スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

貴方も私も人じゃない55

「彼らの罪悪感を利用する、とでもいいましょうか。こちら側を良い人間だと思い込ませればよいのです」
「何故事実を伝え判断させることがそれに繋がる」
不可解そうな三成に、鎮流はぴっ、と人差し指を立てる。
「こう言うのです。彼らの隊長達は降伏し和平を提案しておきながら、丸腰の半兵衛様を欺き殺そうとした。本来ならば交渉決裂で殲滅も免れない状況…ですが、彼ら自身に罪はない、命を取ることはしない。身の振り場所に困っているならば豊臣の配下に降り豊臣の兵となるも構わない、自身で決めよ…と」
「…成程」
「半兵衛様は敵になろうが味方になろうがどうでもいいと仰っておりました。なら、こちらに来る意志のあるものだけを残せばいいかと…」
「おぉ…さすがだな!いいんじゃないか!?いやぁ、ワシやお前が考えるよりずっと柔軟でいいな、三成!」
「なっ?!貴様家康ゥ…!」
「お二方に異論がなければ…」
さらりと家康が言った言葉に三成はぎろりと家康を睨んだが、鎮流の案に対しては異論はなかったようで、チッ、と小さく舌打ちすると鎮流の言葉に小さく頷いてみせた。
鎮流はほっと息をついた。
「…石田様、私はまだ貴方様に信用してはいただけていないと思いますが…」
「!」
「精進致しますので、よろしくお願い致します」
鎮流はそう言って三成に頭を下げた。

三成は部下にいるとかなりの力を発揮するであろうことがここ数日で分かっていた。三成自身にさして興味はないが、下手に出て信用を得ていても悪くはない。むしろ、このまま豊臣にいて軍師になるには、自身の実力以外にも三成のような警戒心が強いが味方への貢献は厚い人間の信用が必要であるはずだ。

そう判断し、鎮流は先の行動に出たのであった。
三成は薄く目を細める。
「…何故だ」
「?」
「何故私にそのような言葉をかけた」
「…?貴方様にとって、まだ私は胡散臭い存在ではないかと思ったからで…」
「そうだ三成、お前、」
三成は家康を制すように家康の前に手のひらを突きつけた。三成はじ、と鎮流を見つめる。
「…私の信用が欲しいのならば貴様の本音を聞かせろ」
「本音…」
「貴様、私をどう思っている。事実は聞き飽いた」
「…、家康様、席を外していただいてもよろしいですか?」
「えっ?」
ハラハラとした様子で二人を見ていた家康は、鎮流の言葉に驚いたように鎮流を見た。鎮流は家康に向き直り、気まずそうに笑う。
「…石田様が望まれるのならば、全て心の内を述べましょう、ただ、それを他の方に聞かれるのは気恥ずかしいので…」
「…、分かったよ」
家康は僅かに納得したような様子を見せ、ふ、と笑うと、三成をちらりと見てから陣を出ていった。
三成は家康の背中を見送り、ふん、と鼻を鳴らす。
「人に聞かれては困るような本音か?」
「そうではありません。…石田様、私は確かに、貴方様の仰っしゃる通りあまり本音は表に出さぬようにしております。それが気に触ったのならば謝りましょう」
「そんなことはどうでもいい、さっさと答えろ」
鎮流は三成に向き直った。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2014年07月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31