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日輪の神様へ13

「そうか。いや、すまないな」
「力になれずにすまぬ」
「いや、……、それより厳島。貴様、何か悩みを抱えているだろう?」
「!」
稲荷はじっ、と真っ直ぐこちらを見つめる銀稲荷に、僅かに目を逸らした。物事を真意を見通す事のできる鋭い蜜色の目に見つめられるのは苦手だった。
銀稲荷は目を逸らした稲荷にくすりと笑う。
「…まさか攫ったのは貴様か?」
「違うわ!」
「冗談だ。…聞かせろ、何を悩んでいる?」
銀稲荷の言葉に稲荷は口を開いた。
「…、貴様が会いにいこうとしておる長曾我部元親の事よ」
「…何かされたのか?中国の毛利元就と懇意にしているのは知っているが…。…まさか似ているから襲われでもしたのか?!」
「貴様は我よりもずっと多くの事を知っていてそこに敬意を示すが、時々とんでもないことを言いだすな」
稲荷はがばっ、と起き上がった銀稲荷をなんとか静め、また自分の膝にねさせた。
「そうではない。…鬼は豊臣という人間と戦うためにこの場所にこの船…富嶽を止めておる」
「豊臣秀吉か?…こちらに来る前に見た。大した人間だ、あれだけの同族を率いるとはな。中国に向かうようだったが」
「そうか…。………」
「…。そういえば、豊臣秀吉のそばに私のような銀髪の人間が二人居ったのだがな?二人とも愉快な髪型だった、一人はふわふわとしていて、一人は水鳥の嘴のように前髪が尖っているんだ。確か…名前は竹中半兵衛と、石田三成」
「…ふふっ、よい名であるのに斯様な髪型とは、愉快だな」
「あぁ、久方ぶりに笑うのを我慢した。…だが、その二人は豊臣を神のように崇めている。特に水鳥の方はな。貴様は長曾我部とはまた別の人間に会うことになるだろうな」
「…何が言いたい?」
銀稲荷は稲荷の言葉にまたくすりと笑うと稲荷の顔に手を伸ばした。
頬にやさしく触れる。ぽぅ、と手が紫苑色に光り、ふんわりとした暖かさが生まれる。
「長曾我部元親と話して人間が分からなくなったのだろう?」
「…ばれたか」
「元より私はものの心を見るのが得意だからな。…、しばし見つめればいい。人間は私にも理解の範囲を越えるものがある。…厳島、人間を完全に理解するのは難しいぞ。それでも貴様がするというのならば、私は止めん。ただし、無茶はするな」
「…分かった」
「…。厳島、少し寝てもいいか?明日は四国に行かねばならない」
「?鬼に用があるから四国に行く予定だったのではないのか?」
「…それもあるが、長曾我部は後でいい。四国そのものにも、用があるんだ」
「…、そうか。ならば休むがよい」
「じゃあ遠慮なく」
銀稲荷はふわりと笑って目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。
稲荷はしばらく銀稲荷の頭を撫でていたが、小さくため息をついた。


翌日。
「おい、稲荷さん」
「…。?!」
「なんでこんな所で寝てんだ?」
稲荷は長曾我部に声をかけられ目を覚まし、驚愕して飛び上がった。慌てて辺りを見渡すが、銀稲荷の姿はない。既に発った後のようだ。
「…、月を眺めて居った」
「…風邪ひくぞ?」
「上半身丸出しの貴様に言われとうないわ」
「あぁそうかい。…稲荷さん、アンタは部屋にいろ」
「?何ぞ…来たのか?」
「あぁ。中国目指して進行中だ。…俺達はこれから豊臣の進行を止めるため出る。危ねぇから部屋から出てくるなよ?」
「…さようか」
稲荷は僅かに、唇を噛んだ。

日輪の神様へ12

ひゅうっっ、と空気が鳴った。

稲荷が腰をあげたと同時に、稲荷の首に細く長い日本刀の切っ先が突き付けられた。切っ先と首の間には、和紙一枚ほどの幅しかない。稲荷は思わず息を呑んだ。妖力が込められたそれは、月光を受けて紫苑色の光を放っている。体からも僅かにゆらりと立つ妖気。月光を身に浴びる銀稲荷は酷く艶めいていて、しかし美しかった。
「!すまん」
無意識だったのか、銀稲荷は慌てて刀を下ろした。稲荷の頬に冷や汗が伝う。
「…攻撃的だな、肝が冷えたぞ。貴様の妖気は鋭いからな…」
「す…すまん…」
「…だがその戦装束に刀…なんぞ、仕事か」
「あぁ…人の中に紛れ込むのには気を張るからな…。体が休まらん」
銀稲荷ははぁ、とため息をついた。人に化けるためには九本の尾と耳を隠さねばならない。そのためには妖力を使うらしい、確かに銀稲荷の顔には疲れが見えた。銀稲荷はひゅんと刀を振り、流れる動きで鞘に収めた。そして、富嶽の顔の上にある大筒にもたれるように座り込んだ。
稲荷は銀稲荷の隣に座り、銀稲荷の尻尾を手に取るとその細い指で梳いた。
「銀稲荷の貴様がそれほどに疲れるとは……いったい誰の命だ」
「…、いや、これは私の仕事だ。命じゃない」
「……誰ぞ、不正か」
眉間を寄せた稲荷に、銀稲荷は小さく頷いた。
銀稲荷はその腕を買われ、神々がその力を私利私欲に使っていないか監視する仕事を天照大神に任されている。
その仕事の話を明かすところを見ると、本当に仲が良いらしい。
「この辺りの人間が攫われたはずだ。ただ、相手がそれなりの神なのか、気配で探れない。おまけに相手は私に詳しいらしい。なんどかやり方を変えてみたが、無理だった」
「何故攫われたのが分かったのだ?」
「…これは天照大神にも伝えていないが、私は、望まぬ者が天に行く時の声が聞こえるんだ」
「!」
「神の力が弱ければ弱い程、その者の拒絶が強ければ強い程、その声はよく聞こえる。だが、今回は非常にかすかだった。…攫われたのは確かだ、自信がある。だが、正直…見つけられるかは、あまり自信はない」
弱々しい銀稲荷の声に、稲荷は銀稲荷の頭を優しく撫でた。
「……そうか…だから人に化けて?それは疲れるな…膝を貸してやろう」
「あぁ…すまない」
銀稲荷はくすり、と笑って、ぽふぽふと自分の膝を叩く稲荷に体を預けた。稲荷は自分の膝を枕に寝転がった銀稲荷の耳をもふもふと揉んだ。
「私の目をここまで誤魔化すとは、相手は私達より上の神だろう…。なぁ、厳島、貴様は心当たりはないか?ここに来るまで、長曾我部元親という男は民に慕われている人間だと聞いたからな、何か知っているかもしれないと思って尋ねようと思って四国に向かおうとしていたんだ」
「海を飛ぶつもりだったのか?!…あまり無茶をするでない」
「あぁ。だが、早くしないと攫われた人間がどうなるか分からん。急がないと…」
「…我に手伝えればよいのだが…。だがしかし、攫われたのならばすぐに見つかりそうだが、何故見つからんのだ?」
「いや、攫われたのは魂魄のみで身体ごとじゃないんだ。死んだと勘違いする者もいるからな、尚更急がねばならない」
銀稲荷は閉じていた目を開き、稲荷を見上げた。


「なぁ、厳島。病でもないのにひたすら眠り続けている、そんな奴を見ていないか?」


「……いや、知らぬ」
稲荷は耳を揉む手を一瞬止め、そう言った。

日輪の神様へ11

しばらく二人は、そのまま海を見ていた。稲荷は規則的に尻尾を揺らし、一本の尾の毛繕いをしている。
稲荷が毛繕いを終えた頃、不意に稲荷が口を開いた。
「…I'm a soldier then I am a responder and judge. I stand on two ends fires」
口からすらすらと流れ出たのは英語。長曾我部は突然聞こえた謎の言葉に、目を真ん丸に見開いて稲荷を見た。
「あん?突然どうした、何かの呪文か?祟られるのはごめんだぜ」
「違うわ。異国の言葉ぞ。あぽろんという神が言っておった。何でも今の一節の意味を表すまた別の言語が含まれる歌があり、それが気に入っているそうだ」
「へぇ…どういう意味なんだ?」
「…“私は戦士、つまり私は被告人であり裁判官、火の両端に私は立つ”」
「…被告人…裁判官?」
「人が定めた法に従い、人を裁く人を裁判官、その法を犯し罪人となったがまだ罪状が確定しておらぬのが被告人だ」
「そんなのがいるのか?…だが、あんまり何が言いてぇのか分からねぇ。アンタの話じゃ、被告人と裁判官とやらはある意味で敵同士じゃねぇか」
「そうだな。我も知らん」
「じゃあ言うなよ」
「よく知らんが我も嫌いではない」
「あ、そ…。…そういやその意味を表すまた別の言語が、って言ったが実際はなんて言ってるんだ?」
「значитя,Иответчикисудья.Ястоюнадвухконцахогня」
「ざ…ざんち?」
「我もよく分からん。そう言っていた気がする」
「あやふやだなおい…」
「日ノ本での意味が分かれば十分だからな」
「そりゃあ、確かにな」
長曾我部はそう言った後、アンタ、よほど暇なんだな、と呟き苦笑した。
「…人とは…戦士とは、正義と悪と、両方に立つものだと、言いたいのではないかと思うたのだがな」
「あん?」
「だから、私は被告人であり裁判官、火の両端に私は立つ、のくだりだ。裁判官は正義、被告人は悪」
「…なるほどなぁ。じゃあ、火っていうのは何を指す?」
「…正義と悪を持つもの、すなわち、“現世”」
「……この世界、か…」

「…。貴様は豊臣と戦う。それは毛利を守るため。…果たしてそれは正義か?豊臣の進軍を阻む事は正義か?」

「…さぁな。…だが、一つだけ言えるとしたら、俺にとって豊臣の足下を見ないやり方は、悪だ」
「…そうか」
稲荷はそう呟いて、黙った。



結局その日に豊臣の姿が目に入ることはなかった。稲荷は見張り以外が寝静まった富嶽の顔の上に立っていた。
ぽすん、と稲荷は長曾我部が座っていた所に座った。
「珍しいな、厳島の」
そして突然声をかけられ、驚いて振り返った。
「!!貴様は比叡の…!」
「貴様、か。私をそう呼べるのは茶の一尾だった妖狐から稲荷に昇格した貴様だけだろうな。他の奴等は親狐の力がなければならなかった」
「貴様もそうだろう。我よりも上だがな」
「あぁ…。だが私と貴様は同等、私はそう思っているぞ」
「…ふんっ」
くすくす、と驚き、同等と言われた事に戸惑う稲荷をはた目に笑うのは、月のような銀色の髪と尻尾を持った男――比叡山周辺を拠点とし、稲荷の中でも群を抜く力を持った稲荷だった。
他の稲荷と違い、妖狐の中でも強力な銀狐から産まれ、また稲荷同様一尾から稲荷神に昇格したことから、畏敬の念を込めて銀稲荷と呼ばれている。
「…新しい社にしてはいささか趣味が悪いな。なんだこの顔は」
「長曾我部元親という、鬼を名乗る人間の船を借りておるからな」
「…長曾我部元親、だと?ここにいるのか」
「?知っておるのか。…そもそも、何故貴様、ここにいる」
稲荷はびゅん、と尻尾を振り、僅かに腰をあげた。
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日輪の神様へ10

翌日。
「特に何も変わらぬな」
「そうだな…だが、嫌な気配はする」
「嫌な気配…。…確かに、大きな数の気配が動いている」
「だろう?」
「…人にしては大きな気配があるな。…赤と黒を基調とした鎧…武器は持っておらぬ、違うか?」
「そんな事分かんのか!…確かに鎧…赤と黒だったな…」
「腰紐の止め具が瓢箪であろう」
「いや、そこまでは知らねぇよ」
ザァァ―――
戦前だという事をのぞけば、非常にのどかな風景が広がる瀬戸海。稲荷は見張りとして富嶽の顔の上に座った長曾我部の隣に座っていた。長曾我部は膝の上に肘を着いて、思い詰めたように中国方面を見ていた。稲荷は退屈で仕方ない。
「鬼よ、しばし我と話せ」
「さっきから話してんじゃねぇか」
「昔の話なのだがな。ある国に、信心深い女子が居った。神はその女子が気に入り、召し抱えようとした。だが女子は断った。何故か?」
「アンタ、その切り返し好きだな。何故か?」
「やかましいわ。何故ならその女子には結婚を誓い合った男子が居ったからだ。だが神は気にせず無理矢理女子を連れていった。さて、もし貴様がこの男子だったら、貴様はどうする」
「はぁ?」
長曾我部はすっとんきょうな声をあげたのち、考え込むようにむー、と唸った。そして、体の向きをかえ、稲荷に向き合った。
「俺がその男の立場だったら迷いなく助けにいくけどよ、」
「!」
「ちなみに、その野郎はどうなったんだ?」
「神の怒りを買い、だがその無謀さは気に入り、八つ裂きにした後女子の記憶から消し、女子はもとの生活に戻った、と言っておったな」
「同業者かよ!」
長曾我部は肩を竦め、怖ぇなぁ、と呟いた。
「…まぁだが、記憶から消さたんなら別にいいか」
「何故だ?」
「俺の場合、その姫さんはまぁ、元就な訳だろう?…だったら、記憶から消えた方が、その後寂しくねぇだろう?」
稲荷は長曾我部の言葉に目をまん丸に見開き、ぐるると尻尾を回した。さながら風車のようだ、よく回る。
「…。ほとほと人は理解できぬ、覚えていてほしくないのか」
「記憶に残って元就を苦しめるくらいなら、記憶から消えてしまった方がいい。…まぁ、元就は怒るだろうけどよ」
「普通そうだろう。貴様だって忘れたくはないだろう?」
「忘れたくはねぇさ。…だけど、相手には忘れて欲しいとは思う。俺に縛られずに幸せになってほしいから」
「……………はぁ………」
「納得してねぇだろ。…まぁ、アンタ等と違い、人間は一生が短いだろう?その短い時間を、悲しみに潰させたくはねぇだろう?」
「…そうなのか。…では聞くが、もし貴様が助ける前に、想い人が瀕死の重傷を負っていたら、どうする?」
「……。考えたかぁねぇが…どうして欲しいか、聞くだろうな」
「では、聞いてもし、共に死んでほしいと言われたら貴様は死ぬか?」
「元就が望むなら、な」
「…。たまげた。では、自分の事を忘れて幸せになってくれと言われたら、貴様は忘れられるか?」
稲荷の言葉に長曾我部は再び考え込むように唸った。
「…どうだろうな。完璧には忘れられねぇけど忘れて欲しいなら、…善処はするけどよ。…んな事聞いてどうする」
「人間観察だ」
「…本当か?」
「それこそ、嘘など吐いてどうする」
「…アンタは人間じゃなくて俺を観察しているような気がするときがあるような気がしてよ…」
「…?」
「何でもねぇ。気にすんな」
長曾我部はくすりと笑って、視線を海に戻した。

日輪の神様へ9

「怖いか?」
稲荷はひょい、と欄干の上に乗った。ひゅう、と風が吹き稲荷の着物を揺らしたが稲荷は気にせず長曾我部を振り返った。
長曾我部は稲荷の問いに稲荷を見上げた。
「ん?何が」
「今度の戦が、よ」
「…そうだなぁ…元就を守れずに死ぬかもしれねぇ可能性があるのは怖いな」
「…。貴様はどこまで自分の命をあの者に割くつもりだ?」
とすん、と稲荷は肘を着いた長曾我部の隣に腰を下ろした。ぷらぷらと尻尾が揺れる。
「そりゃ、最期まで」
「…。貴様は奴隷か何かか?」
「ひでぇな」
「我にはそういう風にしか見えぬわ。少なくとも恋人達には見えぬ」
「好きな人とは人生を添い遂げたいもんだろ。長くはねぇんだし」
「…我には終わりが無いから分からぬ」
「あ、そー」
長曾我部はふっ、と面白そうに笑うと、不意に真面目な顔に戻って視線を稲荷に向けた。
「お稲荷さん。アンタの社はいつ直るんだ?」
「そうだな。こちらに来る前の作業効率だと、早くて10日」
「十日、か…。…お稲荷さん。アンタが帰るまではこの富嶽、なんとかもたせてやるつもりだ。だが、十日と経たずに壊す可能性は無くもねぇと言っておく」
「壊されるではなく壊すなのか?」
長曾我部の言葉に、稲荷は目を見開く。長曾我部はくるりと体を反転させ、欄干に肘をつく形で寄りかかった。そして、己が船を見上げる。
「…豊臣の野郎はこの富嶽を自分の物にする気だ」
「確かにこの船の火力で右に出るものはないであろうな。…手に入れて損する物ではあるまい」
「……野郎共に富嶽をくれてたまるか。…俺が負けたその時、富嶽は破壊する」
「…。流石鬼だな、考える事が破天荒だ」
「そりゃ褒めてんのか?貶してんのか?」
「呆れているだけだ」
「…あ、そー」
稲荷はひゅるり、と尻尾を回して長曾我部を見た。
「我は迷惑か?」
「迷惑じゃあねぇが、命の保障はしねぇぞ」
「人に我は殺せぬ」
「豊臣秀吉は人と呼んでいいか分からねぇ野郎だがな…」
「…、長曾我部、貴様、毛利が二度と目覚めないとしたらどうとする」
「あぁん?」
「もしも、はない。必ず目が覚めない時だ」
長曾我部は困ったような苛立ったような目を稲荷に向けたが、稲荷の顔が真面目なので笑い飛ばす事も怒鳴ることも出来ず、ふぅとため息をついて空を見上げた。
「…俺の命が続くかぎり、安芸を守る」
「…!…見限ろうとは思わないのか」
「思わねぇよ。…大好きな奴だから」
「…」
長曾我部はどこか寂しげに笑い、稲荷を見上げた。
「例え毛利が俺を見ることが無くなるとしても…俺は奴の存在を見続けたい」
「…」
「アニキー!交代しやす!」
「そうか?四国の方はどうだ?」
「問題ねぇっす!近寄る影一つねぇですぜ!」
「そうか…。野郎共、気ぃ抜くんじゃねぇぞ」
「了解だ、アニキ!」
「ではさっさと寝るがよい。貴様に負けられては困る」
「あぁそうかい、わぁったよ」
長曾我部は稲荷に急かされながら部屋に戻った。


 長曾我部が眠りに落ちた頃、稲荷は長曾我部のそばをそっと離れた。とはいえ自分にあてがわれた部屋に帰る気にもなれず、稲荷は長曾我部の部屋の隅に座り込んだ。一本の尻尾を前に抱き抱える。
「…………………………」
その顔に浮かぶのは―――哀れみと、後悔するような表情だった。
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