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貴方も私も人じゃない65

鎮流はちらり、と家康の方を見た。
「…、お二人はとても仲がよろしくていらっしゃるのですね?」
「え?」
「家康様と三成様です」
「…。そ、そうか?」
家康は驚いたような嬉しそうな顔で鎮流を見た。鎮流は鎮流でそんな家康の反応を意外そうに見る。
「…、どうかされましたか?」
「!いや、そういう風に言われたことはなかったから、つい…」
「なかった…?真でございますが?」
「ワシはともかく、三成はああいうキツい性格だろう?だから、三成と仲がいい、って見方をする奴はあんまりいないんだ」
「……、そうでございますか…」
鎮流はどことなく納得していない様子で小さく呟いた。家康は苦笑を浮かべる。
「アイツは生きているだけで損してるような奴だからなぁ」
「…さらりととんでもないことを仰るのですね」
「あいつは真っ直ぐすぎるんだ。不器用なくらい…それに自分には勿論他人にも厳しいからな、まあ怖がられやすいんだ」
家康が苦笑混じりに言った言葉に、鎮流も目を細めて薄く笑った。
家康の言葉はあながち間違いではない。三成がよくも悪くも一直線なのは簡単に見てとれた。
「…組織に一人は、三成様のようなお方がいた方が均整がとれるものです」
「へぇ、そうなのか?」
「人は集団を作ると、必ず全力を出さず力を抜くものが一定の割合で出てくるもの。そうしたものを抑えるためにも、厳しすぎると思われるくらいの存在がいた方が、全体の質が上がります。……と、私は思っております」
「ふーん…」
家康はほうほう、と興味深げに鎮流の話に耳を傾けている。鎮流は軽く肩を竦めた。
「何故かは分かりません。ただ、人間というのはどうしても簡単に低い方へと転落するようです。水が坂を流れ落ちるように…。何もしなければ水は溜まります。人も同じで、何もしなければ、集団全体の程度は下がる一方です」
「………」
ザァ、と僅かに木々の音を立てさせて風が吹く。鎮流は風に揺れた髪の毛を手で掬い、耳に髪をかける。
「しかし水は溜まれど、太陽の光からの熱で蒸発したり、土へ吸収されていったりして、消えていくもの。三成様はある意味、そうした水にとっての蒸発させる太陽、そんな存在なのではないかと、私は思います」
「…へえ…!なるほど!三成が太陽、かぁ…。鎮流殿、あなたの価値観は面白いな!」
「?そう…でございますか?」
「面白い、というのは少し語弊があるかもしれないが…そう、あなたといると、目から鱗な話が出てきて、ワシは楽しいよ」
家康はふわり、と楽しそうな笑みを浮かべた。
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