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もうお前を離さない179

「…一応さ。宇都宮は姉小路と同じ、お館様が倒れたのを気に挙兵したんだぜ。…許すのか?」
「…佐助。お前には話しただろう、…片倉殿の事を」
「…ッ…。…俺様は直接会ってないから何とも言えないけど、ただ敵を殺し勝利する事が勝利でないという言葉に迷ってるから生かすってのか?」
「!」
「迷っているから殺さぬのではない!…、某は信じてみたいのだ。どちらかが滅びねばならぬ道以外の道もあると!それを作ることが出来るのだと!!」
「真田の大将…っあんた…」
「戦に勝ち終わらせる事で平和が築けるのならば、何故この戦国は終わらぬ?…それはきっと、平和など戦では作れぬからだ。戦は戦しか生まぬのだ!」
真田は一旦言葉を切ると、2人をぎっと強く見つめ、言った。

「ならば某は戦わぬ。敵意を向けるのならば受けて立とう、だが某は恨みはせぬ!哀しみも憎しみも、全ての想いを、受け入れ、繋げてみせる!!」

猿飛も宇都宮も驚いて真田を見、そして宇都宮は面白そうに、にや、とどこか挑戦的な笑みを浮かべた。
「…お前、面白いな、真田」
「む、そうでござるか?」
「この戦国の世で、敵味方の共存を目指す奴はそういない。…あの権現も、絆の力でとは言ってるが共存とは違う…。………決めた、俺はお前に賛同する!」
「!」
宇都宮は居住まいを直すと、笑みを浮かべたまま片手を差し出した。
「お前に救われたこの命、お前のその夢を叶える為に使わせてくれ!」
「…宇都宮殿…!う゛っ…ありがとうございまする゛ぅ゛ぅぅっ」
「狽ネっなんで泣くんだ?!」
「あーもー幸村はいつも決まらないんだから…。…佐助さんは、反対ですか?」
「…いや。反対じゃないよ。…そんな風に考えてるとは思わなかったからさ」
あわあわとする宇都宮に大丈夫ですと声をかけ、見事な男泣きをする真田の背をぽんぽんと叩きながら宮野は猿飛を見上げた。猿飛ははっと我に帰ると肩をすくめ、静かに部屋を出、庭に出た。
宮野はそれに続いて部屋を出る。
「…平和の世を作るのではなく、共存する、か。ある意味でこっちこそ絆の力な気がするけどねぇ」
「…佐助さん」
「…徳川も言い方は優しいけどさぁ、噂じゃ四国の将長曾我部元親の所領を長曾我部が留守の間に強襲したりしてるみたいだし」
猿飛は頭の後ろで腕を組み、空を見上げた。宮野も空を見上げた後、視線を落とした。
「…長曾我部はともかく…、…哀しみも憎しみも全ての想いを受け入れ繋げてみせる、か…。…三成さんの恨みも、伊達の怒りも、幸村は…」
「……簡単な事じゃないよね」
「…でも幸村、覚悟は出来てましたよ」
「それ、知ってる」
「ふふ、ですよね。…宇都宮が賛同したのにはちょっとびっくりしました。まぁ変に抜けてる所とかは幸村に似てる人ですけど」
宮野はちら、と部屋を振り返る。猿飛は振り返らないまま笑った。
「確かにあの2人ちょっと似てるよねぇ。…しかしまぁ、宇都宮には賛同してもらえたけど、他はどうだろうね…」
「…易しい道ではないと思いますよ」
「だよねぇ。あんまり俺様の仕事増やさないで欲しいんだけどなー。ま、仕方ないか」
「ふふふ…佐助さんって本当お母さんみたいな人ですね」
「はぁ?お母さん?!何それ!?」
「気にしないでください冗談です。ははっ」
宮野はくすりと笑った。
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