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もうお前を離さない169

「なっ…空から?!」
宇都宮は動揺しながらも真田の攻撃を受けた。紅と青、対照的な色の槍が交差する。
真田はぎっ、目の前の宇都宮の顔を睨んだ。
「虎を止めるべく、貴殿を倒しに参った!」
そう言うと宇都宮の顔から動揺が消え、冴え渡った。
互いを押し合い離れ、宇都宮の槍から放たれる氷を真田は己が炎で弾き返した。



 「…っ」
「?…宮野様?」
突然動きを止めた宮野に兵が不思議そうに声をかけた。宮野は東の方角を見ている。
「…………今、幸村の声が聞こえた気がして」
「幸村様の……?」
「宇都宮と戦い始めでもしたのかなー…?」
「!」
「……まぁ、私が今どうこう言っても仕方ないですね。すいません、続きしましょうか」
宮野は苦笑しながら盥に入れていた洗濯物を抱え上げた。
「…幸村様なら、負けはしませぬっ」
どこか落ち込んだ様子を見せている宮野に、兵は励ますように声をかけた。宮野は兵の言葉に笑みを浮かべる。
「…、ありがとうございます。………三成さんの方は、大丈夫ですかね…」
「あぁ…そういえば、今朝方…伊達と徳川が同盟を結んだとの知らせが入ったばかりでござりましたな」



 「…海だ」
「瀬戸海よ。…しかしまぁ荒れておるなァ…」
「……瀬戸内海は初めて来ました」
石田軍は毛利領に到着した頃合いだった。陣を張り、昼時にもなれば毛利の陣営に攻め入る。
村越は空を見上げた。
「……いい天気ですね」
「?まぁ…確かに憎たらしいほどの晴天よな」
「毛利の所って、確か晴れだと不利ですよね?」
「…何?」
「毛利って日輪大好きな人ですよね?確か鏡で太陽光を反射させてビカーッじゅわーって…」
「…??」
「…私天気選択しなかったんだよね国文だから…雨雲ってどうやって作るんだったけ…」
「…主、熱でもあるのか。三成に稽古をつけられていると聞いているが…」
そう大谷が問うと村越は不思議そうに振り返った。と、その時になって大谷は、村越の右腰に刀が差してあるのに気が付いた。
「…主、その刀はどうしたのだ?」
「え?あ、これは三成さんが昔使ってたのを貸してくださって」
「…三成さん?」
いつの間にか変わっていた石田の呼び名に大谷は目をぱちくりとさせた。村越は刀を胸に抱きながら慌てたように辺りを見渡した後、恐る恐る大谷を見た。
「…あの、なんか、石田さんって呼びにくいから三成さんでいいですかって聞いたら構わないって…だ、駄目でした?」
「…いや…駄目であるとかそういうことではないが……」
「あ、そうですか…」
「…主に一つ聞きたいことがある。主は何故力を欲するが故に三成に教えを請うた?」
大谷の問いに村越は胸元の刀を見下ろした。
「……力が欲しいと言っても、力には沢山種類があります。私が力が欲しいのは、現実から逃げ出したくないからなんです。でも…今の私に、現実を受け入れる程の度胸はないんです」
「……ほぅ」
「だからといって、どうすればそれだけの度胸を物に出来るのかも分からない。…ならば取り敢えず、最低限、決めた事をしようと思ったんです。逃げている事に、変わりはないのでしょうけど」
「…最低限決めた事とはなんだ?」
村越は大谷の言葉に顔を上げた。
「三成さんに助けてもらった恩義を返すことです」
「…つまり主は三成に恩返しする為に剣術を習うと?」
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