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凶姫と龍人50

ばたばたと音がして、別ルートから上ってきたらしい元親達が辿り着き、状況に息を呑んだ。
政宗は苦しげに笑う。
「もう一度アンタに会いたかった…」
「やめろっ。弱気なことを言うな、大丈夫だ。こうして共にいるだろう」
三成はそう言って政宗の手を取り、自分の頬に当てる。政宗はそんな三成に力なく笑う。

「………死ぬ前に…また会えてよかっ、た………」

政宗は静かにそう言って、静かに脱力した。手がぼとり、と落ちる。三成は目を見開き、そして政宗にすがった。
「やめろ、逝くな、私を元から去るな…ッ」
声が震え、目には涙が滲む。
ぽたぽた、と涙が溢れるが、政宗は反応しない。

「………愛している……」

三成は政宗にすがり、そう、静かに口にした。
それと同時に、薔薇の最後の一枚が散る。元親達はそれを見、悲しげに頭を垂れた。
家康も背を向けたまま、振り返る事ができない。半兵衛はそんな家康を一瞥した後、ふぅ、とため息をついた。
ぐすぐす、と三成はぐずりながら泣く。その時、不意に空から花火のような光が降ってきた。
「!三成君、」
半兵衛の声に三成は僅かに頭をあげる。ふわっ、と政宗の体が浮き上がった。
「なんでぃ?!」
「!」
「…?!」
夜だというのに異様な明るさに家康も異常を察し、驚いて後ろを振り返る。
政宗の体自身が光を放ち始める。鱗が消え、綺麗な肌が見え始めた。
三成はポカンと口を開けて呆然としている。それは元親達も同じだった。
空から落ちてくる光もだんだんと強くなっていく。一際強く光ったと思ったら、政宗の体が静かに床に落ちた。
「……」
三成は呆然としたまま、政宗に手を伸ばす。びくっ、と政宗の体が跳ね、思わず手を引っ込める。政宗は、ゆっくりと体を起こした。
自分の手や体をキョロキョロと見下ろし、勢いよく三成の方を振り返った。
端正な顔立ちをした、青年の姿がそこにあった。
「……三成!」
「…政宗…貴様なのか!」
三成の顔がぱぁ、と明るくなり、嬉しそうに抱きついた。二人は静かに見つめあい、どちらからともなく、唇を重ねた。
その瞬間、降ってきた光が更に強くなり、光が城全体を包み込んだ。
凶悪な外装だった城は柔和な外装に代わり、全体的に明るく輝く。
「呪いが…解けたのか」
家康は急激に変わる回りの様子を見ながら呆然と呟いた。
元親達は歓声をあげながら政宗に駆け寄った。彼らも光が包み込み、元の姿へと戻った。元親はフットマンの姿へ、小十郎は執事の姿へ、元就はメイドの姿へとそれぞれ戻ったのだ。
「お前ら…!」
「元に!戻った!!」
「ぐっ、ふ、苦しいぞ長曽我部!」
「政宗様…!」
「義父上ー!」
幸村の声がし、官兵衛に乗って吉継と幸村が駆けつける。光があふれ、三人もそれぞれの姿に戻った。
「おっと」
「ぐふっ!お、重い…!」
元親と同じ、フットマン姿の吉継は戻る拍子に跳ねた幸村を抱き止め、ショーファーの官兵衛はそんな彼の下に潰されていた。
政宗の顔が輝き、政宗は小十郎や元親達を抱き締め、三成に振り返ると思いきり抱き締め、笑いながら、そのままくるくると回った。




 数ヵ月後、城でパーティが開かれる。三成達の村の若者も招かれていた。その中心で踊っているのは、結ばれた三成と政宗だ。
二人は幸せそうに笑いながら踊っている。
「はぁーいいなぁ…」
外野から眺めていた元親はそんな二人を見てぼんやりと呟く。
そこへ元就が通りかかり、腑抜けた顔をしている元親をぺちんと羽箒で叩いた後、意味深な笑みを浮かべて離れていった。
元親はにやにやとしながら元就を追おうとしたが、小十郎に邪魔された。
「今は仕事中だ、後にしやがれ」
「かーっあんなん見せつけられて黙ってられっか!」
「昨日もおあついことをしていたんだろ?一日くらい我慢しろ、全く」
「ちょっと待ってなんで知ってんすか!!」
別の場所では、半兵衛と家康、そして吉継と幸村が並んで躍りを見ていた。幸村は少し飽きたのか、吉継に遊んでもらっている。と、いっても、吉継が幸村の両手を持ち、くるくると回っているだけなのだが。
「…幸せそうだな」
「…そうだね」
「きっとワシではあんな笑顔にはさせてやれなかっただろうな。ワシはこの場には不釣り合いだな、やっぱり帰るよ、半兵衛殿」
「ヒヒッ、まぁそういうでない。王子からの招待を無下にするつもりかァ?」
帰ろうとした家康に吉継が止める。家康は半兵衛と顔を見合わせ、思わず苦笑する。
吉継にぶら下がってぶらぶらとしていた幸村は吉継の足に抱きつき、くいくい、と引っ張る。
どうしたよ、と吉継は言い、幸村を抱き上げた。
「二人はいつまでも幸せに暮らすのでござるか?」
「ん?ふふ、そうよなぁ、不器用な者同士、なかよう暮らすであろうよ」
「…義父上ー、某はまだ食器棚で眠るでござるか?」
「はぁ?…ひゃっひゃっひゃ、愉快なことを言う童よな、全く」
幸村の発言に、三人は、ははは、と笑う。
仕事が一段落していた官兵衛は、料理長の久秀とのんびりと厨房で過ごしていた。

パーティはいつかは終わるが、幸せなときはいつまでも続く。

これはそんな、とある二人の奇妙な恋の物語。



ーENDー
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