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凶姫と龍人40

「…半兵衛様?」
「……短い期間だったけど…柔らかくなったね」
「え?」
三成は半兵衛の言葉にきょとん、とした表情を浮かべた。半兵衛は、ふふ、と小さく笑った。
「あのお城に行って、過ごして……君は柔らかくなった。家康君が悪いやつではないと言っていたけど、政宗君とやらも悪い人間ではないみたいだね」
「え、ええ、と……」
半兵衛の言葉に三成の顔が、ぼんっ、と赤くなる。半兵衛はくすくすと声をあげて笑う。
「君はどうなんだい?彼のこと、どう思ってるの?」
「えっ?!わ、私は……うう」
「あはは、顔真っ赤だよ」
「お、お止めくださいっ!」
「好きになっちゃったかな?」
半兵衛は赤くなる三成に、半ば確信を得ながらそう尋ねた。三成の顔はさらに赤くなり、消え入りそうな様子で、だが、小さく頷いた。
半兵衛は、そう、と呟き、優しく三成の頭を撫でた。
「…なら、君が僕を気にせずに行けるよう、僕も早く調子を戻さないとね」
「!半兵衛様、」
「君が僕や秀吉以外を好きになることはなかったから、僕のことは気にせず…と、言いたいところだけど、君はそれじゃ納得しなさそうだからね」
「は、半兵衛様……」
三成は真っ赤な顔のまま、小さく頭を下げた。
「ふふ。じゃあ、いただきます。…おや、これは初めてみるスープだな」
「は、はいっ。あの城の料理長に教えてもらいました」
「……うん、おいしいね」
「なんとぉ!松永殿が普通にお教えなさるとは…」
「なにそれ?」


その頃、家康は森のなかで悶々としていた。忠勝が心配そうに鼻を鳴らし、すりすりと家康に顔をすり寄せる。
「……すまんな、忠勝」
家康はふ、と薄く笑い、ぽんぽんと撫でた。
「…三成はきっと、彼奴が好きになったんだろうな…はは」
家康は力なくそう言うと、小さく頭を垂れた。
「おや?こんなところで会うとは奇遇だね、家康君!」
「!」
そこへ、最上が現れた。そこで家康は、最上と共に城に行った時のことを思い出した。
ー貴公はまだ若いからねぇ
「最上!」
「?!ななな、何かね!」
「お前、この前ここにある城に行った時言っていたよな、ワシはまだ若いから、と」
「うん?そ、そうだねぇ」
「あれはどういう意味なんだ?あの男…伊達について、何か知っているのか?」
「!」
家康が政宗の名を口にすると、最上の顔色が変わった。顔から笑顔が消える。
最上のその様子に、家康も表情を険しくさせた。
「…なぁ、知っているのか」
「…何故貴公があれの名前を知っているのかね?」
「やっぱり知ってるんだな。昨日の夜、三成が帰ってきたんだ。城から出してもらえたらしい」
「!………、そうなのかね」
「なぁ、何を知っているんだ?最上」
最上は家康をちらりと見た後、視線を城がある方へと向けた。
「…随分と、昔の話になるのだがね。そう、彼がまだ、普通の人であった時の事になるねぇ」
「普通の人……?」
「我輩ほどの年の者であれば、大抵あの城のことは知っているよ。城の主の伊達政宗は、それはそれは傲慢な男子でね。それが災いして、魔女に容姿を変えられ、あの城に引きこもるようになった。…ま、村の者が気味悪さに嫌ったのでね」
「そう…だったのか。だが、三成がそんな傲慢な人間に惚れるはずがない、今はきっとそんなことはないんだろう」
「さて、それはどうだろうね」
「え?」
最上の言葉に家康は最上を見た。最上はどこか遠い目をしていて、家康を見ない。
「あの時…あれも我輩に気がついていたようだが、恐らくあれは我輩を、我輩たちを憎んでいるだろうね。…佐藤君を逃がしたのも、気まぐれかもしれないよ」
「石田三成な。…憎んでいる、か……」
家康は最上の言葉に僅かに目を伏せた。
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