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凶姫と龍人39

翌日。
「やぁ、おはよう」
「あらおはよう、家康」
家康が村の者と挨拶を交わしながら通りを歩いていた。そこに、卵やらなにやら買いに来ていた三成が通りかかった。
家康はにこにこと笑みを浮かべ、手をあげる。
「やぁ、三成おはよう!」
「あぁ」
「……………んっ?三成?!」
さらりと挨拶した後三成はいないはずであることを思い出した家康は、数秒固まった後、勢いよく三成を振り返った。
三成は鬱陶しそうに家康を一瞥する。
「朝から喧しいぞ、家康」
「三成!お、お前いつ?!いつ帰ってきたんだ!」
「昨晩だ」
「昨晩?!どうやってあの城から脱出してきたんだ?!」
「脱出?人聞きの悪いことを言うな」
三成はやれやれ、とため息をつき家康に向き直ると、側にあった噴水に座るように促した。
家康は促されるまま噴水の縁に腰を下ろした。
「あの城の主が私を城から出してくれた、ただそれだけのことだ。約束を違え、逃げ出すようなことなどしていない」
「あの男が?…そうか、やっぱりいい男だったんだな!」
「そうだな」
家康はどこか嬉しそうにそう言ったが、間髪入れずに返された三成の言葉にわずかに驚いたように三成を見た。
三成は着ていたマントに手を触れ、薄く笑んだ。家康の顔が僅かに曇り、笑顔も僅かにひきつった。
「…三成、お前こんなマント持ってなかったよな。これは?」
「伊達…あの城の主に貰ったものだ」
「……仲、良くなったのか?」
「あぁ!奴は私と似ている。だからこそ、私を理解してくれた。…伊達は、いい男だ」
そう言った三成の頬は僅かに朱に染まっていて。
家康は笑みを浮かべ、そうか、と相槌を打ちながらも、みしりと音がするほど拳を握りしめた。
「半兵衛様、只今戻りました!」
三成は家康と別れ、早々に家に帰った。ベットの上にいた半兵衛は、三成の声に体を起こした。
「お帰り、三成君」
「おはようございまする、三成殿!」
「今何か作りますので、少しお待ちください」
「うん、ありがとう」
いそいそと台所に向かう半兵衛はふふ、と小さく声をあげて笑う。白湯を持っていっていた幸村は、半兵衛の笑い声に不思議そうに半兵衛を見上げた。
「如何なされた、竹中殿」
「うん?うん…。…ねぇ、幸村君。そちらでの三成君は、どうだった?」
半兵衛の問いに幸村はきょとんとした様子を見せたが、にこっと満面の笑みを浮かべた。
「三成殿でござるか?とてもお優しく、政宗殿を恐れることなく接してくださり、某とても嬉しゅうござりもうした!」
「そう…。君は、三成君が好きかい?」
「すっ?!は、破廉恥なっ!」
「破廉恥?まぁいいや、君は、三成君が来て、どうだった?」
幸村は半兵衛の問いにふたたびきょとんとした様子を見せた後、嬉しそうに笑った。
「某、あの城より出たことがなく、某たちがこのような姿になってから久しく御客人もおらず、寂しゅうござった。されど、長い時の寂しさも、三成殿と過ごした時が遠くへとやってくださりもうした!某も義父上も政宗殿も、皆三成殿を好いておりまするよ!」
「……そう。それは、よかった」
半兵衛は幸村の答えに優しく笑みを浮かべた。
「半兵衛様、お待たせしまし…半兵衛様?」
スープ皿を持って半兵衛の傍らに来た三成は、機嫌のよさそうな半兵衛を見て首をかしげた。
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