スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない172

「…ッ!!」
咄嗟に庇った腕がみしり、と鳴った。
宮野の顔面目がけて振られた足を、顔の横で受けとめたのだ。
痛みに目を細めながらも足の先にある姿を見て、宮野は目を見開いた。

「風魔小太郎…?!」

宮野を強襲したのは北条の忍、風魔小太郎だった。風魔は何も言わずに足を引くと、小さく跳躍し、がら空きの胴に回し蹴りを叩き込んだ。
「がはぁっ!!」
壁との間に挟まれた為に、強い衝撃が加えられる。宮野はがくんとその場に膝をつき、げほげほと激しく咳き込む。
「…?ッ宮野様!!」
小さな物音を聞き付けた兵が宮野を見つけ、刀を抜いた。風魔はちらとそんな兵達を見る。
「…………………」
だが風魔は兵には何の興味も示さずに宮野の体に触れた。
「…っこの!」
宮野はその手を掴むと反対の手を拳にして風魔の顔目がけて突き出した。
風魔は首を傾げてそれをかわす。
そこで宮野はその手で風魔の兜をむずと掴んだ。
「!」
そのまま兜を己に引き寄せ、己の額を風魔の鼻目がけて叩きつけた。めきり、と嫌な音がする。
頭突きに怯んだ風魔の首を、宮野は体を捻って勢い良く蹴りつけ、その隙に風魔の下から抜け出て両腰から兜割りを抜き取った。
「宮野様!」
その宮野の前に兵が立ちふさがる。宮野はずきずきと痛む胴を片手で押さえた。
「大丈夫です…ッ。う…腹の物戻ってきそ…ッ」
「…ッ消えた?!」
「――――ッ!?」
宮野は後ろから聞こえた風を斬る音に振り返ると、目に入った振り下ろされる刃を反射的に兜割りで受けた。だがその勢いはとまらず、宮野はそのまま頭部を地面に叩きつけられた。
「い…だぁっ!!」
「?!宮野様ッ!?」
「…ぁ……ッ!!」
叩きつけられた音に宮野の前の兵は驚いて振り返る。宮野は叩きつけられた衝撃に朦朧とする意識の中で風魔の姿を探した。
「宮野様!」
だが、気が付くと体は地面を離れ、宙に浮いていた。慌てて横に視線をやると、赤い髪が目に入る。そこで漸く宮野は自分が風魔に抱え上げられていることに気が付いた。
「ッ…?!」
抵抗しようとしたが、いつの間にか後ろ手に胴が縛られていて身動きができなかった。
「うわっ…!」
そして、辺りが黒い羽根に覆われたと思った瞬間、宮野の体は武田屋敷の上空にあった。
「…ッ離せこのっ!!」
「…」
「私をさらってどうするつもりだ貴様ぁ!!」
思い切り胸元を膝で蹴り上げたが風魔はびくともせず質問にも答えずに、宮野を肩に担いだままその場を去った。



 「―――ッ!!」
「真田の大将?」
その頃、早くも宇都宮領から出ていた武田軍は森の中で夜営を張っていた。そして突然、真田が弾かれたように立ち上がったのだ。
猿飛は真田の様子に首を傾げる。
「……黎凪……………っ?」
「?黎凪ちゃん?」
「……ちょっと辺りを見てくる」
「ほぇ?ちょっ、待って大将!」
言うなり陣を離れずんずんと森の中に入っていく真田を猿飛は慌てて追い掛けた。
真田はきょろきょろと辺りを伺うように見ながら歩いていった。
「真田の大将っ!何だっていうのさ突然!」
「…黎凪の声が聞こえた気がしたのだ」
「黎凪ちゃんの?…今上田にいるはずだよ?」
「だから気になるのだ。…妙に胸が騒つく」
「…………ふぅん」
猿飛は目を細め、真田の後に従った。月夜が照らす夜道を2人は黙々と進んだ。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30