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凶姫と龍人7

「半兵衛さまぁ〜…」
段々三成の声に元気がなくなっていく。元親と小十郎はそんな三成を全速力で追いかけていた。三成の歩みが速いために、小さい彼らは追いかけるのが大変なのだ。
半兵衛が監禁されている牢獄に繋がる扉を三成が通りすぎた時、元親と小十郎は半開きだったその扉を押して小さく音を立てた。はっ、と三成が刀を掴みながら振り返る。
「…半兵衛様?」
扉の先の階段を元親がかけ上がる。その事で三成の目には、明かりを持った何者かが階段を登っているように見えたことだろう。はっ、と息を飲むと刀を構えながら慎重に階段を登っていった。
「…なんて物騒な姫様だ」
扉の影から三成を見送った小十郎はそうぼそりと呟いた。

 「…半兵衛様!」
「?!三成君!?どうしてここに!」
階段を登りきった先に、三成は半兵衛を見つけた。慌てて駆け寄った三成を、半兵衛は驚いたように見上げた。
「どうしてここに…いや、そんなことはおおよその予想はつく。三成君、早くここから出るんだ!」
「こんなところに半兵衛様を置いてなど…!」
「僕の言うことを聞い…げほっ、けほっ」
「!!半兵衛様!」
「そこで何してやがる!」
「!」
話している途中で咳き込んだ半兵衛に三成が手を伸ばした時、不意にそんな声が響き渡った。それと同時に、ばちばちと電気が弾けるような音も聞こえる。
三成は刀を構え、勢いよく振り返った。
「ここの主か」
「……そうだ」
「半兵衛様を出してくれ!こんな所にいては病が悪化してしまう!」
「三成君!!」
「そいつは勝手に城に入ってきた。誰が出すか」
三成は必死で政宗の気配を探ったが、どうにも場所が掴めない。場所が掴めれば即座に斬りかかれるが、掴めない状況で斬りかかって外しでもしたら半兵衛の身に危険が及ぶ。
三成はぐ、と唇を噛んで刀から手を離した。
「…頼む、何でもする。だから半兵衛様を出してくれ!」
「止めるんだ三成君!僕の言うことが聞けないのかい?!」
「私はまだ、半兵衛様を失いたくありません!!」
「!」
「…何でもするだと?」
三成は政宗の言葉に小さく頷いた。ばちばちという音が小さくなる。
「…ならテメェが代わりに残れ。死ぬまでずっと、な」
「何を!」
「……なら、姿を見せろ。刀は捨てる」
三成はそう言って腰に下げていた刀を外し、自分の前に置いた。ふらり、と政宗が月の明かりのさす所まで出てきた。
「…………!!」
三成は息をのみ、ふらふらと数歩下がった。牢の中から半兵衛が手を伸ばし、三成の手を握る。
「止すんだ三成君!」
「…いえ」
三成は深呼吸をひとつすると半兵衛の手を振り払い、政宗の前に立った。
「…分かった、残ろう」
「Ha!!いいだろう」
政宗はそう言うと三成の隣を通り抜け、半兵衛を牢から出し連れ出した。
「三成君!」
「半兵衛様…っ!」
半兵衛が手を伸ばすがその手は三成には届かず、三成はふらふらとその場に力なく座り込んだ。
「離せ!君にあの子を任せるわけにはいかない!」
「この話は決着ついた。あいつの事は忘れんだな」
政宗は半兵衛をかごの中に押し込んだ。
「村まで連れてけ」
「出せ!僕は許さないよ!」
半兵衛はそのなかでじたばたと暴れたが、虚しくそれは村に向けて動いていってしまった。
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