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もうお前を離さない163

「…貴様、…村越だったか」
「は、はい、村越芽夷です」
「貴様は、今の状況をどれくらい知っている?貴様は私についてきているが、それは何故だ?」
「何故…って…。…黎凪が言ったから、っていうのもあります。今は傍にいたくないから…」
「…貴様は私が西軍の総大将だということを知っているのか」
「…西軍…?」
「…そこから知らないのか」
石田は呆れて小さくため息をついた。あ、と村越は小さく声を上げる。
「いえ、西軍は分かります、徳川家康の敵方ですよね?」
「…家康…。そうだ、家康は私の敵だ。秀吉様を裏切るという大罪を犯しながら、奴の元に人は集まるっ!何故だ!何故誰も奴の犯した罪を咎めないっ!!」
「…。…多分、それは、徳川家康?さんが犯した罪を、人が罪だと思ってないからだと思います…けど」
「なんだと?!貴様もそうなのか!!」
「ま、待ってください!私は徳川家康がどういう人なのかまずよく知りません!!」
村越は慌てて顔の前で手を振り、思い出すように指を前後に振った。
「…何でしたっけ……。!そうだ、黄色くておへそ出してて…えーっと…絆を捨ててお前に挑もうみたいな台詞が…」
「…。は?」
「あっ!絆じゃない、武器だ!武器を捨ててお前に挑もう、だった。そうだ思い出した、二言目に絆が出てくる人だ」
「…。……くっ」
「!」
滅茶苦茶な事を口にする村越についに石田が吹き出した。口元を手で抑え、くっくと肩を揺らす石田に村越はきょとんとしている。
「…貴様は家康の所に行きたいとは思わないのか」
「?…別に。私を助けてくれたのは、貴方です、石田さん」
「!」
「徳川さんが私を助けてくれたりしたわけでもないし、知り合いでもないし…。だから行きたいとは思いません。それに……私は、貴方に恩返しがしたいんです」
「…恩返しだと?」

「私は石田さんに助けてもらいました。だから私も貴方を助けたい」

「…ふっ、戯れ言を」
「その戯れ言って何なんですか…」
頭から疑問符を飛ばす村越を石田は鼻で笑った後、村越を見た。
「貴様の助けなどいらん。…私を裏切らなければそれでいい」
「!分かりました、絶対裏切りません!」
「…、ふん。ならば好きにしろ」
「…、見ててもいいですか?」
「好きにしろと言ったはずだ」
石田はそう言うと再び柄に手を伸ばし、鍛練に戻った。村越は竹籠を抱え、それをじっと見ていた。



 「む…」
「幸村様…いかにしまするか」
「虎に…霧か…」
一方、その頃武田軍は軍議の真っ最中だった。宇都宮を内偵してきた忍の報告が、真田を悩ませていた。
「霧で視界を奪い、虎で殺す…という事か…下手に踏み込めませぬな…」
「左様…虎も一匹ではない様子」
「…むぅ…」
「ぶっ!いでっ!」
「なっ何奴?!」
「…黎凪?」
虎と霧に頭を悩ませていると、陣の外で転びでもしたのか、宮野が転がり入ってきた。真田はぱちくりと目をしばたかせる。
「あっ!すいません、お邪魔しました!」
「…黎凪、お前、宇都宮殿の事は知っておるか?」
「え?宇都宮?…あぁ、専ら馬鹿の子って言われてるよね」
宮野はぱんぱんと着替えたらしい袴の裾を払いながら立ち上がった。
「…馬鹿の子??」
「あれだよね、霧と虎の出てくる所の」
「そうだが…」
真田の言葉に宮野は片手を頬に当てる。
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