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聖なる夜のハプニング2

*昨日の記事に訂正点があります。女体化したのは家康の方でした。

「家康…?何の騒ぎだ…?」
「、三成!」
徳川と石田の喧騒に、寝ていた三成も流石に起きてきた。三成は若干乱れた髪を整えながら、シャツを一枚引っ掛けた格好で顔を覗かせた。
そしてリビングの状況を見て、眉間を寄せた。
「何だ貴様等は!!」
三成の怒号に二人は三成を振り返り、さきほどと同じように驚いた表情を浮かべた。
「ははっ、三成、お前にそっくりだな!」
「知ったことか!」
だが気にすることなく戦いを続行させようとする二人に家康はあたふたと慌て、三成は額に青筋を立てて部屋の中に立てかけてあった刀を手にとった。
石田の刀を徳川が再び篭手で防ごうとした時、三成は刀を突き出してその間に割り込んだ。ガィン、と鈍い音がする。
徳川は驚いたように、石田は苛立ったように三成を見た。
「何故邪魔をするッ!!」
「当然だッ!!貴様等、私の女に何の用だ!!」

三成の言葉に二人はしばし固まった後、同時に家康の胸元を見た。その時家康は女だと思われていなかったことに気がつき、かあぁ、と顔を真っ赤にさせた。三成は三成で、無遠慮なその視線にブチ切れる。
「ふざけるなァァァァァァァアアア!」
「ぁだっ!」
「ぐぁっ!」
石田の刀を止めていた刀を引き抜き、三成は刀の背を思い切り二人の脳天に叩き落した。夜までもつれ込んだという戦の疲れもあったのだろう、二人は意識を飛ばし、その場で倒れ込んでしまった。
家康は顔を赤くさせたままプルプルと震えている。
「酷い…いくらちっちゃいからって……!」
「こんな奴らの言うことは気にするな家康!」
「ワシだってなぁ!!できるもんなら大きくしたいんだぞ!!」
「落ち着け!!!」


 同じ頃。
「お、おい政宗起きろ!泥棒!!或いは覗き!!」
「Ah!?」
左目を白いその髪で隠したグラマラスな女が、焦ったように隣で寝ていた男を揺すって起こす。政宗と呼ばれた男は女の言葉でベットから飛び起きた。
その隣で、ぽかんとしたように尻餅をついた格好で二人を見ている二人の男がいた。
そして二人は互いに瓜二つだった。
「…はっ?!」
伊達政宗は思わず声を上げる。政宗を起こした女、長宗我部元親はそっくりな二人を見てぽかんとしていた。掛布団で裸の体を隠している。
「…青いのはアンタにそっくりな野郎だな…アンタの兄弟か?」
「んなコスプレみてぇな格好、堂々する野郎なんかいねぇよ」
「……なんか俺そっくりな女がいる………」
一方の元親にそっくりな男は顔を青ざめさせてそう呟いた。政宗にそっくりな方も、こんこんと兜の上から自分の頭を叩いた。
「…どうなってんだ?そもそも西海の、なんでアンタがいんだ」
「それを言うなら独眼竜、アンタもなんでいんだよ」
「おいテメェ等、人ん家侵入しといて普通に会話してんじゃねぇよ」
立ち上がってベットから出ていた政宗はそう言いながら、長身のライフルのような物を構えて二人に向けた。
二人は政宗の行動にそれぞれの武器に手を伸ばしたが、政宗似の方がふと思い立ったように刀から手を離した。
「…俺の名前は伊達政宗だ。アンタ、名前は?」
「What?!顔もクリソツで名前も同じなんて冗談じゃねぇ!」
「へっ?同じ名前?」
「じゃあそっちの半裸の野郎、長宗我部元親ってのか」
「お、おう」
不意に話を振られた元親似の男は、慌てたようにそう答えた。元親の顔が嫌そうに歪む。
「ぎゃー!なんでこんな半裸の野郎と同じ名前なんだよ!!」
「アンタ女で元親かよ、変な名前だな」
「つかよ、下着姿で一緒に寝てたって、お前ら付き合ってんのか?」
伊達の言葉に政宗はきょとんとしたように伊達を見た。
「悪いかよ」
伊達と長宗我部は思わず顔を見合わせた。

*昨日の記事に追記追加

聖なる夜のハプニング1

*女体化注意!

12/25 クリスマス

その一年いい子で過ごした子どもには朝、サンタクロースから贈り物があるという。
日本ではこの日を、キリシタンの国のように家族と、ではなく、恋人同士で過ごす人が多い。特に大学生などの若い世代に多い。
もちろんそんな夜に、いたすことをしてるカップルも多い。逆に、リア充爆発しろと呟く残念な独り身の者も数多く存在する。
これはそんな毎年のように繰り返される年最後の最大イベントに思いっきり乗っかった、とある恋人達に起きたハプニング。


【聖なる夜のハプニング】


 「……うるさい……」
とあるアパートの一室、例に違わず恋人と一夜を過ごした女性が布団の中でぼそりと呟いた。確かに恋人が泊まりに来ていて一人暮らしの普段と違う朝になるのは当然ではあるが、その割には何故か怒号が聞こえたり物がぶつかるような音がするのだ。このアパートの住人はほとんど実家に帰っており、彼女らしかいないはずなのだが。
「………ん?」
目を覚ました女性、徳川家康は、その時になって自分の恋人である石田三成が、すやすやと自分の隣で寝ていることに気が付いた。一瞬三成が暴れているのかと思っていた家康は首をかしげる。
三成でないのでは尚のこと、この騒ぎは誰が起こしているのだろうか。
家康は眠い目をこすりながら起き上がり、寝室に隣室しているリビングへの引き戸を開けた。
「イィィエェェヤァァスゥゥゥゥウウ!!」
「待て三成!気持ちは分かるが現状を見ろ!!」
「喧しい!貴様!私に何か言えた義理かァァァ!!」
「………はっ?」
家康はリビングの状況にぽかんとつぶやいた。
まずリビングは、喧騒により滅茶苦茶になっていた。机の上にあったものは尽く床に落ち、壁にかかっていたカレンダーやボードも落ちていたり半分にきれていたりする。飾っていたツリーも、残念ながら上半分がなくなっている。
そして部屋の真ん中には、自分と三成にそっくりな男二人がいた。だがどちらも鎧を身に付け体には所々傷があり、三成に似た方に至っては刀を構えている。
家康があげた声に、その2人は同時に家康を見た。
「なっ…家康…ッ?!」
「え……?ワシ…?」
「貴様…影が苦手とほざいたのは嘘かァァ!」
「違う!ワシは影武者なんて…え?!」
「…とりあえず、ワシの家で何しているんだ?貴方達は…」
そっくりとはいえ見ず知らずの人間にリビングを荒らされて苛立っていた家康は、ぽきり、と拳を鳴らしながら静かにそう尋ねた。泥棒の可能性も捨てきれない。
自分に似ている、ヘソ出しの鎧武者は慌てたように手を前で振った。
「す、すまない!ワシらにも何が起こったのか分かってな…っと!」
「!!」
彼がそう言おうとした時、相手から注意をそらした直後、刀を持った男が勢い良く彼に斬りかかった。直前で気が付いた彼は咄嗟に腕を交差し、篭手でその攻撃を受ける。
ガィン、と先程まで散々聞こえていた金属音が響く。家康は呆気にとられてしまった。
「…へ……?」
「…っ、すまないな、ワシは徳川家康」
「へっ?!」
「こっちは石田三成だ」
「はい?!」
「ご覧の通りの関係なんだ、それで別のところで戦をしていた筈なんだ、がっ!」
徳川家康と名乗った彼は、そう言いながら石田三成と紹介した相手の刀を弾き、少し距離をとって拳を構えた。
「戦が夜までもつれ込んで、雷が落ちたんだ。そして気がついたらここにいて…すまない、部屋を荒らすつもりはなかったんだが、」
「ほざけ!」
「っ、ご覧の通りでな!」
徳川はそう言いながら困ったように笑ったが、家康は笑いもできずただただぽかんとするしかできなかった。
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もしこの道を進めたなら30(終)

 城に戻り、手の傷を手当してもらい、家康はまた夜は三成と酒を手に語り明かした。家康は酒のためか、饒舌な三成を見ながら思った。

もしこの道を進めたなら、自分はどうなっていたのだろう。

だがすぐに頭を振ってその想いを打ち消した。そんなことは、考えたところで意味がない。自分は、過去を見て生きてはいけない。先を見なければならない。
家康はぎゅ、と、傷をつけた手を握り締めた。
二人は色々なことを話した。三成の世界のこと、自分の世界のこと。そして、先のことを。


ーーー

 「………ん?」
そしてそのまま酔いつぶれる様に眠りにつき、目を開けると見慣れた風景が飛び込んできた。むくりと起きあがり、部屋の外に出ればそこはやはり、天守だった。
元の世界に戻ってきたようだ。
「……………」
ずき、と走った痛みに家康は自分の手を見下ろした。そこには真新しい包帯が巻かれている。

一瞬、長い夢かとも思ったが、夢ではなかった。

家康はその包帯に片手を添え、薄く笑んだ。そして、薄く雲がかかり、日の出の淡い赤色に照らされた空を見上げた。
「…、見ていてくれ三成。ワシはもう逃げないよ。お前にも認められるような、和平の世を作って見せる」
そして、ぐっ、と包帯の巻かれた手を拳にして空に掲げた。
そこへ、ガラリと障子の開く音がして、寝起きらしい、頭がボサボサな政宗が姿を見せた。家康に気がついた政宗は驚いたように家康を見た。
「よう、俺より先に起きてるたァ早いなアンタ」
「!独眼竜…その口ぶりからすると、ここにはあの世界のワシがいたんだな」
「!」
家康の言葉に政宗は限界まで目を見開いた。何度か瞬いて家康を凝視した後、慌てたように駆け寄ってきた。ぺちぺちと頬やら肩やら叩く。
「アンタ、俺が知ってる家康か?!」
「あぁ、三成を倒した方のワシだぞ」
「……元に戻ったのか…」
政宗ははぁー、と長いため息をついてその場にへたり込むようにしゃがんだ。家康はすまなそうに笑って政宗の前に同じようにしゃがんだ。
「すまないな、迷惑をかけたろう?」
「全くだ!こんな息の詰まる世は嫌だとか言いやがったしよ!」
「!はは、無理もないな」
からからと笑ってそう言った家康を政宗は自分より僅かに高い位置にある家康の顔を意外そうに見上げ、不思議そうに首をかしげた。
「…アンタ、感じ変わったな」
「?そうか?」
「yes」
「はは…そうかもしれないな。確かに、ずっとモヤモヤしたものが晴れた…三成に会ったんだ」
「!」
政宗は目をまん丸に見開いて、ピュウ、と唇を鳴らした。
「確かに来てたやつからは俺が豊臣の山猿やったとは聞いてたが…野郎にあったのか」
「あぁ。ワシの知る三成とは、大分違っていたよ。秀吉公を失った事を乗り越え、大阪の地を治めていた」
「へぇ…」
「情けない話だが、三成に手伝ってもらって、色々な事に気付く事が出来たよ」
家康はそう言うと苦笑し、ゆっくり立ち上がった。政宗はそれに合わせて顔をあげる。
にっ、と家康は笑った。今まで無意識の内に隠していた笑顔で、笑った。
「こうのんびりしている暇はないな!ワシはまだ、自分の事を振り返っている場合じゃない。その時期じゃない」
「………家康」
「夢を達成するためだ。独眼竜…手伝ってくれるか?」
政宗は家康の言葉に見開いていた目を細め、にやり、と楽しそうに笑った。家康に合わせ立ち上がり、正面から家康を見据える。
揺らがない家康の瞳に、政宗は手を前に出した。
「前のアンタに戻ったな、アンタ」
「……、あぁ」
「上等だ!アンタがそんな風に言ってくるの、柄じゃねぇが待ってたんだぜ」
家康はパシリ、と音をさせて政宗と手を組んだ。
「行こうか!」
「OK!!」
そう言って二人はがしりと肩を組み合い、からからと笑った。
影からそれを見ていた小十郎と忠勝は、お互いどこか安心したように互いを見やった。



 「………んんっ?!」
「…やはり戻っていたか」
「!三成!お、おお?!帰ってこれたのか!…ってことは、お前はあちらのワシと?」
三成は家康の言葉に小さく頷き、空を見上げた。僅かに雲がかった青空は、高い。
「2日でやけにやつれたな、貴様」
「…ものすごく息の詰まる所だったんだよ…だけど、お前の様子を見ると、もう一人のワシももう、大丈夫そうだな」
「何?」
「何となくそう思うんだよ」
「………ふん、そうであってもらわねば困る」
三成はそう言うと寄りかかっていた柱から身を起こし、家康に背を向けすたすたと歩き出した。家康は慌てて身なりを整えると、三成の後を追った。
ーー夢を叶え、永久に続く和平の世を築いてみせる
三成はふっ、と笑う。
「なぁ、向こうのワシとはどんな話をしたんだ」
「貴様に語る義理はない」
「えぇ!ケチ!」
「誰がケチだ」

かつて殺した友に会った男。
自分を殺したと豪語する友に会った男。

二人の奇妙な短い出会いが変えた歯車は、どのように回っていくのだろう。



END
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もしこの道を進めたなら29

「自己犠牲など巫山戯るな!そんな軟弱な精神で人の上に立つなど認めない!」
「…ッたが…!ワシは自己犠牲をしているつもりはない!」
「奢るな家康!」
「それがワシの覚悟だ!お前を裏切った、ワシの覚悟だ!」
「ッ、」
家康は素手の手で三成の刀を掴み、首元から離した。下手に動かせば簡単に指が切れてしまうから、三成は刀を動かせずに、そして、家康の放った言葉につまる。
家康は真っ直ぐ三成を見据えた。三成に言われた言葉で、分かった気がした。
「三成。ワシはお前だけじゃない、色々な物から逃げていた。そして自分を閉ざしていた…責任感からな」
「……?」
突然語り出した家康に、三成は不可解そうに眉間を寄せた。家康はぐ、と刀を握り締めた。掌に食い込んだ刃から、血が滴る。
三成はそれに、ぎろりと家康を睨んだ。
「…離せ家康。無駄な傷をつけるな」
「ワシの事を見ていてくれる奴もいる。それに気付けないほどに」
「おい」
「確かにワシはお前の言う神になろうとしていたのかもしれない。ワシは全ての者の幸福を祈っている」
「…」
三成は黙って家康を見据えた。鍔の所まで垂れた血が、地面に滴る。
「必要ならば…ワシはそうなろう」
「家康!」
「これは犠牲じゃない。それがワシの夢だからだ。そして、そうする事が、ワシの罪の贖罪にもなる」
「巫山戯るな!何が罪だ!」
「ワシは秀吉公に、豊臣に対してワシがやった事を正当化していいとは思わない。罪は罪だ、例え天下人となり日ノ本を統べる立場になろうとも、贖わなければならない」
「貴様…ッ!」
「勿論、お前だから話している。あちらで、それは誰にも明かすつもりはないよ」
「………ッ」
三成はどこか納得していないようではあったが、特に言い募ることはせず、目をそらした。
家康は三成を見つめた。
「ワシはきっと、ずっと逃げていたんだ。迷ったままお前と戦い、後悔していたのかもしれない。それから逃げたくて、認めたくなくて……。三成、お前はワシが何かをなくしたと言ったな」
「……あぁ」

「きっとそれは、夢だ」

三成は家康の言葉に目を細め、どこか悲しそうに笑んだ。否定はしない。
家康も三成のその表情に、困ったように笑った。
「ワシは逃げて、責任感の中で、それがワシのすべき事と決めつけて生きていた。ワシの夢の為ではなく、義務感から生きていたんだ」
「………そうだな」
「もうそれはしないよ。そんな生き方が、一番お前を侮辱していると、そう思うんだ」
「当然だ。夢の為に秀吉様を屠ったのならば、夢を叶えるまで走り続けろ、捨てる事は認めない」
「はは…お前ならそう言うと思ったよ」
家康はそう言って、嬉しそうに笑った。三成はふん、と鼻を鳴らす。そうしながらも、口元は笑んでいて、表情はどこか安心したかのように柔らかい。
家康は刀から手を離した。深く刺さった傷口は、ぱっくりと開いていて、ぼたぼたと血が出ている。家康はその手をぐ、と拳にし、自分の前に掲げた。
「この傷がお前への誓いだ、三成。ワシはもう情けない生き方はしない。夢を叶え、永久に続く和平の世を築いてみせる!」
「…そうだ、そうしろ。それが秀吉様への贖罪になる。貴様が大義を果たしたならば、秀吉様も貴様を許されるだろう」
「ふふ、三成のお墨付きがあると自信がつくな!」
「くだらん。さっさと帰るぞ、誓いにするのは勝手だがそのままでは血が出すぎて死ぬぞ」
「…確かに、思ってたより切れていた……」
「馬鹿か貴様は!」
家康はごちんと三成に殴られながらも、笑っていた。
心の底から笑えた。目を伏せても、もう胸は痛まなくなっていた。

もしこの道を進めたなら28

「………」
「…あー…家康、」
「…………」
「…定かではないが…貴様の知る私は、そうは思っていなかったと思う…ぞ」
「………なんでだ?」
詰まりつつそう言った三成に、家康は僅かに顔をあげた。三成は難しい顔して、腕を組んでいた。
本人にもうまく言えないようだ、しばらく考え込んだ後、きっ、と家康を見た。
「何となくだ」
そしてそう、きっぱりと言い切った。
家康は予想していなかった言葉に拍子抜けした。
「何となくって…」
「何となくは何となくだ。そもそも、そんな状況で果たして私が正気を保てていたかどうかも分からん」
「………」
三成の言葉に家康はもごもごとどもる。
果たして三成が正気だったのか、それは家康には分かりかねた。様子が変わっていたのは確かであったし、冷静でなかったようにも見えた。
だが家康はあくまで自分の前にいる時の三成しか知らない。だから、なんとも言えなかった。
三成はふん、と鼻を鳴らす。
「…どうせ狂っていたのだ。寧ろ、そう気付いていなかった方が、マシだっただろう」
「………そう、思うのか?」
「秀吉様の為に生きていたのだろう?私が気がつく前までは少なくとも、そうする事で私の中で秀吉様は生きていた…」
「!」
「恐らく私が貴様を殺せていたら、その後に気が付いただろう。そこでまた絶望するくらいならば、死んだ方が、」
「三成!!!」
三成は家康の怒鳴った声にはっ、と我に返ったように目を見開いた。なかば無意識の言葉だったようだ。
家康は家康で、三成が漏らした言葉に驚いている。三成はバツが悪そうに顔をそらし、踵を返した。
「…今言ったことは忘れろ」
「…結局どうなっても、三成には地獄だった、って事、だよな……」
止めていた歩みを再開させながら、家康はぽつり、とそう言った。前を歩く三成は後ろを振り返らないまま、ふん、と小さく言った。
「それがなんだ。どうせ戦乱の世では敗者は地獄だろう」
「…それは、そうかもしれないが」
「貴様はそれは覚悟の上だっただろう、何度も言わせるな。中途半端な同情はやめろ」
「同情じゃない、そんなつもりではないんだ」
「ならばなんだと言うのだ?」
「ワシは…お前を不幸にしたくてそうしたわけではないんだ、だから…」
三成は家康の言葉に振り返り、またまた彼には珍しく、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「神にでもなったつもりか?」

「………え……………?」
家康は三成の言葉の真意が計りかね、半ば呆然とそう返した。三成はすぐにその笑みを引っ込め、いつもの仏頂面で家康を睨むように見る。
「全てが全て幸せになる術などない。貴様らが秀吉様を否定したようにな。貴様がどれだけの想いで夢を語り明日を開いたところで、それによって不幸になる者など必ず存在するということだ」
「…!仮にそうだとしても、そうだからと割り切って、不幸になる者がいてもいいということにはならないだろう?!」
「だから神にでもなったつもりかと言ったのだ!ただの人である貴様に何ができる?!」
「…!」
「それとも貴様がその不幸を被るのか?誰も貴様を顧みず、ただ期待と願いだけを貴様に押し付ける輩のために貴様は自ら不幸を選ぶのか?そんな口でよくも私に自分のために生きろなどと言えたものだな!!」
三成の責めるような口調に家康は反論の言葉がうまく出せずに、口をぱくぱくと動かした。三成はひゅん、と音を立てて抜刀した刀の切っ先を家康の首元に突きつけた。
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