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もしこの道を進めたなら23

「大阪は淀川もあるし、瀬戸内海とも接してる。内地の物も瀬戸内の物も、大阪を経由できるようになって一気に流通が良くなったんだ」
「へぇ…確かに、秀吉公がおられた頃は戦乱の混乱もあって、そこまでは回っていなかったからな…」
「あぁ、寧ろそんな事しちまったら懐まで侵入されやすくしちまう。いくら豊臣でも、仮に俺がそんな場所にいたとしても、流石にそれはしねぇしな」
元親はそう言って、にっ、と笑う。家康もその笑顔にふ、と笑った。
 家康は元親の食料調達に付き合い、少し話すことになった。バレるかもしれないのであまり乗り気ではなかったが、断るのも変なので何とか頑張ることにした。
「石田はどうよ?凶王の名前もだいぶ消えてきたようには思えるが」
「うん?あぁ、ここの町の者達ともうまくやっているみたいだ」
「そいつァ何よりだ。存外あいつも、悪い奴じゃないみたいだしよ」
「三成は意外といい奴だぞ。あの性格のせいで誤解はされやすいけどな」
「ちげぇねぇ」
元親は家康の言葉にカラカラと笑う。家康はこちらでも変わらない友の姿にほっとしたように小さく笑った。

今現在、まだ彼とこのように話すことは、できていない。
元親は家康に責任を感じているのか、会おうとしてくれない。気にしていない、寧ろ、どんな形であれ三成に味方してくれたことをある意味感謝してすらいる、そう思っていた。
それをどうすれば彼に伝えられるだろう。忙しい時の合間合間でずっと考えていた。

本人に聞けば分かるかもしれない。家康はふとそう思った。
「…なぁ、元親。ちょっと相談に乗って欲しいんだが…」
「んん?アンタから相談たァ、珍しいじゃねぇか。なんでも聞けよ」
「実は一人…他の者の影響でワシを誤解していて、後々誤解は解けたんだが、それを酷く気にしている奴がいてな。ワシは彼と仲直りしたいんだが、どうにも向こうが申し訳なさからか会ってくれなくてな……」
「へぇ…そんな事があったのか。アンタにしちゃ珍しいな」
呆れたように言う元親にお前のことだよ、とは言えず家康は曖昧に笑った。
元親はうーん、と腕を組んで唸る。
「そうだなァ…俺ならまず無理に押しかけるな!」
「お、押しかけるのか?」
「おう!まずは話をしねぇことには始まらねぇからな!」
そう言ってカラカラと笑う元親に家康はわずかに目を見開き、すぐに納得したように笑った。
元親はこういう男だ。そんな彼が、自分から逃げている。彼にとって、自分を裏切ってしまったことがどれだけのダメージを与えたのか、何となく理解できた気がした。
「…元親」
「ん?」
「お前、もしワシが友を裏切ったことがあると言ったらどう思う?」
家康の発言に元親は驚いたように目を見開いた。家康はもしもの話だ、と付け足して元親の反応を待つ。
元親は再び、うーん、と唸った。
「…アンタが裏切るってのは想像できねぇからなぁ…こう言い方はあれかもしれねぇが、よっぽどその友って野郎が最低な野郎だったんだろうな、とは思うな」
「!」
家康は元親の言葉に大きく目を見開いた。家康の反応に元親は僅かに驚いたようにたじろぐ。
家康はかくかく、と顔を動かした。
「…ワシに原因があると、ワシを裏切り者と罵ることはしない、と?」
「え?うーん……もしもの話だろ?誰を裏切ったかによっちゃあ変わるかもしれねぇけどよ、にしたってアンタが裏切るってのはよっぽどのことだろ。相手が悪いとしか思えねぇけどなァ」
「…………なるほどな」
「少なくとも、アンタを知る人間は皆そう思うと思うぜ」
「……そう、かぁ………」
家康は目を伏せ、ふぅ、と息を吐き出した。
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