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貴方も私も人じゃない73

「……そう、でございますね」
「あぁ。死んだらすぐに、僕や君という存在が消えてしまう訳ではない。…と、僕は思ってるよ。現に、僕の志は君や三成君たちが引き継いでくれる」
「!」
「そうだろう?」
「……、はい」
鎮流は半兵衛の問いかけに、一瞬間を開けながらも、力強くそう返した。半兵衛は、だよね、と、どこか嬉しそうに笑った。
「…、そろそろ行こうか。大阪までまだ少し距離があるからね」
「…はい」
半兵衛はそう言うとゆっくりと腰をあげた。鎮流は半兵衛の言葉をぼんやりと考えながら、合わせて腰をあげた。
半兵衛は立ち上がった鎮流に視線を合わせた。
「恐怖を抱くことは悪いことではないよ。ただ、それに飲まれないことだ。恐怖に呑まれたら最後、たぶん、君は君が最もなりたくないものになる」
「……、はい」
「頑張って。…僕は君のこと、期待しているよ」
「…、はい!」
鎮流は半兵衛の、期待している、という言葉に、表情を引き締めてそう返答した。

期待しているよ
そんな言葉にいちいち喜ぶ自分が、少し恥ずかしく思えた。

半兵衛はにこ、と笑った。今日の半兵衛はよく笑う。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
半兵衛の言葉に鎮流は頷いた。
少し離れたところにいた源三は、どこか困ったような表情を浮かべて鎮流を見つめていた。



 その日の日が沈む少し前あたり、それくらいの時間に半兵衛の一行は大阪にたどり着いていた。
半兵衛に言われた通りに馬を繋いでいたら鎮流は半兵衛たちとはぐれてしまい、きょろきょろと辺りを伺っていた。
「…どうしましょう、源三ともはぐれてしまったなんて。困ったな…」
そう呟きながらも、一先ずは人気のある方へ向かおうと、鎮流は城門があるであろう方角へと向かった。
大阪城は今まで見た城とは比べ物にならないくらい大きかった。入ったときには反対側が見えず、今も城のどの位置にいるのか正直分かっていない。顔をあげても、高くそびえる城郭が見えるだけだ。
「…流石のスケール。私のところの大阪城もエレベーターだかエスカレーターだか完備だったけど……。………ん?」
そんなことを誰ともなしにぽつりと呟きながら歩いていると、ふと視界に人の姿が入った。ちょうどいい、道を尋ねようとそちらを見れば、家康よりも体格のよい、大男がそこにいた。
赤と黒を基調とした鎧を着込んでいて、僅かに茶色がかった髪は上部は結わえられている。少し離れてはいるが、二メートルはあるだろうか。
「…でか」
どうやらひっそりと佇む桜の木を見つめていたらしいその男は、鎮流の呟きが聞こえたか、くるりと鎮流を振り返った。
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