スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

凶姫と龍人43

「…貴方は反対じゃないのか、半兵衛殿」
「生憎だけど家康君。僕は古い噂よりも政宗君の先祖よりも、彼を好いた三成君の心を信じるよ」
「!!」
半兵衛の言葉に家康は目を見開いた。焦ったように半兵衛から視線をそらす。
三成はあわあわとしながら半兵衛と家康とをみやった。
「…家康君。最上君達は過去を抹消したいだけだよ。確かにかつてのあの城の住人は屑ばかりだった。だがそうだとしても、偶然にも政宗君が受けた制裁を利用し、彼を蔑んだ彼らの行いも十分屑だ。それを自覚しているんだろうよ」
「………半兵衛殿。悪いが、貴方の言葉は聞けない」
「!家康ッ」
家康は半兵衛の言葉に拳を握りしめ、だが、静かにそう言い放った。三成の焦った声色にも反応しない。
家康はフードを被り半兵衛を見据えた。
「…すまないな、半兵衛殿。ワシは最上達に付く。それが、この村の想いだ」
「…何をする気だ家康ッ」
物騒なことを言い出した家康に三成は詰め寄るが、家康に冷たい笑みを向けられ、足が止まった。
「……待っていてくれ、三成。お前を利用させなんかしない」
「家康、貴様……?!」
「大人しくしていてくれよ?ワシは、お前を傷付けたくはないんだ」
「!!三成君!」
半兵衛は慌てて三成の腕を引いて自分に引き寄せた。三成もそこで、手に手に斧や棒を持った村人が家を囲んでいることに気がついた。
家康はただただ、冷たく笑みを浮かべる。
「…家を出ようと、しないでくれよ」
「やめろ家康…あの男に手を出すなッ!!」
「やめるのは三成だ」
家康は苦笑混じりにそう言い、冷たい笑みを浮かべたまま、三成を見据える。
どこか、泣きそうな笑顔にも見えた。
「…そんなことを言ったら、ワシに拍車をかけるだけだぞ」
「………!!家康!」
家康は最後にそう言うと三成に背を向け、家から出ていった。

「行くぞ!この村の人間を利用しようとした、化け物を追い出すぞ!」

家康の言葉に、集まっていた村の男衆が声をあげる。家康はその声を聞きながら、どこか不気味な笑みを浮かべていた。
「……三成は、ワシのものだ」
そしてそう、小さく呟いた。


 「………ッ」
同じ頃、部屋に閉じ籠っていた政宗は、右目に痛みを感じ、押さえた。
少しして、痛みが収まり押さえた右手をしばらく見つめた後、静かに立ち上がり部屋を出た。
「!政宗様、」
部屋の前で待機していた小十郎は、驚いたように政宗を見上げた。
「小十郎。妙な気配だ、何か来たか」
政宗は小十郎と目をあわせようとはせずに、ただそう尋ねた。小十郎は眉間を寄せる。
「?いえ、そのようなことは…」
「………。門を閉じろ、何か来る」
「…?!、はっ!」
小十郎は不可解そうに政宗を見ていたが、神妙な様子にすぐに姿勢を正し、一礼すると走っていった。
政宗は、部屋の扉の隣にある窓から、三成の住む村の方向を見た。夜なのに、僅かに明るい。
政宗は、ちっ、と舌打ちを打つ。
「……イライラさせてくれるぜ。昔のことを思い出させやがる。糞野郎の……gentlemanよ」
政宗は一人そう言うと、部屋に戻った。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年03月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31