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凶姫と龍人44

「私のせいだ…半兵衛様、私はどうすれば……!」
「落ち着いて。ここを出る策を考えよう」
己がしてしまったことに気が付いた三成はへなへなと崩れ落ち、顔を真っ青にさせた。半兵衛はその隣に膝をつき、肩を抱き抱える。
「…いくらなんでも、傷付けるわけにはいかない。どうしたものか……」
半兵衛は小さく呟くと、窓から見える人影に小さく舌打ちした。

 「なんとっいうっことでっござろうっ」
そんな修羅場を迎えている二人のいる家の屋根で、幸村がそう呟いた。異変を察知し、煙突から上に登ったのだ。
幸村はピョンピョンと跳びはね、すたたたたた、と駆けて器用に屋根から降り、家に立て掛けてあった板の間から様子をうかがった。
「ぬぅ……今の某に打ち勝つすべは無しぃぃっ!どうすればよいのだぁぁっ」
幸村はぬおおおお、と叫んだ。叫んでも如何せん体が小さいので回りの村人には聞こえない。
と、その時、幸村の視界に大きな人影が映った。
「……ぬ?何事よ」
「!と、豊臣さん…ッ」
本を仕入れ、村に戻ってきた秀吉だった。三成と半兵衛の家を囲む村人たちの不穏な様子に、不愉快そうに眉間を寄せる。
「…何故このような事になっておるのだ」
「い、いや、これは……」
どうやら彼は、三成の味方の人間であるらしい。
そう判断した幸村は、すおお、と深く息を吸った。
「三成殿の想いが、踏みにじられるでごーざーるぅぅぅぅう!」
「!」
幸村の叫びは無事秀吉に届き、秀吉は僅かに目を見開いた。なんだ今の声は、と言いながらも顔が青ざめた村人に、秀吉はぐ、と拳を握った。
「……失せよ!」

どかーん
「?!!?!な、なんだ?!」
そんな音が聞こえ、地がぶるぶると震えた。家の中の二人は驚いて飛び上がる。
少しして、ばんっ、と勢いよく扉が開いた。
「半兵衛!」
「!!!秀吉!!」
「ひひひ秀吉様ァ!」
ぱぁっ、と半兵衛と三成の顔が明るくなった。無事な様子の二人に秀吉もほっと息をつく。
秀吉の肩に、ひょこっ、と幸村が顔を出した。
「三成殿!」
「幸村!貴様いつの間に……」
「この奇っ怪なカップが、貴様等の状況を教えてくれてな。村を離れておる間に、何やら妙なことになっているな」
「あぁ、話すと長くなる、今は割愛させてくれ。三成君!」
半兵衛は秀吉の手を借り立ち上がると、三成を振り返った。三成もぐ、と拳を握り、立ち上がる。
「僕も一緒に行こう。秀吉はここに残っていてくれないかな?彼らがどう動くか、予想がつかない!」
「……うむ、分かった」
半兵衛のただならぬ様子に秀吉は頷き、気を付けよ、と言うと先に家を出た。
半兵衛は一旦部屋の奥に戻り、自分で作り上げた剣を取り上げ腰に下げると、三成と幸村を伴い家を飛び出た。



 「…?何じゃ、何やら森の方がざわめいとるぞ」
「む?そういえばそうよな…」
静かな城の中で、ぴくり、と官兵衛が尻尾を揺らし、窓辺に駆け寄った。相変わらず上にいた吉継も一緒に覗き込む。
その二人の視界に、たくさんの松明が目にはいった。
「なんてこった、敵襲じゃ!」
官兵衛はうげぇ、と嫌そうな声をあげた。
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