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もうお前を離さない173

しばらく経った時だ。
2人は勢い良く後ろを振り返った。そして勢い良くお互いを見合う。
「……真田の大将!今俺様も聞こえた!」
「黎凪…!行くぞ佐助ぇ!」
2人は同時に地面を蹴った。

 「〜〜〜〜…ッいった…!」
宮野は落下した時に打ち付けた左肩の痛みに顔をしかめた。
風魔の手から逃れようと暴れていた為に、木の上を移動していた風魔から落ちてしまったのだ。
宮野は後ろ手に縛られたまま器用に立ち上がると、着地した風魔に向かい合った。
「………………」
相変わらず風魔は何も言わずに姿を消した。宮野は目を閉じ、耳を澄ます。
―――、左手から風を斬る音がした。
「!」
宮野は目を開き、左を見て飛んできた刃を後ろに下がって避けた。追撃を頭を下げることでかわし、風魔の懐に飛び込むと腹と胸元、そして頭を逆上がりの要領で蹴りあがった。
そのままくるりと後ろに回って着地する。風魔はふるふると頭を振っていた。大した攻撃にはなっていないようだ。
「おぉ…なんか私器用になったな」
宮野は逆上がりが成功した事に小さくそう呟くと、じ、と風魔を見据えた。だが風魔は再び姿を消し、一瞬の後、宮野の目の前に現れた。
「な…、、がっ!!」
投げられた、と思った瞬間、胴を風魔の膝と肘で挟むように強打され、運が悪かったのか狙っていたのか、ちょうどそれは鳩尾の所にたたき込まれた。
「…っは……う…ぁ」
宮野は力なく地面に倒れ付した。風魔はさすさすと己の鼻を何度か擦った後、宮野の抱え上げようと膝をついた。
その時。
「晴れて回るは猿飛の舞ッ!!」
「…!」
勢い良く飛んできた手裏剣と黒い鳥に、風魔は咄嗟に後ずさった。猿飛は戻ってきた手裏剣を構えて宮野と風魔の間に立ちふさがる。
「ッ、伝説の忍…ッ!?」
「黎凪!!」
「………?……幸…村………?」
真田は宮野を抱き上げた。宮野はぼんやりとした目で真田を見上げる。
真田は怒りを隠さずに風魔を見、それを風魔であると認識すると目を見開いた。
「…!そなたは、北条殿の忍…ッ!!」
「…なるほど?お館様が倒れたのを機に、そして真田の大将の弱みを握るために黎凪ちゃん攫おうってトコか?」
「…ッ卑怯な…!」
真田はぎり、と歯を鳴らし宮野を強く抱き締める。
宮野は真田が来た事がいまいちよく分かっていなかったが、抱き締められる温もりに飛びかけていた意識を手放した。
かくん、と頭が垂れた事に真田は驚いて宮野を見た。
「黎凪?!」
「ッ、真田の大将行ったぞ!!」
「!くっ…!」
真田は目の前に現れた風魔の攻撃を槍で受けた。体から力を抜き体を浮かせ、そのせいで前のめりになった風魔を思い切り蹴り飛ばす。
真田は立ち上がり宮野を片腕で抱えながら、距離を取った風魔をぎろと睨んだ。
「去るがよい!まだこの者を連れ去ろうと画策するならば、この真田源二郎幸村、全勢力を持ってそなたが属する北条を殲滅いたす!!」
「………………………」
「いつまでも真田の大将を虎若子だと思ってると大怪我するぜ?」
猿飛は冷めた目で、だがどこか楽しそうな口調でそう言うと手裏剣を構えた。真田はただ、風魔を見据える。
「………………………」
風魔はしばらく動かずにそんな2人をじっと見ていたが、不利を悟ったのかはたまた別の訳か、黒い羽根を散らすと姿を消した。
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