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もしこの道を進めたなら19

三成はどこか呆れたように家康を見、ちら、と忠勝に目をやった。そんな三成に、家康ははっとしたように忠勝を振り返った。
「いや、別にお前が特別じゃないとか、そういう意味じゃないからな?!忠勝!」
「!!!」
どことなくしょぼんとしていた忠勝は、家康の言葉にほっとしたように音を立てた。
三成はふん、と鼻を鳴らした。
「責められたい、戦いたくなかった、そう来て、寂しい、か」
「…お前は怒るかもしれないけどな……」
「………」
三成は家康の言葉に目を細めた。そして、ふ、と思い出したようにわずかに顔を傾けた。
「…そういえば、真田に、貴様は最初から私と共に天下を目指す心づもりだったようだと言われた時、何を思っていた」
「…三成、お前なんか、人の感情に敏感になったな……」
「戯言をほざく暇があるならさっさと答えろ」
「…」
家康は三成の言葉に薄く笑う。家康はわしわしと頭をかいた。
「ワシもそうありたかったと、急に思ったんだ…」
「…だから戦いたくなかった…寂しい、か」
「…もっと怒っていいんだぞ?三成。秀吉公に反旗を翻しておいてお前にそんな思いを抱いているワシを」
「私が何でもかんでも怒るとでも思っているのか貴様は」
家康がおずおずとそう言うと、三成はむすっ、と顔をしかめてそう言った。
家康はぷぅ、と唇を突き出す。
「だって事実すぐ怒るじゃないか」
「なんだと!」
「ほらまた怒った!」
「貴様が怒らせるようなことを言うからだろう!」
「怒りっぽい奴はみなそう言う、」
「イエヤスゥゥゥウ!!」
「わー!すまん、悪かった!」
わいわいと突如喧嘩になった二人に忠勝は一人ぽかんとしている。
三成は家康に馬乗りになるように家康を押し倒した。だが、家康の顔を見下ろしたところで動きを止めた。
家康は顔をかばうように上にあげていた腕の隙間から三成を見た。
「………貴様は今孤独か、家康」
静かな三成の言葉に家康は驚いたように三成を見、しばらく考え込んだ後、視線を斜め下へ逸らした。
「………分からない」
「……………」
「お前は孤独を味わった…そのお前にはそう見えるのか?」
「教えてなどやるものか」
ガンッと音をさせて、三成が刀を鞘ごと家康の顔の横に突き立てた。家康はもう慣れたのか、目を震わせることもしない。
三成はわずかに顔を歪めた。
「…貴様は自分自身の為だけに生きたことがない人間だ」
「そんなことは、」
「ある。いつだって貴様は他人のことばかりだ。…貴様は私と違い生まれついた時から大将になることが決まっていた身だ。だからこそ理解できないのだと考えれば合点はいく」
「…………」
流暢に話す三成に、家康はその話を黙って聞いてみる事にした。
三成はそのままの体勢で話を続ける。
「貴様は生まれた時から守るべき人間がいた。貴様を慕う人間がいた。だから貴様は孤独を知らん」
「………そうだな。少なくとも…一人きりだと感じたことはあまりないな。お前の過去は良く知らないが…」
「…知る必要はない」
「…寂しいのだとは分かった。だがそれが孤独と認めてしまえば、ワシは……」
「貴様のお得意の絆を否定することになるな」
家康は三成の言葉に、きゅ、と唇をかんだ。なまじ事実故に、言い返すことができない。
三成は刀をどけ、家康の上から降りた。
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