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貴方も私も人じゃない74

男は桜に伸ばしていた手を下ろし、じ、と鎮流を見据えた。僅かに赤みがかった、一風変わった色合いの目に見据えられ、鎮流はぞわり、と鳥肌を立たせた。
ー…なんだろう、この人。威圧感が半兵衛様や三成様の比じゃない…!
男はしばし鎮流を見据えた後、不可解そうに目を細めた。
「…見ぬ顔だな。どこから入り込んだのだ、小娘」
男は静かに、見知らぬ顔だと言うのに焦りや不審を見せるでもなく、ただ静かにそう尋ねた。
鎮流は思わずその場で膝をついた。そうしなければいけないような気がした。
「私鎮流と申す者。豊臣軍軍師、竹中半兵衛様に、四日前から師事しております」
「半兵衛に…?」
ー半兵衛様を呼び捨てになさった。やはり、この人が…
男は不思議そうに僅かに眉間を寄せ、首をかしげた。
「…何故一人でこのような場所におる」
「馬を繋いでおりましたら、広い城ゆえかはぐれてしまい…」
「…我が誰であるかは知っているのか」
「…存じ上げませぬが、豊臣秀吉様とお見受けいたしました」
鎮流は頭を下げていたが、感じる視線に体を僅かに震わせた。
男にその気はないのだろうが、彼の持つ威圧感、存在感が鎮流を震わせたのだ。これだけの人間は、早々いるはずがない。
鎮流の言葉に、ふっ、と小さく笑った音が聞こえた。
「…成る程ただの小娘ではないようだ。いかにも、我は豊臣秀吉よ。よく気が付いたな」
「…ッ」
「ふっ。ついてこい」
「っ、え」
秀吉の言葉に驚いて顔をあげると、すでに秀吉は背を向け歩き出していた。鎮流は慌ててそれを追いかけた。


 「どこ行っちゃったんだろ…やっぱり一人で行かせるんじゃなかったな」
「申し訳ありませぬ竹中様…」
「迷ってるのかもしれないな…すっかり失念してたや」
「半兵衛」
どうやら馬屋があったのは城の裏手の方らしく、秀吉は城の横手を抜け、表へと回った。ちょうどそこには半兵衛や源三らがいた。
秀吉が半兵衛の名前を呼び、半兵衛は驚いたように秀吉を振り返った。
「あぁ、秀吉…って、鎮流君?」
半兵衛は秀吉の後ろにいた鎮流に、大層驚いたように鎮流を見た。
「半兵衛様、申し訳ありません」
「お前の弟子だと言っていたが」
「あぁ、そうなんだ。先の戦場の近くで会った後、家康君が拾ってきてね。優秀な子だし、彼女にその気があったから弟子にしたんだ」
「……、ほぅ」
秀吉はそこまで興味はないのか、半兵衛の言葉にもそう返しただけだった。
「はは、これから君に紹介しようと思っていたのに、まさか君が先に見つけてしまうなんてね」
秀吉は半兵衛の言葉に目を細めた。
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