スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

凶姫と龍人8

「政宗様」
「…あ?」
「あの女子に、部屋を与えてはいかがでしょう?」
政宗が牢まで戻ってきた時、小十郎がそう提案した。何故か小十郎の後ろには元親が隠れている。
「…なんでだ」
「彼女は死ぬまでこの城で過ごすことになります。いくらなんでも女子に死ぬまで牢はあんまりかと」
「…」
政宗はじろりと小十郎を見据えた後、何も言わずに牢に向かった。小十郎と元親は慌てて後を追う。
牢に戻ると勢いよく三成が振り返り、振り返ったと思ったら姿が消えた。
「っ!」
政宗は顔めがけて振られた左手を、顔のとなりで捕まえた。三成は止められることは予想済みだったのか、そちらは気に止めず、僅かに目に涙を浮かべて政宗を睨みあげた。
「私はどうなってもいい。貴様の自由にすればいい、だが!何故別れも言わせてくれなかったッ!!」
「…」
「もう二度と会えないのなら、ちゃんとご挨拶したかった!私は……ッ!!」
三成はそう言うと政宗の手を振り払い背を向けた。政宗は気まずそうに視線をさ迷わせる。
「…ついてこい。部屋に案内する」
「……部屋があるのか…?」
「ここにいたいのか?」
「…流石にここは嫌だ」
三成がそう言うのを聞くと政宗はぷいと背を向け、歩き出した。三成は僅かに迷った後、刀を拾い、政宗に続いた。
 城の中は予想よりも広く大きかった。そのなかを二人は何も喋らずに歩いていく。
明かり代わりに政宗に持たれていた元親は政宗に顔を寄せた。
『おい、なんか話せよ王子』
『……なにをだよ』
『この城のこととか!なんかあるだろ!』
「………。おい」
「なんだ」
「…城から出ない限り、この城の中は自由にしていい。西の外れの部屋以外はな」
「西の外れの…そこは何の部屋なんだ」
「いいから行くんじゃねぇ!」
「…分かった」
思わず声を荒げてしまった政宗は、そっと三成を振り返った。三成は目を薄く伏せ、とぼとぼとついてきている。
政宗の目に、左腰に下げられた刀が入った。
「…おい」
「なんだ」
「その刀で俺を斬ろうとは思わねぇのか…?」
「……何を言っている。約束を違えるのは裏切りだ。私は裏切りが嫌いだ」
「……。そうかい」

ひとつの部屋の前で政宗が立ち止まる。
『王子!夕飯に誘えよ!』
「…。晩餐を一緒にどうだ。き、来たくねぇなら来なくてもいい!」
元親の言葉に政宗はそう言ったが、驚いたように振り返った三成になんだかいたたまれなくなり、すぐにそう言って乱暴に扉を閉めた。
残された三成はぽかんとしてしまう。
「…なんだ今のは……」
そう呟いて部屋を見渡し、中央にあった天涯付きベットに腰掛けた。大きな窓から、うすらぼんやりと月明かりが見えた。
「……半兵衛様…」
三成はそう呟いてぼすんとベットに身を横たえた。もだもだと何回かベットの上を転がり回る。
「…屈するものか……貴様にだけは!」
そしてそう呟いた。
その時。
「失礼いたしまするー!」
「?!!?!??!!!だ、誰だ?!」
扉を僅かに開け、幸村が勢いよく入ってきた。三成はその大声に思わず飛び上がる。
くるくると走り回る幸村に、後から入ってきた吉継はやれやれとため息をついた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2012年06月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30