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もしこの道を進めたなら22

「………………」
一人残された家康はぽかんとしてしまう。忠勝はそんな家康にわたわたとしている。
「…は、はははっ!」
「!!」
突然笑い出した家康に忠勝は仰天して飛び上がった。家康はそんな忠勝に驚いたように忠勝を振り返り、すまんすまんと笑った。
「…忠勝、ワシはどこかで三成を馬鹿にしていたのかもしれないよ。いくら世界が異なるとはいえ、三成がああ言うとは思いもしなかった。いや、普通に考えれば分かったはずだ、今日の三成の態度を見ていれば…」
「………」
「…どうして三成がワシに何かを気付かせようとしているのか、その意図は分からないが…」
「……!」
「ん?はは、それはないというのは流石に分かるよ、忠勝。三成がワシを後悔させようなんて、そんなまどろっこしい事を考える男ではない、それくらいは知ってる…」
家康は最後はどこか懐かしそうにそう呟いた。忠勝はふしゅー、と小さく音を立てる。
家康はふふ、と笑って腰をあげた。空に見える月を見上げる。
「三成やお前のおかげで、何となくモヤモヤしていたものが何なのか見え始めてきたような気がするよ。それを見るのは正直怖いが……今の現状を考えると、見ないでそれから逃げるのはワシだけでなく、日ノ本の為にもよくない、何故かそう思うんだ」
「……!」
「果たして元の場所に戻ることができるのか、それは分からないが…どちらにせよ、ワシはもう逃げてはいけないな。今までは、色々なものから逃げすぎた」
家康はそう言って、自嘲気味に笑った。


 翌日。家康は思わぬ来訪者と出会う事になる。
政務に勤しむ三成の邪魔はできない、と家康は町に出た。江戸に移った家康にとって大阪の町を訪れるのは久しぶりの事だったから、もう一度行きたかったからだ。
活気な町を歩きながら、家康はぽつりと呟く。
「…あちらではワシはこの町からも逃げていたな…今度時間を見つけて出向くか…」
「おい、家康じゃねぇか?」
不意に、後ろからそんな風に声をかけられた。家康は驚いてそちらを振り返った。
「やっぱりだ!家康じゃねぇか!」
「も…元親か?!」
そこにいたのは四国の長、長宗我部元親だった。元親はぶんぶんと手を振り、家康に走り寄ってきた。
「久しぶりじゃねぇか!なんだ、大阪に来てたのか?」
「あ、あぁ、まぁな」
がしっ、と肩に手を回されたところで家康は彼が自分の知る彼ではないことを思い出し、慌てて話を合わせた。
元親は気がつかなかったようで、にこにこと笑っている。
「関ヶ原の時ゃ、大して手伝えなくて悪かったなァ」
「い、いやいやそんなことはないよ」
いまいち良く分からない家康はそう返すしかない。
「にしたってぇ、なんで大阪にいたんだ?お前に会いにこうと三河に向かう前にここに寄ってよかったぜ!」
「えーと、三成に会いに来ていてな。そっちこそ、どうして大阪に?」
「ん、食料調達にな。大阪は今や食通の要になってっからなぁ」
「そうなのか?」
「へ?」
意外な言葉に思わず家康はそう聞いてしまい、元親は不可解そうにきょとんと首をかしげた。
家康はしまった、と慌てて視線をさ迷わせた。
「ま、三河は大阪から離れてるしな、知らなくても無理はねぇか。いくら石田と同盟関係にあるとはいえ、そっちはそっちで忙しかったろ」
だが元親は気にせずそう続けた。家康は気づかれないように、ほっ、と息を吐いた。
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