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凶姫と龍人42

その夜、事態は急変する。
「三成。ちょっといいか?」
家康が三成を訪ねてきた。三成は夜分に珍しいと思いながらも家にあげた。
半兵衛は早めに床についていて、幸村は家康の姿を見て素早く戸棚に隠れた。
「何の用だ家康。貴様がこんな夜分に来るのも珍しいな。半兵衛様はお休みに…」
がたん。
三成の言葉が途切れた。家康が腕をとり、壁に叩きつけるように押し付けたからだ。
「いっ、た……ッ、何をする家康ッ!!」
「三成。伊達政宗のことで聞きたいことがある」
「……貴様…何故伊達の下の名を…」
「三成。お前は、どれくらいあの男のことを知っているんだ?」
「何故貴様に言う必要がある。離せ」
家康の声色に不穏なものを感じた三成は静かにそう返した。家康はどこか苦しげに眉間を寄せ、すまん、と言って手を離した。
三成は家康に座るように促したが、家康はそれを断った。
「…三成。お前の返答次第では、長居はできない」
「なんだと?貴様ぁ、今度は何を考えている?」
「三成。あの男は竜のような肌をしているそうだな」
家康には珍しく、三成の問いを無視して家康はそう尋ねた。三成は僅かに眉間を寄せる。
「……それがどうした」
「そのような肌になった経緯は、知っているのか」
「老婆に扮した魔女に不遜で傲慢な態度をとって怒らせたのだろう」
「…知ってたのか。三成お前、あの男の事が好きだろう」
「…ッ!」
家康の突然の言葉に三成はう、と詰まった。家康はそんな三成ににこりと笑う。目は、笑っていなかったが。
「お前が、そんな過去を持つ男を好きになるとはなぁ」
「…老婆に扮し、見ず知らずの人間を試すような魔女も魔女だ、質の悪いッ。それに、そんな過ちは誰にだってある。私とて、こんな外見でなかったのならば、昔の伊達やこの町の女共の仲間入りをしていただろう」
「…」
「…それに、今の伊達は、いい奴だ。過去のことを反省し、変わっている。だから好いたのだ」
「…三成、今から言うことは忠告だ」
「?!貴様、聞いていたのか!?」
家康は三成の言葉に反応を返さず、そう言った。三成は憤慨するが、今までに見たことのない冷たい瞳の家康に、僅かに後ずさった。
「…三成、奴を好きになるのはやめろ」
「ッ!何故貴様にそんなことを命令されねばならないッ!貴様には関係ないだろう!」
「なら、どうあっても奴を好きだと、信じるって言うんだな?」
「何が言いたい、貴様ァッ!」

「…家康君、最上君に何か言われたかな?」

凛、とした声が響いた。半兵衛だ。
半兵衛の言葉に、家康の肩が僅かに跳ねた。三成は不可解そうに半兵衛を見る。
肩にかけたカーディガンを揺らしながら、半兵衛は二人の方に歩み寄った。
「三成君、君がいた城にはね、胡散臭い噂が一杯あるんだ。政宗君も中々無礼な人間だけど、その前はもっと悪い人ばかりだったようだしね」
「!」
「……人付き合いのないというのに、流石は半兵衛殿だな…」
家康は困ったような怒っているような、微妙な表情を浮かべた。三成は困惑しながら半兵衛に駆け寄った。
「どういうことです、半兵衛様!」
「家康君、最上君はあの城の噂を作った原因を君に教えたんだろう?なかなか酷いものだ、君が三成君と彼の交際を危惧するのも無理はない」
「は、半兵衛様?!」
「…………」
家康は黙ったまま半兵衛を見据えた。
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