スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

凶姫と龍人45

「なんだってんだ、敵襲って!」
「大方、石田が村に戻った事で某かのことがあったのだろう」
「姫さんにゃあ悪いが、あの村の野郎はいけすかねぇと思ってたけど!」
吉継と官兵衛の知らせを聞き、城の中はばたばたと対応に追われていた。
走って正面玄関に向かう元親は、ちっ、と舌を打つ。すたたた、との走る足音に、先に着いていた小十郎が振り返った。
「遅ぇぞ西海!毛利!」
「無茶言うなよ!反対側いたんだぜ?!」
「まぁよいわ、どういった状況よ」
「大方前と同じ連中よな。ただ、今回は大将がおる。黄色いノースリーブの癖にロングコートを着ている妙な奴よ」
「若い奴だな。…石田が言ってた、イエヤスって奴じゃあないのかねぇ」
官兵衛の言葉に、元親と元就は窓から外を覗きこんだ。確かに、先頭に家康の姿がある。
「どうする?正面からの戦いになったら、政宗様がああいう状態の今、勝ち目はねぇぞ」
「げぇ、奥のやつら持ってるの丸太だぜ。ぶち破る気マンマンじゃねぇか」
「……大谷よ、こういうのはどうぞ?」
「ヒヒ、流石は主よな、実に面白きな」
「そこで楽しんでるお前さんら、策があるならさっさと言え!」

「扉を破れ!破った同時に突っ込むぞ!」
家康の言葉に、うおお、と声が上がり、士気があがる。家康はふと視線を感じ、城を見上げた。西側の塔の一室が、僅かに青く光る。
「……そうか、お前はそこにいるのか。待っていろ、伊達政宗。三成はワシのものだ…!」
家康は真っ直ぐその部屋を睨むように見据え、薄気味の悪い笑みを浮かべた。

「……………」
政宗は部屋から正門を破ろうとしている群衆を、その中にいる家康を見下ろした。
ふっ、と自嘲気味な笑みを浮かべる。
「…俺は石田に会って変わった。長い時も、俺を変えた。だけどテメェ等は何も変わらねぇ。変わらねぇどころか、退化しやがった。……俺がそんなに嫌いなら、ここまで来て殺してみろ。俺はもう、疲れた」
政宗はそう言うと疲れたように目を閉じ、薔薇の乗る机のとなりの椅子に腰かけた。

バァン。
派手な音がして、正門が破られた。どど、と村人が一気に入り込む。
エントランスは誰もおらず、暗く静かで、両脇に家具が散在していた。
「……な、なんだか妙な気配だね」
「そうだな、ピリピリする。さぁ降りてこい伊達。決着をつけてやる」
つかつかと家康は歩を進める。その後ろに、村人が続く。
集団がエントランスの中央まで進んだ、その時。

「今だ!」

元親の声を皮切りに、エントランスがぱっと明るくなり、両脇に積み上がっていた家具が一斉に村人に襲いかかった。
「!」
家康は僅かに目を見開く。村人は、家具が動く、という異常事態に一気にパニックに陥った。
「ひゃっひゃっひゃ。幸よ、福よ、塵と消え!」
吉継は楽しそうに笑いながら、湯を入れたティーカップを宙に飛ばし、湯を撒き散らす。
「撃てやぐへっ!何すんだ毛利ィ!」
「こんな狭い場所でぺぺやーを使うでないわ」
「ぺぺやーってなんだよ?!うおっあぶね!」
村人の攻撃から逃げつつ、元親は器用に炎を飛ばし、元就は、そうやって大丈夫なのか、自分の羽を千切っては矢のように放っている。
「来タレ…集エ…夢ヲ見ヨ…」
市はそう言いながら、二階から飛び下り何人かの村人が下敷きになった。意外と容赦がない。
「なんだこれは…あやかしか何かか!」
家康は苛立ちに、ちっ、と舌打ちをすると、騒動の中を駆け、抜け出した。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2013年03月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31