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凶姫と龍人3

「…そうだ、三成君。僕は論文を提出しに隣町まで行かなきゃならないんだ」
「!そういえばそんな時期ですね」
朝食を終えた時、半兵衛はふと思い出したようにそう言った。三成はその言葉を聞いていそいそと用意を始める。
半兵衛はそんな三成を見ながらくすりと笑った。
「…なんだか浮かない顔だね、三成君」
「…えっ?」
「ここのとこ数日、ずっとそんな顔だよ」
半兵衛にそう指摘され、三成はわたわたと慌てた。そんな三成に半兵衛はくすくすと笑う。
「話してごらんよ。何かあったの?」
「……いえ、大したことではないのですが…半兵衛様、私は変わり者でしょうか?」
「変わり者?君が?別に?」
「村の秀吉様と家康以外の皆がそう言うのです」
「…僕も言われてるよ。何、言わせておけばいい。君の可愛さは僕が十分分かっているよ」
「ははははは半兵衛様…!」
半兵衛の言葉に三成の顔が真っ赤になる。半兵衛は可愛いなぁ、と呟きながらそんな三成の頭を撫でた。
「家康君も言わないというのは少し意外だったけどね」
「…アイツは絆を結べとしか言ってきませんから」
「はは、流石家康君、ちょっと感心した僕がバカだった」
半兵衛はそう言って呆れたように笑い、出立の用意を始めた。
 「じゃあ、行ってくるね三成君。出来るだけ早く帰ってくるけど、戸締まりには気を付けてね」
「はい!いってらっしゃいませ、半兵衛様!」
三成はそう言って、出立する半兵衛を笑顔で見送った。
半兵衛の姿が見えなくなるまで手を振り、ふぅ、と息を吐き出した。
「三成!ため息なんてついてどうした?」
「ウワァァァァ貴様イエヤスゥゥゥ!!」
突然三成の後ろから家康が現れ、三成に抱きついた。突然の事に三成は半ば悲鳴に近い声をあげ、数メートルとびずさった。
「何をしにきた!」
「訪ねてはまずかったか?」
「用がないのならば来るな!」
「ならば大丈夫だ!ワシはお前に話をしにきたんだ!」
「貴様との対話を拒否する!帰れ!」
にこにこと笑い近寄ってくる家康から三成は逃げる。
家康はふ、と家の横手を見て首をかしげた。
「馬がない。半兵衛殿出掛けたのか?」
「半兵衛様は学会だ」
きらり、と家康の目が光ったのを三成は見逃さなかった。
「ということは三成一人だろう?それは危ない!半兵衛殿が戻るまでワシの家に来るといい!」
「やはりそれが狙いかイエヤスゥゥゥ!!下心が丸見えだぞ!」
「下心?まさか!ワシがそんな目でお前を見るわけないだろう!」
家康は三成の言葉にがし、と三成の手をつかんだ。至近距離で三成の目を見つめる。
「ワシは真面目だ。お前が心配なんだ、三成…」
突然真面目な表情になって真摯に己を見つめる家康に三成は僅かに戸惑ったが、家康の後方に最上らが楽しげに覗いているのを見つけて露骨に顔をしかめた。
「私は見世物ではなァァァァァい!!」
「うわだっ?!」
堪忍袋の緒が切れた三成は渾身の力で手を握る家康を投げ飛ばした。油断していた家康は思ったよりも飛び、近くの沼に落下した。
「消え失せろッ!!」
三成は最後にそう叫んで家の中に戻ってしまった
。沼から顔をあげた家康は悲しげに家を見つめる。
「だ、大丈夫かねいえやぶっ」
「邪魔するんじゃねぇ!三成に拗ねられちまったじゃねぇか!」
思わず昔の口調に戻りながら家康は最上の頭を沼に沈め、立ち上がった。
「ワシは諦めねぇぞ、三成!」
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