スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

凶姫と龍人37

曲も終わり夜も更け、政宗と三成は星の見えるバルコニーへと移動した。僅かに寒く長居には向かないが、空気がすんでるのもあって夜空は綺麗に輝いていた。
「…綺麗な空だ」
バルコニーの手すりに腰掛け、三成はそう呟いた。つられて政宗も空を見上げる。
「ん?あぁ、そうだな。星座は疎いからよく知らねぇけど」
「星座か。冬場には冬の大三角という三角形があるらしいぞ」
「星がありすぎてどれで三角形作るのか分かりゃしねぇや」
政宗は肩を竦めて苦笑混じりにそう言うと、三成の側に座った。
政宗はすぅ、と小さく深呼吸をし、三成を振り返った。
「………なぁ、石田。ここの生活……楽しいか?」
「…?……あぁ、楽しいぞ」
三成は突然の政宗の問いかけに驚いたように政宗を見たが、ふわりと笑みを浮かべそう答えた。僅かに政宗の顔色が明るくなる。
「…あの、よ……」
政宗は顔を赤くさせながら続きを言おうとしたが、三成が僅かに顔を俯かせたのに気がつき、言葉を止めた。
「……どうした?」
「…あ、いや…その、半兵衛様のことが、少し、気になって……」
遠慮がちに答えた三成に、政宗ははっとして押し黙った。だがすぐに、はっと思い付いたように三成の手をつかんだ。
「いいもんがある。ついてきな」

政宗は自分の部屋に三成をつれていった。そして、薔薇の隣にあった手鏡を渡した。
「この鏡は、自分が見たいと思うもんを写してくれる。こいつなら、あのネコ毛も見えるはずだ」
「本当か?…半兵衛様の様子を見せてくれ!」
三成は政宗の言葉に両手でその手鏡を握りしめ、そう言った。青色の光を放ち、鏡面に半兵衛の姿が映った。
「!!!!」
幸か不幸か、その時の半兵衛は台所で激しく咳き込んでいた。鏡面に映ったのは後ろ姿だったが、手の間から血が垂れているのが見てとれた。
さっ、と三成の顔が青ざめ、政宗はその様子に顔を曇らせた。
「…どうした」
「は、半兵衛様が…!血を…!病状が悪化してる……ッ」
政宗は三成の言葉に目を見開き、傍らの薔薇のケースに手を触れた。薔薇はほとんどが枯れ、花弁も半分が散っている。
政宗は少しの間目を閉じ、そして開いた。
「…行ってやれ」
「…………え?」
「もうアンタは自由だ。ここから解放してやる」
「……だ、だが…!」
「俺がいいって言ってんだ。…帰ってやんな」
政宗は三成の目を見てそう言うと薄く笑み、すぐに目をそらした。
三成は何か言いたげに政宗を見たが、ばっ、と政宗に頭を下げた。
「…ありがとう」
「礼なんざ言うなよ。…その鏡、持っていきな」
政宗は鏡をテーブルに置こうとした三成にそう言った。不思議そうに自分を見る三成の手を取り、鏡を握らせる。
「…それでたまには、ここの生活を思い出してくれ。な?」
「……分かった。すまない、ありがとう。…半兵衛様、刹那の間お待ちを!」
三成は政宗の言葉に鏡を抱き締め、そしてドレスを翻し部屋から出ていった。一人残された政宗は壁に背を預け、静かに空をあおぐ。
少しして、城門から三成をのせた天君が出ていくのが見えた。政宗は部屋からそれを見送り、静かに目を閉じた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年03月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31