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もうお前を離さない158

「ご馳走様っと」
「お粗末様でした」
「んじゃ、俺様まだ仕事あるからもう行くわ」
「む、そうか!気を付けて行って参れ!」
猿飛は粥を食べ終えると早々に屋敷を飛び出していった。真田はそんな猿飛を見上げたのち、宮野を振り返り手を差し出した。
「?何?」
「その…少し時間ができたのだ。上田の町に出ぬか?そ、それに城を離れておった故民の様子も見たいのだ!」
「…一緒に?」
宮野の問いに、真田は僅かに頬を染めながら頷いた。
「うむ!お前は武田軍の外に行ったことはないであろう?」
「…せっかく幸村からお誘い貰ったんだから、行こうかな」
宮野は暫く真田とその手を見比べたのち、ふんわりと笑んだ。


 「ん?おぉ!幸村…さまぁ?!」
「誰だ?!あの幸村様が…女子と二人乗りなど…!」
「…滅茶苦茶目立ってるよ幸村」
「む…だが佐助が黎凪と出掛けるのならばこうしろと」
「…あ、そうなの…。…ち、ちょっと恥ずかしいんだけど」
馬に乗っていた真田は宮野を自分の前に横向きに座らせていた。宮野は袴姿の真田にしがみついて、気まずげに俯いている。その宮野の格好も、陣を走り回っていた時の袴ではなく小袖に変わっていた。
「む…恥ずかしい…のか?」
「幸村は恥ずかしくないのね…幸村の破廉恥感知器の基準が分からない…人に密着してるとこ見られてるのにさ」
「…。…、むぅ。そうではあるが…。好きな女子を好きであると叫ぶ事は恥ずかしくはない!」
「………。…幸村って…男前だよね……」
「そ、そうか?」
宮野はクスクスとひとしきり笑うと、俯いていた顔を上げて真田にしがみつく腕に力をこめた。
「まぁいいや。幸村が嫌じゃないのを嫌がってどうする」
「…?」
「今はどの辺りなの?ここ」
「うむ、もう少し行くとちょうど町の中央だ」
「へぇ…って中央?結構広いね…!」
2人は町の中央で馬を止め、馬から降りた。その時に真田が先に降り、宮野に手を差し出した。宮野は素直にその手を取る。
「…幸村って素でこういう事出来るから凄いよね…」
「?む?」
「ゆ…幸村様…」
「む、むむっ、なんでござろうか?」
「其方の姫様は…幸村様の……奥方様なのでしょうか?!」
「なっ?!」
真田に話し掛けた民に続き、わらわらと真田達の周りに人が集まる。真田は暫く問われた内容に固まっていたが、にこりと満面の笑みを浮かべた。
「うむ!そうだ!!」
「なっ…まっ真でございますかぁぁぁ?!」
「幸村…アンタって人は…」
「おおお御名前を教えていただけますでしょうか?!」
「え…えと、宮野黎凪と申します」
「幸村様についに奥方様が!めでたき事じゃーっ!」
「いや、私まだ婚約は…。…まぁいっか、奥さんって事で」
わいわいと騒ぎ始めた上田城下町の民に宮野は苦笑し、その民に囲まれて笑っている真田を見て、小さく苦笑でなく笑った。
「今晩は赤飯を炊くぞーっ!」
「赤飯?!なんとっ、かたじけないっ」
「幸村ちょっと、流されないで!…私達まだ婚約してないじゃん」
宮野は真田の耳に口元を寄せ、周りには聞こえないようにそう言った。真田はきょとんと宮野を見下ろし、ややあってぽんと手をたたいた。
「そういえばそうであったな」
「幸村の中では私はもう奥さんなの?」
「黎凪は某の最も大切な女子だ!」
「?!〜〜〜あーもうっ幸村は!」
大声で宣言された事に宮野は顔を真っ赤にさせた。
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