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もうお前を離さない156

「…ったく。服で傷が隠れてるのをいい事に」
「い、いだ、だだだっ!!」
真田を部屋に戻し上着を脱がせば、胸元に傷が出来ていた。宮野はぎゅうぎゅうと胸元をきつく包帯で捲き締めあげた。真田は降参とばかりにバシバシと畳を叩く。
「痛いでござる!」
「痛くしてるもん」
「〜っすまなかったっ!すまなかったか、いだだだだっ!」
「結構痛いんじゃん!」
「お前が絞めるからだ…!くぅ…っ」
「片倉小十郎さんの言葉じゃないけどさ…」
「?」
宮野は漸く締めあげるのをやめ、包帯をきゅ、と結び止めた。
「家臣は大事、だけど、一番の大事は大将の御身」
「…ッ」
「幸村もそうは思わない?」
「……。すまぬ」
「私に謝らないの。分かったっていうならもうしないこと!」
「…うむっ」
はい終わったよーとバシンと背中をたたかれ、真田は痛みを感じながらも笑った。
宮野は真田の笑顔に面食らった様子を見せていたが、肩をすくめると真田の背中に抱きついた。
「おぉぅ?!」
「…宇都宮攻めさ」
「?なんだ?」
「私、どうした方がいい?」
「…………」
城に残るか、共に行くか。恐らく宮野が聞きたい事はそのどちらにするべきか、であろうと判断した真田は、宮野が回した腕を外すと座ったまま半回転し、宮野を正面から抱き締めた。
「ゆっ…」

「宇都宮攻め、お前は城に残れ」

真田は、そう言った。ぴくり、と宮野の体が跳ねる。そしておずおずと背に腕が回された。
「ここには怪我人を残していく。だが、城の守りも必定。守備の戦力は残してはいくが、そこに、黎凪。お前もいてほしいのだ」
「幸村がいてほしいのなら残るよ。でも、理由聞いてもいい?」
「いざという時は、お前に指揮を取ってもらいたいのだ」
「…………は?」
宮野は拍子抜けた声を上げた。真田は宮野から少し体を放し、宮野の目を見た。
「頼めぬか?」
「いや…わ、私でいいの?指揮をとるの。なんか軍師の人に悪いっていうか…私戦知らない訳だし」
「万が一戦になった時は防衛に撤してほしい、すぐに戻る。…お前に頼みたいのだ」
「…、分かった。任せて」
宮野はしばらくじぃと真田を見ていたが、ふわりと笑い、そう答えた。


翌日。
「えーと、赤紐の人はお粥なので赤紐持ってる方は手をあげてくださーい」
前日の内に流し込めるような物しか摂取出来ない重傷の者には赤い紐を渡しており、宮野は握り飯と粥が乗った盆を持って同じように兵の待機部屋を回っていた。粥は何故か橙色をしていて、受け取った兵士はしばらく固まっていた。
「あ…あの……宮野様…」
「はい!何でしょう?」
「この粥は、何故橙色を…?」
「あぁ、それはすりおろした人参入れてあるんです!」
「人参…でござりまするか」
「人参ダメでした?なら、一応白粥も作ったのでそっちを持ってきますけど…」
「あっ、いえっ、大丈夫でござりまするっ!!いただきまする」
「はい!」
宮野は元気よく頷くと、また後で器取りに来ます、と言って別の部屋に走っていった。
「…あ、うまいこの人参粥」
「そうなのか?一口くれ」
「嫌だよ」
「なぁ〜?お前ケチだなー」
「俺は酷い怪我してるの見て分かるだろ!いたたたた…」
「そんな食いたいなら宮野様に貰えばいいでござろう?」
そんな会話が繰り広げられていた事を宮野は知らない。
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