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凶姫と龍人6

「梵天成翔独眼竜…か。どこまで主バカなんだ、この男は」
翌朝、三成は家の近くの小高い丘で、秀吉にもらった本を読んでいた。秀吉に貰った本はいくつかの主従関係の人物達をモチーフにした小説が載っている本で、三成が呟いた言葉はその中の一人の刀に刻まれている文句である。
「……家康もこれくらい潔くかつ美しく生きる男であれば、まだよかったのだがな。同じ男と言う生き物とは思えん」
昨日のプロポーズを引きずっているのか、三成はぶつぶつとそう呟いた。だがすぐに本の世界に戻り、ページを捲った。
少しして、三成は聞こえた物音に顔をあげた。そして、こちらに走ってくる天君が目に入り、目を見開いた。
「天君?!貴様半兵衛様はどうした!!」
単体戻ってきた天君に三成は駆け寄り、そう尋ねた。天君は抜けてきた森の方に目をやり、小さく嘶く。
「半兵衛様はまだ森なのか…?!私を半兵衛様と別れた所まで連れていけ!」
三成はそう言いながら家に戻った。
 本をしまい、刀を紐で腰から下げて天君に跨がった三成は天君を走らせた。
四時間ほどでその場所に着く。三成は一度天君から降りて辺りを見回した。
「半兵衛様ならば、昨夜の雪をしのげる場所を探したはず…ん?」
その時三成は、半兵衛が見つけたのと同じ、とんがり帽子の屋根を見つけた。
「…見た感じここからそう遠くない、あそこに行ったはずだ。天君!あの屋根のある所まで行くぞ!」
三成はそう言うと疲労も忘れ、再び天君に跨がった。

 「だから言ったじゃねぇか、政宗様に知れたら、と」
「でもよぅ…政宗もあんまりじゃねぇか。元はと言えば、俺達がこんな姿になったのもああいう野郎を受け入れるだけの許容がなかったからだろ?」
「…言うな。政宗様はあれで変わられてしまった、己の姿を見られる事が恐ろしいのだろう。……おまけにあの男、綺麗だったしな」
「確かになぁ…姫さんが来てくれてりゃ、もう少し変わったのかもしれねぇなぁ……」
城の中では元親と小十郎がぼやいていた。だから、三成が来たことにすぐには気付かなかった。
「失礼する!こちらの主はいらっしゃるか?!」
そう声を張り上げながら三成はずかずかと城の中に入ってきた。半兵衛より遠慮がない。
「誰かいないのか!半兵衛様!!」
「…ん?なぁ、今なんか声しなかったか?」
「あぁ?」
「外から明かりが見えた!ご在宅だろう!聞きたいことがある!」
二人がそう呟いた時、三成の声が響き渡り二人は飛び上がった。飛び上がった勢いで、部屋の扉まで走っていく。
そ、と扉の影から覗けば、三成がきょろきょろと辺りを見回しながら歩いてくる。思わず元親はばしばしと小十郎を叩いた。
「なんてこったい!姫さんだ!!」
「俺を叩くんじゃねぇ!どうなってやがる、もうじき薔薇も枯れるって時に…」
「半兵衛様!ここにいらっしゃるのですか?!半兵衛様ー!」
「!あの男を探しにきたのか…どうする?」
「どうするも何も、あんな大声出してたらすぐ政宗が来る!せめてその前に会わせてやろうじゃねぇの!」
元親はそう言うなり部屋を飛び出した。特に反対する理由のない小十郎も後に続いた。
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