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日輪の神様へ6

「…やたら俺と元就の事を気にするな」
「理解出来ぬ物を理解しようとしておるだけよ」
「そんなに理解出来ねぇか?」
「あぁ」
「何がそんなに理解出来ねぇ?」
がたん、と揺れ動き始めた富嶽。長曾我部は稲荷と向かい合わせになるように、壁ぎわに胡坐をかいて座った。
「そもそも好き合っておるのに何故戦うのだ?」
「んー…好き合っていたとしても、まだ敵に変わりはないからな。同盟を打信しちゃいるが、元就の野郎はまだ信用しきってないんだろうよ」
「貴様が好きなのに、か?」
「その自分が俺を好きである事にも納得しちゃいねぇんだろうよ」
「貴様はそれで平気なのか?」
「平気…と言ったら嘘になるかもな。信用されねぇのは、…面白くねぇ」
「…人間というのは面倒だな」
「あぁ、面倒だぜ」
長曾我部は苦笑して壁に寄りかかった。開け放されていた窓から入る風が、長曾我部の髪を揺らす。
「まぁ、それが元就らしい、って言っちまえば元就らしいんだけどな」
「…変わった男だな。貴様も毛利も」
「神様に言われてもなぁ…」
「好きな者には傷つけられても平気なのか?」
「俺だけ、ならな。野郎共にも手を出したなら流石に許しちゃおけねぇが、俺だけならまだいいさ」
「甘いな」
「今まで元就は甘やかされた事がねぇんだ、少しぐらい甘やかしたっていいだろう」
「そういうものなのか?」
「俺はそう思ってる。単なる言い訳にしかならないかもしれねぇが…」
長曾我部は窓から外を見上げ、再び苦笑した。
「アニキ!淡路に着きやしたぜ!」
ひょっこりとその窓から、長曾我部の部下が顔をのぞかせた。長曾我部はその男を見上げ、ニヤリと笑った。
「よし!碇を降ろして休め!」
「了解っすアニキ!」
「見張りは怠るんじゃねぇぞ!」
『アーニキー!!』
「ッ、相変わらず五月蝿いな貴様の弟達は…」
「いや、だからアニキは愛称だっつの」
長曾我部は苦笑しながら立ち上がると、部屋の隅に置いてあった机から瓶を取り上げた。
「一杯やらねぇか?」
「何ぞそれは」
「酒だ。どうやらアンタの話は長くなりそうだ」
「…」
「飲めるか?」
「飲める」
「!アニキ、やるんすか?ツマミ、持ってくるっす!」
「!悪ぃな、頼む」
稲荷はしばし迷った後、長曾我部が差し出した盃を受け取った。多量を飲む気はないらしく、徳利に瓶の酒を移し、徳利を持ってまた座った。
「…そう言えば貴様は我が先の事を問うた時、神には分かりえない感情だと言ったな。ならば貴様が好きな者と戦うその思いはなんだ?」
「……………」
長曾我部はしばらく酒の味を確かめるように酒を口に含みしばらく舌で転がしていたが、稲荷を見て苦笑した。例の困ったような笑みを。
「…闘いてぇ、って気持ちもあるんだ」
「はぁ?」
「俺はアイツの好敵手だと思ってる。アイツと命を懸けた戦いをしたい、そうとも思う」
「……………………」
「なんだその顔は」
呆れたような驚いたような、そんな表情。長曾我部は疲れたように苦笑し、今度は一気に飲み干した。
「っ俺も男だからな。心からたぎる戦いも好きなのさ」
「…ふむ……」
「その顔は納得してねぇぞ」
「あぁ、よく分からぬ。だが、それが人間というものなのだろうな」
「?」
「人と神は違う。我には分かりえない事もあるのだろう、と、ふと思った」
稲荷はそう呟き、お猪口を呷った。
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