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凶姫と龍人38

「よぅ、政宗!いー雰囲気だったじゃねぇか!」
三成と入れ違いに、元親が部屋に入ってきた。政宗の様子に気がついてはいない。
「あいつを帰した」
「帰した?そりゃあいいこった!……って、え?帰したぁ?!」
うきうきとしていた元親は、政宗の言葉にワンテンポ遅れて驚いたように政宗を見た。
政宗は視線を空に向けたまま、薔薇のケースに手を添えた。
「…な、ななな、なんだって帰しちまったんだ。あの姫さんがいなくちゃ、呪いは、」
「分かってんだよ」
「じゃあなんで!」
元親の問いに、政宗はしっかりと視線を元親に向けた。
憂いを含みつつも鋭い光を放つ政宗の目に、元親は言葉をつぐんだ。
「………あいつを…愛しているからだ」



「半兵衛様!」
「…?!三成君…?」
天君を駆けさせた三成は、月が南の空から西の空に傾く頃、家に到達していた。
ばん、と勢いよく開いた扉に、半兵衛は驚いたように振り返った。相当驚いたのか、その体勢の格好のまま固まっている。
三成は顔色は悪いものの、問題はなさそうな半兵衛の姿にほっと息をついた。
「半兵衛様…!石田三成、只今戻りました!」
「…。!三成君、一体どうやって?!」
半兵衛は玄関で頭を下げた三成に漸く我に帰り、慌てて駆け寄った。三成は顔をあげて、どこか楽しそうに笑う。
「伊達が、帰してくれました」
「伊達?…あの男の事かい?」
「はい!伊達政宗という名なのです」
「何故…?」
喜びながらも戸惑いにそう尋ねた半兵衛の問いに、三成は目を伏せた。きゅ、と着ていた蒼いマントを握りしめた。
「……それは、私にも」
「……………そう」
「三成殿ーッ!」
二人の間に僅かな沈黙が流れたとき、不意にそんな大声が三成が肩に掛けていたカバンから響いた。
ぎょっとした二人がカバンを見ると、モゾモゾと布が動いて、ぴょこっ、と幸村が姿を見せた。
「幸村!」
三成は驚いて幸村を手のひらに乗せて視線の位置まで持ち上げた。半兵衛も驚いたように幸村を見る。
幸村はぷるぷると頭を振った後、三成を視界に見つけ満面の笑みを浮かべた。
「三成殿!」
「幸村、どうしてここに!」
「三成殿が帰り支度をしておりました故、気になり待っている間に寝てしまいもうした!」
「君は、確かあの時の…」
「おお!貴殿は確か、竹中半兵衛殿!…ということは、ここは麓の村、ということでござるか?!」
半兵衛の存在に気がついた幸村は、漸く自分が置かれた状況を理解し、ひいぃ、と小さく呟いた。
「義父上に怒られるでござるぅぅ……」
「……、安心しろ、いずれあの城に戻る時に連れていってやる」
「!」
半兵衛は三成の言葉に僅かに目を見開き、だがすぐに、小さく、安心したような笑みを浮かべた。
「そう、三成殿!何故城を出てしまったのでござるか?政宗殿や某達が、嫌いになってしまったのでござるか?」
幸村の不安げな声色に、三成は柔らかく笑みを浮かべて幸村を撫でた。
「いいや、嫌いになどなっていない。私はお前達の事が好きだぞ。城を出たのは、伊達の許しが出たからだ」
「そうなのでござるか?何故?」
「半兵衛様の事を、伊達も案じてくれたということだ。…気がつかなくてすまなかったな、幸村」
「いえ!某は三成殿のお側におることが出来るのも嬉しいでござる!」
「そうか、ありがとう」
三成は、幸村の言葉に嬉し恥ずかしそうに笑った。
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