったが、不意に半兵衛が鎮流に声をかけ、鎮流はワンテンポ遅れて返答した。
半兵衛は首だけで軽く振り返り、にこ、と笑った。
「大丈夫かい?」
「はい、問題ありません」
「この先少し進んだら一旦休憩するよ」
「承知いたしました」
半兵衛は鎮流が返答したのを確かめると、笑ったまま顔を前へと戻した。
源三はそんな半兵衛を静かに見つめていた。
「…、竹中様はお嬢様に似ていらっしゃいます」
「半兵衛様と?」
「はい」
「…、私程度をあの方と並べないでちょうだい、半兵衛様に失礼だわ」
「そうは私は思いませぬが…お嬢様がそう仰るならばそうなのでございましょう」
源三はそう言うと、なぜかどこか楽しげに笑ったのだった。
鎮流はそんな源三に目を細める。

「…、私に付き合わなくてもいいのよ」

ぽつり、と漏らした言葉に源三は驚いたように笑みを消し、鎮流を見た。
鎮流は源三を見ず、ただ前を見ている。
「…、私は力がほしい。だからもう少し半兵衛様に師事していたい。だけど、貴方がそれに付き合う必要はなくてよ。先に戻る術を探すなりなんなり…」
「…、私は私の意思でお嬢様の元にお仕えさせていただいております。お邪魔ならば、そうお命じくださいませ」
「…貴方、存外ずるい人間ね」
鎮流は源三の言葉に目を細めてそう言い放ち、そのあとは何も言わなかった。
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