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もしこの道を進めたなら21

「……これ以上何を認めろというんだ」
「………」
「さっきのだって認めたくなかったんだぞ、皆を否定するようで……」
家康は顔を埋めたままそう苦しげに呟く。三成は何も言わなかった。家康は顔を上げない。
「…否定したところで何だというのだ。誰も貴様の心など理解していないだろう」
「三成!」
「違うか?」
家康はぐ、と唇をかんだ。
ー貴様が否定した秀吉様こそが、今の貴様に必要な指標だ。
ふっ、とさきほど三成に言われた言葉が思い出された。
家康はわずかに顔をあげ、三成を見た。
「…みっともないと笑うか?」
「何?」
突拍子もなくそう言い出した家康に三成は眉間を寄せた。家康は覗き見るように三成を見たあと、視線を落とした。
「さっき言ってたろ、秀吉公は…」
「秀吉様は貴様とは違う」
「そうじゃなくて、」
「貴様は秀吉様を否定した。ああ言いはしたが…否定したからには貴様は秀吉様のようにはなれん」
「…………なる気はないよ」
家康は三成の言葉に目を細め、そう返した。三成はそう言ったわりには家康の言葉に不服そうに家康を見たが、なにも言わなかった。
家康は視線を庭に向ける。昼間いた蝶はいない。
「…だけど…一人になるのは……ある意味当然だよ、な…」
「なぜそう思う?」
家康は埋めていた腕の中から顔をあげた。
「天下人はそんなものだろう?秀吉公には半兵衛殿がいたが…信長公も結局は一人だ」
「……頂点に君臨するものは常に勝ち続けねばならない」
「そうしたようにはしたくなかった…それでも、」
「誰もが貴様を別格と見ている、か?」
「そうだな…一人、同等に接してくれるのがいるが、今のお前ほどじゃ、ない…」
三成は家康の言葉に拍子抜けしたように家康を見たが、すぐにふんと鼻を鳴らし、馬鹿馬鹿しいとでも言いたげに家康を見た。

「貴様は貴様だ。貴様が何になろうと、貴様が私を裏切らない限りその態度が変わることなどあり得ない」

家康は、三成の言葉に目を見開いた。三成はそんな家康には気がつかないまま、言葉を続ける。
「私は直接貴様に裏切られたわけではないからな。貴様が何になっていようと態度が変わるわけが無いだろう。友だなんだと言っておきながら、貴様は私の何を見ていた?大体貴様はいつもそうだ、他人の所業を自分のせいだと勝手に判断し問い詰めることもしない、全く貴様はお人好し……」
つらつらと家康への文句を並べていた三成は、その時になってようやく家康の様子がおかしいのに気がついた。
家康はぽかんとして三成を見つめていた。
三成はむっ、と顔をしかめ、どんと刀で床を叩いた。
「話を聞いているのか貴様!」
「………え、あ、う、」
「聞いていなかったな?!もういい!」
「わーっ待ってくれ!!聞いてた聞いてた!ちょっと予想外だったから反応できなかっただけだって!」
ぷんすかしながら立ち上がった三成を家康は慌てて引き止める。
「言い訳はどうでもいい!長話が過ぎた、私はもう寝る!」
「ええええここで?!この状況で!?というよりお前ちゃんと寝るようになったんだな!」
「貴様は私を何だと思っているゥゥ!」
完全に怒りスイッチが入ってしまった三成は、げしっ、と家康を蹴ってはぎ倒すとずかずかと部屋を出ていってしまった。
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